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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第6章【シンなる央】
334/343

第334話「M6-14」

「さて……」

 光が晴れた後には、白い砂地も大量の水も無かった。

 代わりに広がっていたのはややくすんだ灰色の平面床と、床よりは若干明るめな灰色の空。

 そして、それが地平線まで続き、交わっている光景だった。


「これでまずは一人だな」

「貴様っ!」

 俺はその中で少女『守護者』を二つの目で睨み付ける。

 そして残りの目で、少女『守護者』の後方に居る球体『守護者』と、はるか遠方に立っている灰色の門、俺が爪を突き立てた地面の近くに転がっている砂で出来た山羊の頭の様子を観察する。

 うん、他に人影のような物は感じられないし、砂山羊も『守護者』だったのだろうし、もしかしなくてもあの門のような奴も『守護者』なのだろう。


「ぐっ……」

「つまり、それだけお前一人一人が例の物を封印するのに割かなければならない力の量も増えたわけだ」

 と、少女『守護者』が一瞬立ちくらみのようなものを起こす。

 足を一歩前に踏み出す事によって倒れる事は防いだが、その表情からは明らかに余裕が無くなってきていた。

 まあ、当然の話ではあるな。

 砂山羊『守護者』が倒れた事によって、一人の『守護者』の負担は単純に計算しても約1.3倍に増えたのだから。

 となれば必然、割くべき力の量も1.3倍に……いや、各種相乗効果や、慣れも考えればもっと多くの力を割く必要が有るのだろう。


「さてとだ」

 既に俺の背後では動きが起きている。

 なら、俺も合わせるべきだな。


「だが、私は……」

「一気に行かせてもらうぞ」

「っつ!?」

 砂山羊『守護者』が死んだのと同時に、俺の身体は明らかに軽くなっていた。

 それこそ『守護者』が付いていくことが出来ない程の速さで動く事も可能なほどに。

 それは同時に、あの海水や砂には俺たちの動きを阻害するような何かが含まれていたと言う事も示していたわけだが、それはまあもういい。


「ふんっ!」

「ぐっ!?」

 俺は【威風なる後】の圧力場を乗せた状態で【堅牢なる左】を少女『守護者』の腹に叩き込み、その身を大きく浮かせる。

 手応えは薄い。

 が、先程までに比べれば、確かな質量と存在を感じられるようになっていた。

 どうやらここにも砂山羊『守護者』が仕掛けを施していたらしいな。


「セブ!」

『言われなくても!』

 いずれにしても少女『守護者』の身体は浮いた。

 そこに向けられるのは?

 限界まで魔力がチャージされた『トリコテセン』の『コムダマエ』の砲門。

 既にその砲門からは赤い光が漏れだしていた。


「ぐっ!させるか!」

 それに対する『守護者』たちの行動は?

 少女『守護者』は『トリコテセン』に向けて手を伸ばし、その魔力は『トリコテセン』を包むように球形となっていた。

 つまりは『虚空還し』の構えだ。

 球体『守護者』は『トリコテセン』に向けて万を超す……しかも一つ一つ微妙に性質が違う光弾を放っていた。

 つまりは最初に放ってきたあれと同等か、それ以上の威力を有する攻撃と言う事だ。

 どちらも看過していい威力の攻撃では無い。

 が、威力的に俺の能力で防げるのは、どちらか片方の攻撃だけだ。

 本来なら詰みの状況だと言ってもいい。


「シーザ!」

『分かっている!』

 攻撃を防げる力を持っているのが俺だけならばの話だが。


「【威風なる後】【不抜なる下】!」

「ぐっ!?だが……」

 俺は【威風なる後】と【不抜なる下】の力場を発し、少女『守護者』の放った『虚空還し』の力場に干渉、強制的に発動を途絶させる。


『捻じ曲がれ!』

「なっ!?」

 加えて、『虚空還し』の発動が中断されると同時に、『トリコテセン』に搭載された箱の力によって増幅されたシーザの魔力が整然と迫りくる光弾に向かい……その軌道を狂わせ、その大半を誘爆させ、残り僅かな物も『トリコテセン』から大きく離れた場所に着弾して終わらせる。


『『コムダマエ』……発射!』

「!?」

 そして、目の前の光景に呆然とする少女『守護者』に向けて『コムダマエ』が発射され、その身が爆炎に包み込まれる。


『『シクスティ』、全機能全開!』

『ぶち抜け!』

「ーーーーー!?」

 と同時に、球体『守護者』の方でも異変が起こる。

 気が付けば、球体『守護者』の各部から爆発が起き、金色の外皮を吹き飛ばしていた。

 俺が砂山羊『守護者』を倒すと同時に突撃を開始していた『シクスティ』が、球体『守護者』の身に直接刃を突き立て、トトリとロノヲニトがその能力によって微かな……けれど半数の『守護者』が行動不能な現状では致命的な変化を与えた結果だった。


「トドメだ」

「ぐがっ……」

 これがあの箱の中の世界で重ねた訓練の成果だった。

 単独では絶対に勝てない相手でも、それぞれがそれぞれの能力を生かす形で戦う事によって、力の差をひっくり返した結果だった。


「塵も残さず……」

「だが……」

 だが、やるならば徹底的に。確実にだ。

 故に俺は【シンなる央】から魔力を引き出し、そこに【苛烈なる右】の力場を組み合わせる。


「分解しろ」

「だがしかしだ……」

 そして俺は少女『守護者』に向けて全力のブレスを放ち、その肉体を完全に消滅させた。

01/19誤字訂正

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