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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第1章【堅牢なる左】
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第41話「M1-2」

「集合は二時間後にNWWゲートですよね」

「そうだ。十分に装備の準備と点検はしておけよ。装備の点検不足が原因で死ぬ新人の数は意外と多いからな」

「はい」

「気を付けます」

 ミーティング終了後、俺たちはそれぞれの小隊ごとに与えられている格納庫に向かっていた。

 予定では、二時間後に各小隊ごとに格納庫に置かれているキャリアーに乗って、NWWゲートの前に集合する事になっている。


「それにしても、今更な話ではあるけれど第1層の構造って、他の回廊が存在している層と比べても特殊だよな」

 で、小隊を形成するために必要な最低人員数を割っているはずの俺たちにも何故か与えられている格納庫に向かっている途中の事。

 俺は今更ながらに、第1層の構造が特殊である事に気づく。

 と言うのも、まず第1層は他の回廊がある層とは違って、回廊が橋の形ではなく、第1層を取り巻くような形かつトンネル状に設置されている。

 そして、層の外縁部には外勤の各小隊用の格納庫かエアロックのどちらかが設置されており、そのどちらかを通らなければ、回廊に出ることが出来ないようになっているのである。

 このような構造になっているのは第1層の回廊が瘴気に満ち溢れている外と十六方位のゲートを挟んで繋がっているからであり、恐らくは何らかの原因でゲートが壊れて、開きっ放しになってしまっても第1層の回廊から先が瘴気によって汚染されないようにするための備えなのだろう。


「まあ、それは確かにそうだね」

「言われてみればハル君の言うとおりだね」

 でまあ、そんな話をワンスとトトリの二人にしたら、ワンスは同意の顔を、トトリは言われてみればと言う顔をしていた。


「まあ、ハルの話に補足をするならだ」

「ん?」

 ただ、俺の話だけでは情報に不足が有るらしく、ワンスが補佐役らしく追加の説明をしてくれる。

 で、ワンスの話によればだ。

 第1層の回廊の特殊な点はまだあって、25番塔から40番塔こと外周十六塔の回廊は、十六方位のゲートと同じ外周十六塔の第1層にしか繋がっていないらしく、残りの塔の第1層回廊とは特別なゲートでもって物理的に完全な分断をされているそうだ。

 これは外周十六塔にはミアズマントを始めとした外の脅威に対応するために外に出る必要が有るのに対して、内側の塔には外に出る必要が無いために生じた差らしい。


「ワンス。そうなると、内側の塔の第1層回廊は今どうなっているの?」

「うーん。各塔の間の空間には、動植物の保存と木材の確保の為に作られた人工林と湖沼が有るから、その人工林の整備を行うための通路として使われているんじゃないかな?人工林を作るために結構な量の土が盛られたからこそ、第1層の回廊はトンネルになっている。なんて話もあったはずだしね」

「なるほど」

「まあ、アタシも実際に行った事は無いから、詳しい事は分からないね」

 ふーむ。塔と塔の間には人工林が有るのか。

 ワンスも詳しい事は知らないらしいが、一度行ってみたくは有るな。

 見るだけなら第11層の回廊から下を覗けば良いんだろうけど。


「と、着いたか」

「みたいだね」

「あ、本当だ」

 と、そうやって会話をしている間に、俺たち三人は自分たちに割り当てられた格納庫に辿り着き、俺たちは階段を上って、高さ6m程有る巨大なシャッターの上に用意された小さなドアから中に入る。

 さて、格納庫内の設備だが、実はかなり充実しており、その気になれば此処で生活できる程……と言うか、実際に住所として登録、生活の場にしてしまっている外勤部隊の隊員も居るほどである。

 具体的に言うとだ。

 生活空間の方は小隊メンバー全員が入ってもなお余裕のあるミーティングルーム兼用の小さなキッチンと柔らかいソファーと絨毯付きのリビングに、トイレ付のユニットバスが待機室と言う名目で設置されており、シャッター上のドアから中に入ると、まずこの部屋に出る。


「まあ、今日はミーティングも既に終わっているしスルーだな」

「だね」

「うん」

 と言っても、今日は用事が無いのでスルーする。

 で、待機室を抜けると格納庫本体に着き、俺たちの視界にキャリアーと瘴巨人が置かれているのが映り込むと同時に、その周囲で点検作業をしている工業員の人たちと、第1層の回廊の方に通じているシャッターが見えてくる。


「あ、ハル様、トトリ様、ワンス様、お疲れ様です!」

「ミスリさんもお、お疲れ様!」

「む……」

「へぇ……」

 と、工業員の人たちの指揮を執っていたミスリさんが、格納庫に入ってきた俺たちに気づいて手を振りながらこっちに向かって駆け寄ってくる。

 で、その……ミスリさんのサイズで走ったりすると、当然の話として上下左右にアソコが大きく揺れるわけでして、男の悲しい性としてどうしても目が行くと同時に動揺もしてしまう訳でして……背後の二人(トトリとワンス)が俺の事を非難するように睨み付けてきているのがすごくツラいです。はい。


「ゴホン。そ、それでミスリさん。俺たちの装備や瘴巨人については?」

「こっちです。着いて来てください」

「「じぃー……」」

 そうして、俺は背後に突き刺さる二人の視線を感じながら、自分たちの装備を確かめるべく、ミスリさんを追う形で格納庫の一階部分に降りて行った。

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