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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第6章【シンなる央】
317/343

第317話「トリコテセン-5」

「さて……」

 『トリコテセン』の舳先に立った俺は【竜頭なる上】を起動し、『トリコテセン』の進路上に居ると言う巨人級ミアズマントへと視線を向ける。


『ハル。どうじゃ?』

「確かに居ますね。デカいのが一匹」

 すると、俺の感知範囲に一匹、今まで出会ってきたミアズマントとは明らかに大きさも発している力の量も違うミアズマントが入ってきているのを感じる。


『タイプは?』

「んー……恐らくはウルフ系統……かな?」

 そのミアズマントの形で一番近いのは狼。

 つまりはタイプ:ウルフに属するわけだが……うん、間違いなく体高だけでも200mはあるな。

 で、その大きさのせいなのか、細かい部分まで非常に良く作り込まれており、毛の一本一本まで再現されている。

 なので、遠目から見る分には本物の狼と見た目上の差は無いように感じる。


『巨人級の狼型ミアズマント……まさか『国食み』か!?』

『馬鹿な!?だが……』

『くそっ……ここでこんな化け物が出て来るのか……』

 と、俺の報告に、『トリコテセン』の中が騒がしくなる。

 『国食み』ねぇ……仰々しい名前だが、そんなに慌てるような相手なのか?


「と、何かするつもりみたいだな」

『む……』

『『『!?』』』

 巨人級ミアズマント・タイプ:ウルフ改め『国食み』はまだ10km以上先に居る。

 が、四肢を地面に食い込ませ、まるで威嚇でもするように全身の毛を逆立てている。

 うん、これは何かしてくるな。

 『国食み』の毛は一本一本が何かの装置になっていて、毛の間には別のミアズマントが居るっぽいし。

 遠いから詳細は分からないが。


『グルアアアアァァァァ!!』

「へぇ……」

 と、『国食み』が一吠えすると同時に、毛の機能を使ってか、小さなミアズマント……ああいや、『国食み』と比べて小さいだけで、普通の人間の倍はあるな。

 とにかく、『国食み』から小さなミアズマント、よく見れば悪魔級ミアズマント・タイプ:フリーであるそれがこちらに向かって飛んでくる。


「フリーの出元がコイツだったわけか」

『ほう、それはまた興味深い事なのじゃ』

『むう。直接見れないのが残念なのね』

『落ち着いてる場合か!?『国食み』とは二百年以上前に幾つもの都市を滅ぼしたミアズマントなのだぞ!?』

『くそっ!全速回頭!急いでこの場から離脱するぞ!!』

 『トリコテセン』の中が騒がしいなぁ……二つの意味で。

 まあ、トゥリエ教授とエイリアスについては置いておこう。

 自分の欲求に忠実なだけだ。

 この場から逃げようとしている奴に対しては……


「別に怯える必要なんてないだろ。俺たちがこれから相手にするのは、『国食み』どころか、その『国食み』を作り出した張本人なんだからな」

 そう言ってやればいい。


『それは……』

「と言うわけでだ」

 『トリコテセン』に着弾するコースで『国食み』から射出された無数のフリーが飛んでくる。

 対して俺は【威風なる後】を起動、背中から一対の黒い翼を生やす。


『お前ら……』

「落ちろ」

 そして、『トリコテセン』の中が騒がしいのも無視して【威風なる後】の圧力場でもって、全てのフリーを空中で捉え、瘴境の下に広がる地面に全力で叩き落とす。


『『『!?』』』

『……』

『流石だね』

『まあ、これぐらいは出来ますよね』

 瘴境の下から叩き落したフリーの数と同じ爆音と土煙の柱が上がってくる。

 さて、これで第一波は防いだな。

 と言うわけで反撃に移るわけだが……


「ドクター。『トリコテセン』の兵装を使う事は?」

『厳しいの。お主にも聞こえておると思うが、こっちは大慌てじゃ。とてもではないが、マトモに戦う事は出来ないの』

 うん、無線機から聞こえて来ているが、『トリコテセン』の司令部は完全に紛糾してる。

 どうにも『国食み』と戦おうとしている者と逃げようとしている者とで、議論にもなってない言い争いになっているようだ。

 これじゃあ、幾ら『トリコテセン』に優秀な兵器が積まれていても無意味だな。


『ハル君、私たちはどうするの?一応『シクスティ』に乗って甲板に上がるエレベーターで待機しているけど……』

「んー、トトリたちは念のために待機しておいてくれ。流石に確認もしていない機能でいきなり戦うのはリスクが高すぎる」

『分かった』

 『シクスティ』に任せるのは止めた方が良いな。

 体格差の問題もあるが、まだどこまで機能が使えるかの確認が終わっていない状態で『国食み』程の相手と戦うのはリスクが高すぎる。


『ではどうする気だ?』

「俺が出る」

『だ、大丈夫なのか!?』

『待て!お前がこの場を離れたら……』

「あー、うっさいから男は黙ってろ。ドクター、最低限の防衛が出来るようにはしておいてくださいね」

『分かったのじゃ』

 となれば、俺が出る他ない。

 『トリコテセン』の司令部がうるさいが、そこはドクターに黙らせておいてもらうとしよう。


「じゃ、行ってくる」

『行ってらっしゃい。ハル君』

『頑張ってきな。ハル』

「おう」

 と言うわけで、俺は【威風なる後】を発動すると、『国食み』に向けて一直線に飛び立った。

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