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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第6章【シンなる央】
319/343

第319話「トリコテセン-7」

「さて……」

 『トリコテセン』の試験航行は一週間。

 この期間中に航行能力に衣食住は勿論の事、戦闘や索敵の能力に関しても試し、問題点を洗い出すことになる。


「本当に大丈夫なんだよな」

 そして、俺たちダイオークス26番塔外勤部隊第32小隊もこの一週間の間に、あちらで出来た事がこちらでも出来るかを試す事になる。


「うん、大丈夫なのね」

「ふむ、お主の『真眼』で穴が見えないなら、問題ないの」

 が、一週間もあるのだ。

 正直に言って、能力を試すにも適した時間と言うものがあるし、『トリコテセン』を扱う上で習得すべき諸々を学ぶにも、教える側の都合と言うものがある。


「じゃあ、ドクターよろしく頼む」

「うむ、分かったのじゃ」

 と言うわけで、『国食み』戦で幾らか試すべき事が消化できた俺と、『真眼』のおかげで改めて出来る事の確認をする必要性が薄いエイリアスの二人で、ドクターから『守護者』に関しての情報収集である。

 なお、この話し合いが『守護者』に感知されると大惨事確定なので、『トリコテセン』の情報遮断機能に加えて、ドクターによる情報遮断用の結界と俺の【威風なる後】の圧力場による物理的な振動遮断を行い、これらの防御網に穴が存在しないかをエイリアスに『真眼』で調べてもらっている。

 うん、これでバレるようなら、とっくの昔に『クラーレ』は滅びているな。


「では、我が社……多次元間貿易会社コンプレックスで把握しておる情報を開示するとしよう」

 なお、ドクターは格好つけているが、ドクターの張った結界は部屋の四方に藁で作った縄を張ると言うもので……納豆臭い。

 恐らくだが、この話し合いが終わったら、大量の消臭剤を部屋の中にバラ撒く必要が有るだろう。

 それぐらい臭い。

 ま、臭いの情報を【竜頭なる上】の効果で遮断しておけば問題ないか。


「まず『守護者』の位置についてじゃが、我が社ではこの辺りではないかと睨んでおる」

 では話に集中するとしてだ。

 ドクターが『クラーレ』の世界地図を開くと、その一点……大疫海と呼ばれる『クラーレ』で最も大きい海の真ん中を指差す。


「そして、メラルドの絵から得た情報を基に算出したデータも……」

 ドクターが指さした部分を中心として、地図の大きさからすれば小さな、けれど縮尺を考えれば巨大な円が表示される。

 直径は……100kmぐらいか?


「見ての通りじゃ」

「なるほど」

 で、この円の中の何処かに『守護者』が居ると。

 うーむ、しかし直径100kmの円かぁ……。


「ドクター、これ以上に『守護者』の位置を絞る事は?」

「厳しいの。これ以上となると……そうじゃな、現地で直接調べるしかないの」

「なら、リスクがただ増すだけか」

 もう少し場所を絞れないかと思ったが、ドクターの言葉を聞く限りでは、無理矢理調べてもただ『守護者』にこちらの存在と目的を教えるだけの結果に終わりそうだな。

 それはよくない。

 こちらの戦力を考えたら、『守護者』の正確な場所が分かるメリットに比べて、守りを固められるデメリットが大き過ぎる。


「お主らじゃったら、この円の中に入れば直ぐに正確な位置を掴めるじゃろうしな」

「一目で分かる自信はあるのね」

「だよな」

 俺の【竜頭なる上】、エイリアスの『真眼』、トトリの『サーチビット・テスツ』、『トリコテセン』の索敵装置と、索敵関係は相当の物が揃っているしな。


「ところでドクター?」

「なんじゃ?」

「この円の中に島とかは?」

 と言うわけで、話し合いを続けるとしよう。

 少しでも探す範囲は絞っておいた方が良い。

 そう思っての質問だったのだが……


「これはあくまでも瘴気が地上に蔓延する前の地図じゃから、現在この辺りがどうなっているかについては分からん。が、地図の通りなら……この辺りは平均水深4000m超の大海原で、島など一つも無かったはずじゃ」

「……」

 ああうん、これはつまりそう言う事か。


「『守護者』は海底に居ると?」

「さあのう?瘴気が広まって以来、海の中については常にミアズマント……『守護者』の支配下に置かれておったから、海の中については誰も調べていないんじゃ。わざわざ調べる意味もなかったしの」

 はぐらかされたか。

 ただまあ、海の中を調べる必要が無かったと言うのは確かだな。

 瘴気を利用して飛行できる飛行機と浮瘴船が有る以上は、わざわざ普通の船を使って、何時水中から襲われるかも分からない海の上を通る意味はない。

 そうでなくとも、普通の人間が瘴液に落ちたら防護服を着てようが着ていまいが死亡確定だしな。

 瘴液だけなら、瘴巨人や『トリコテセン』なら大丈夫だろうけど。


「まあ、深海と言うだけなら、お主らならそこまで問題はないじゃろ」

「まあ、あの変態の訓練には極限環境下でも普通の環境と同じように動く為の訓練も有ったしなぁ……」

 なお、俺は当然問題なしである。

 『トリコテセン』と同じで、能力を使っているのなら深海も宇宙も……それどころか、溶岩の中だろうと問題なしだ。


「では、話を続けるかの」

「ですね」

 と言うわけで、調べられる事は調べ、予測できることは検討してみるとしよう。

 これだけ広大なのだ。

 その気になれば何だって仕込めるだろうしな。

01/04誤字訂正

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