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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第6章【シンなる央】

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341/343

第341話「MEx-6」

「『不滅滅ぼし』と『不死殺し』を乗せた攻撃をあれだけ打ち込んでもこの程度ですか」

「まあ、力の量に差が有り過ぎるからね。こればかりはどうしようもないと思うよ」

 『不滅滅ぼし』……確か、不滅の存在を滅ぼすための能力だったか。

 で、『不死殺し』は不死の存在を殺すための力。

 まあ、どちらも俺の場合は鱗や爪にそう言う性質を持つ金属が含まれているとかで、自動的に攻撃に付与されているから意識的に使う必要は無いらしいが。


「しかし、まるでゾンビだな」

「ゾンビか……まあ、死にたくても死ねないとか、自分以外の誰かの意思で動いているって言うあたりは近いかな」

「自分以外の意思?」

 そう言うエブリラの視線は鋭くも哀れみの色を含んでいた。

 それにしても自分以外の意思?

 まるで先程からちょくちょく会話に入ってくる『森羅狂象』と言う力そのものに意思がある様な言い方だな。

 一体どういう事だ?


「実際、『森羅狂象』そのものに意思があるかは私たちのレベルじゃどうやっても分からないよ。でも、その性質や出元を考えれば、意思に近い物はあると思うんだよね」

「出元……?」

 と、俺の疑問を察したのか、エブリラが『森羅狂象』について語り始める。


「私の存在意義を果たす為に、『森羅狂象』については色々と調べたんだよ。で、その結果として『森羅狂象』の正体を推測する事は出来たの」

 エブリラの存在意義……生き続ける事か。

 それはそれで大変な存在意義ではあるな。


「順序立てて説明するのは……面倒だからやめておくとして」

「おい」

「まず、色んな世界の歴史を調べてみると、お母様が過去に関わっていなくても『森羅狂象』の影響と思しき何かは腐るほど発見できるんだよね。で、ついでだからという事でそう言った世界の創世神話や出来上がり方を調べてみたんだけど、始めの部分については結構どの世界も似通っているんだよね」

「似ている?」

 創世神話が似ていると言うのはどういう事だ?

 と言うか、『森羅狂象』に関わりのある話なのか?


「そう。神が創るにしても、自然に生まれるにしても、世界が産まれるのは何時だって混沌か虚無のどちらかから。そこから全ては始まり、最初のものは生まれる。それこそ時間や空間と言った物もね」

「それは……そうなんだろうね」

「でもね。冷静に考えると混沌や虚無があるだけじゃ世界が産まれる事は無いんだよ」

「……。まさか」

 俺には何となくだがエブリラの言いたい事が分かってしまった。

 いやだが、もしも仮にそうだとしたら……


「そう、きっかけが要るんだよ。どんな世界が産まれるにしても、何から世界に始まるにしても“変化”と言うきっかけが」

 誰も勝てるはずがない。

 誰も制御することなど出来るはずがない。

 誰も抗うことなど出来るわけがない。


「つまり『森羅狂象』と言うのは、混沌と虚無の配偶者にして、三千世界全ての祖たる概念存在」

 勝利とは戦いが変化して得られる物なのだから。

 制御と言うのは抑える方向にそれを変化させるものなのだから。

 この世に居る限り時間も空間も常に流れ、変化し続けるものなのだから。


「変化と言う概念そのものなんだよ」

 変わらぬものはこの世に存在できないのだから。


『ウルガアアアァァァ!!』

「「!?」」

「さ、そろそろ無駄話も終わりにした方が良さそうだね。どれだけ調べても、どうして普通の農家の娘だったお母様に、総量から見れば極一部とは言え、個が所有するには多すぎる『森羅狂象』が宿ってしまったのかとは分からなかったしさ」

「ああ、やはりそこは分からなかったのですね。まあ、あのお方自身分からないと言っていましたから、仕方がない事ですが」

 インサニティが吠える。

 と同時に全身からあらゆる色として認識できる魔力が吹き上がり、その魔力に触れた空間が変質していく。

 時間が……空間が……法則が……捻じ曲がっていく。

 一体こんな物どうすれば……。


「心配しなくても、お母様の肉体の破壊とその身に宿した『森羅狂象』の分散化。その両方が終われば、お母様の肉体は滅びるし、『森羅狂象』もそのまま散っていくよ」

「……。分かった」

「こうなったらやるしかないね」

 肉体の破壊と『森羅狂象』の分散化……か。

 確かに、既にウスヤミさんと変態は動き出し、『森羅狂象』とインサニティ双方へと攻撃を仕掛けている。


「ああそうだ。ワンスちゃんだっけ」

「へ?」

 が、長時間範囲内に留まるのはリスクが高いのか、二人ともヒットアンドアウェイで少しずつ削っているようだった。


「ついでだから教えておくよ」

「何を……っつ!?」

 こりゃあ、二人よりも自分の法則を保持する能力が少ない俺とワンスだと、きちんと『森羅狂象』が展開されている範囲を見極めて攻撃する必要が有るな。

 どこまでそんな小細工が通用するかも怪しいが。


「じゃ、私も攻撃に参加するから、二人も頑張ってね」

「分かり……ました」

「あ、ああ?」

 エブリラも笑顔を浮かべたまま、背中から翼を生やして突撃を開始する。


「ワンス?」

「……」

 先程からワンスとエブリラで何か会話をしていたみたいだが……一体何を言われたんだ?

 とりあえず戦力外通告とかでは無さそうだが……。


「ハル。全力で行くよ……」

「ん?」

「『ハルハノイ式自立行動型対神用機動兵器黒竜鎧』起動!」

「!?」

 ワンスがそう言った瞬間、俺の中の何かが切り替わった感覚がした。

01/29誤字訂正

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