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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第6章【シンなる央】
316/343

第316話「トリコテセン-4」

「さてと、ナイチェル、フィーファ。動作確認手伝ってくれる?」

「分かりました」

「はい」

 さて、『シクスティ』が起き上がり、動作確認とやらを始めたわけだが……先程の待機状態から起動状態に持って行く動きだけでも、『シクスティ』が普通の瘴巨人とは一線を画す存在であることが分かるな。

 なにせ、動きにぎこちなさが一切存在せず、素人目に見ても滑らかと言う他ない動きをしているのだから。

 例えて言うなら……そうだな、普通の瘴巨人が全身甲冑を着込んだ人間の動きであるのに対して、『シクスティ』の動きは普通の衣服を着た人間の動きと評するのが正しいだろうな。


「ハル。角が出ているのじゃ」

「おっと」

 トゥリエ教授に指摘されて、俺は慌てて角を消す。

 どうやら『シクスティ』を観察していたら、子細に観察するために【竜頭なる上】を起動してしまったらしい。

 うーん、ここ最近はずっと全能力を開放していたから、【竜頭なる上】を使っていないと逆に違和感を感じる様になっちゃったな。


「しかし、あれだけ滑らかに動けるのに、防御力とかも普通の瘴巨人よりはるかに上なんだよな」

「当然です。私が設計した分もありますけど、それ以上に起動中は常にあの二人の能力によって強化もされていますから」

 トトリとロノヲニトの能力……か。

 もしかしなくても、本体に搭載されている武器は最低限のもので、基本的に武装はミスリの設計に基づいてロノヲニトの能力によって生成、トトリの特異体質で操作する。

 と言う形態を取るんだろうな。

 しかしそうなると、『シクスティ』の背中にある六本の棘は、二人の能力を補佐する物なんだろうな。


「それでハルハノイ。お主はこれからどうするつもりじゃ?」

「ドクター」

 『シクスティ』の動作確認が進む中、ドクターが話しかけてくる。


「どうするとは?」

「そのままの意味じゃ。現在『トリコテセン』は試験航行中じゃが、それが終われば一時的にじゃが、『トリコテセン』はお主らに預けられる」

「そう聞いてますね」

 確かに変態(チラリズム)はそう言っていたな。

 技術供与と引き換えに『トリコテセン』は一時的に俺に預けられる。

 そして、『トリコテセン』を使って、俺たちは『守護者』の元に行き、挑むことになる。


「勿論戦いますよ。ただ……」

「ただ?」

 ただ、『守護者』の元に行く前にやるべき事がある。


「色々と確認しないと拙い事が有るんで、まずはそれを全部終わらせてからですね」

「ほう……」

 俺たちは箱の中の世界で『守護者』を倒すべく訓練を積んできた。

 が、箱の中の世界は変態による調整が入っていたとはいえ、訓練用に調整された世界。

 早い話が、あの箱の中の世界で出来たからと言って、『クラーレ』でも同じことが出来るとは限らないのである。


「もしもあの世界で出来て、この世界で出来ない事が有ったりすれば、冗談抜きに致命的な隙を生みかねないですから」

「まあ、それは確かにそうじゃな」

 なので、『守護者』に挑むのは、最低限あの世界で出来た事がこの世界でも出来るかを確かめてからである。


「ところでドクター?」

「なんじゃ?」

「『トリコテセン』は試験航行中って話ですけど、俺たちが居ても問題ないんで?」

「部屋の数や食料については、お主らが増えても問題ない程度には積んであるから大丈夫じゃ」

「期間については?」

「後一週間。と言う所じゃな。それだけあれば『トリコテセン』を動かす為に必要な諸々や、各種機能について教えることも出来るじゃろうな」

「なるほど」

 で、『トリコテセン』そのものについても後一週間は使えないと。

 うん、この試験航行中に判明した問題とかが有れば、その解決の為にもさらに時間がかかるしな。

 そうなると結局はもうしばらくの間動けないだろう。


「となると……『シクスティ』の動作確認が終わったら、『トリコテセン』の責任者さんに会わせて貰ってもいいですか?これからしばらくの間は世話になるわけですし」

「そうじゃな。それがいいじゃろう」

 と言うわけで、まずは『シクスティ』の動作確認を終わらせてからと言う事になるが、『トリコテセン』の責任者に会って挨拶をしておく必要はあるだろう。

 変態のせいではあるが、いきなり船内に現れると言う問題行動も起こしているわけだしな。

 その謝罪も兼ねてだ。


「よし、基本の動作確認完了。兵装についてはまた今度だね」

「そうだな。この中でアレを使うのは問題がある」

 と、『シクスティ』の動作確認も終わったみたいだな。


「二人とも……」

 じゃあ、『トリコテセン』の責任者さんに挨拶を……と思い、二人に声を掛けようとしたその時だった。


『アラート!アラート!!前方に巨大ミアズマントを確認!』

「む?」

「ん?」

 突如『トリコテセン』の船内に警報が鳴り響く。


『タイプは不明!機影からクラスは……巨人級と思われます!』

「「「!?」」」

「巨人級か……」

 その内容は『トリコテセン』の進路上に巨人級ミアズマントが現れたと言う報告だった。


『『トリコテセン』は只今より……』

「ドクター」

「なんじゃ?」

 うん、これは……


「『トリコテセン』の外にはどうやったら出られますか?」

 丁度いい力試しだな。

新年あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

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