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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第6章【シンなる央】
339/343

第339話「MEx-4」

『まあいい、貴様等の攻撃のおかげで幾つか思い出した事も、確認したい事も出来た』

「武器……か?」

「だろうね」

 インサニティが前にまっすぐ伸ばした右手に沿う形で、長さ1m程の刃が一枚生み出される。

 そして、生み出された刃がインサニティの周囲を円を描くようにスライドし始めると同時に二枚目の刃が生み出され、その後も同じように刃が生み出されていく。


「確認したい事ねぇ……いまさら何を聞きたいって言うんだ?」

『ふふふふふ……』

 そうして生み出された刃は計八枚。

 刃はどれも奇抜な形をしており、持ち手は無く、まるでインサニティがその身に秘めている狂気をそのまま具現化したような禍々しさを放っていた。

 もしかしなくても、ただ切るだけの武器では無いのだろうな。


『エブリラ』

「おっと」

「「!?」」

 インサニティの姿が一瞬消え、俺とワンスが気が付いた時にはエブリラの前に現れ、八枚の刃をエブリラに向けて叩きつけようとしていた。

 それに対してエブリラは槍の持ち手で最初の一撃を受け止め、返す刃でインサニティへの攻撃と刃の迎撃を行う。


『私はお前をあらゆる時、場所、状況でも生き残れるような存在として設計、創造した。何百何千と言う動植物を混ぜ合わせる事によってなぁ』

「ええそうですよ。で、今更それがそうしたんですか?」

『ならば何故この場で逃げない?お前は生き続ける事こそが存在理由(レゾンデートル)だろう。ならば、創造主たる私との戦いなど最も忌避して然るべきものではないのか?』

「ああそんな事ですか」

 二人の攻防は俺の目では微かに捉えられる程度だが、変態たちにとっては小手調べのような速さの筈だ。

 なのに、ウスヤミさんも変態もエブリラに加勢する様子はない。


「ここで逃げる方が遥かに私の致死確率を高めるからに決まってるじゃないですか。そうでなくとも私の存在理由からしてみれば、『森羅狂象』は何時か絶対に排さなければならない存在なんですよ」

『確実に勝てるかも分からないのにか?』

「負けの目しか見えない手詰まりの状況になってから仕掛けるよりかは遥かにマシだと思いますよ。お母様」

『ほう……勝ちの目があると考えるか』

 エブリラが槍による攻撃に組み合わせて黒い何かを生み出し、インサニティと八枚の刃を迎撃。

 刃と黒い何かがぶつかり合う事によって生じた爆発に合わせて両者は距離を取る。

 そしてインサニティが向かって来たのは?


『ウスヤミ、貴様は自分が誰に刃を向けているのか分かっているのか?』

「かつて仕えていた主ですね」

 ウスヤミさんだ。

 ただ、八枚の刃はどれもウスヤミさんに近づくことすら出来ない内に、ウスヤミさんの剣によって弾き飛ばされている。


「尤も、今の私は既に別の主を持ち、その主は貴女を滅することを望んでいる。おまけにかつての主通りなのは外見だけで中身は半端者。刃を収める理由には到底成り得ませんね」

『ふん、随分と言ってくれるな。あんな不出来な私(『狂正者』)の何処が良いと言うんだ?』

「力に溺れ、流され、抑制の無い悪意のままに害を垂れ流すどこぞの誰かよりかは遥かにマシかと」

『はんっ!まるで私が力を制御できていないような言い草だな。ならば試してみるか!?』

「やれるものならどうぞ」

 インサニティの手と八枚の刃からそれぞれ別に無数の雷が放たれる。

 が、それらが無節操に広がる前にウスヤミさんが先程の結界を展開。

 ほぼ全ての雷とそこから生じるランダムな現象を結界の中に抑え込むことに成功する。


『所詮は従者だな。主には勝てない』

「その従者に大半を抑えられている分際で何を言っているのですか?」

 が、抑え込めなかった現象の幾つかによって、ウスヤミさんの身体には多少の傷がついていた。

 どうやらウスヤミさんはそこまで防御能力に優れているわけでは無いらしい。


「それに……」

「子でも従者でもない奴がここに居るんだがな」

『チラリズ……』

 と、変態が何処からともなく現れ、インサニティに向けて手に持った大剣を振るう。

 それをインサニティは八枚の刃で防御しようとするが……


『むぐっ!?』

 変態の大剣は八枚の刃による防御も、インサニティが放つ魔力も、その他諸々全てを無視してその身に到達。

 インサニティの腹を裂きながら、その身を勢い良く吹き飛ばす。


「どうせだから語っておいてやるが、俺がお前と戦う理由は至極単純だ」

『ちっ……例のすり抜けか』

 どうやら、変態の大剣に防御と言うものは通じないらしい。

 うん、ウスヤミさんの結界も酷いが、変態の攻撃も十分酷いな。


「お前が今後生み出すであろうチラリズムの量と種類と、消し去ってしまうであろうチラリズムの量と種類。それが大きくマイナスに傾くと言うチラリズムの欠片も無い未来が待っているからだ。そんな事はこの俺が断じて許さん」

『ふん、貴様が戦う理由になど興味はない』

 なお、既にインサニティの腹に傷は残っていない。

 どうやらかなり強力な再生能力を持っているらしい。

 後、変態の台詞は右から左に受け流しておく。

 聞かなくても何を言う気なのかは分かるしな。


『さて……』

「……」

「ハル……」

 インサニティがこちらを向く。

 そして、俺が先手を取るべく動こうとした瞬間だった。


『どうして半端物の神と人間風情がここに居る?』

「「っつ!?」」

 インサニティは既に俺の背後に居り、俺の周りには八本の刃が漂っていた。


『目障りだ』

 刃が俺と俺の中に居るワンスに向けて動き出す。


「しまっ……」

 刃の速さと鋭さ、含まれている魔力の性質からして、ただ守るだけでは決して防げないだろう。

 だが防げないのなら……


『死……』

「目障りなのはテメエだ!要介護だったキチガイババア!!」

 可能な限り被害を抑える方向に動けばいい。


『!?』

「わおっ」

「……」

「良いチラリズムだ」

 そう、【堅牢なる左】だけを巨大化し、身体の他の部位に突き刺さる前に当て、刃の動きを止め、まとめ……


「ぶっ潰れろ!」

『っつ!?』

 放った本人に叩き返してやればいい。

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