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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第6章【シンなる央】
315/343

第315話「トリコテセン-3」

「うわぁ……広い……」

「本当だね……」

「ドクター。ここって何機ぐらい入るんですか?」

「そうじゃな……二十は確実に入ると思うぞ」

 格納庫はとにかく広かった。

 ドクターの言うとおり、瘴巨人が二十体は確実に入るだろうし、瘴巨人と同程度の大きさを持つような大型重機も相当数入れられるだけの広さがあった。

 高さも10m程有るので、場合によってはこの中で戦うぐらいの事は出来るだろう。


「と、あそこの様じゃな」

「そのようですね」

 で、普段なら瘴巨人の整備作業などで騒がしいであろう格納庫内だが、今は別の理由でもって、格納庫内の一角が騒がしくなり、人の山が出来上がっていた。

 うん、あそこにトトリの瘴巨人が置かれているんだろうな。


「ああっ、ドクター。それに……ハルたち?」

「うむ、儂じゃ」

「お久しぶりです。シャインさん」

 と言うわけで、その場所に向かったところ、見覚えのない顔が殆どの中で、一人だけ見覚えのある顔があり、その人も俺たちに気づいたのか近づいてくる。

 その人の名前はシャイン・フォクシィ。

 ダイオークス26番塔外勤部隊第3小隊所属であるブルムさんの旦那であり、自身もメカニックを務める方である。

 うん、この人含めてダイオークス26番塔第3小隊は、『クラーレ』全体で見てもかなり優秀な部類に入るもんな。

 『トリコテセン』に乗っていても何らおかしくはない。


「それで、例の瘴巨人はどうしたんじゃ?」

「上の言いつけ通り、誰も触れてませんよ。まあ、皆気になって仕方がないんで、ご覧の通りですが」

「なるほどのう」

「まあ、気になるのは仕方がないだろうな」

 シャインさんがその瘴巨人の周囲に集まっている人たちに呼びかけ、俺たちが通れるように道を作ってくれる。


「で、このタイミングで『トリコテセン』に乗っていなかったはずのお前らが現れたって事は、そう言う事でいいんだよな?」

「ええ、シャインさんの想像している通りです」

 で、道が出来上がったところで、俺たちはトトリとロノヲニトを先頭に前進。

 視界の中にそれを……他の瘴巨人とはシルエットの段階から大きく異なる一体の瘴巨人を収める。


「うん、間違いないね」

「ああ、『シクスティ』だ」

「ボソッ……(こっちで作り直さなくて済んだのは嬉しいけど、この場に現れるなんてちょっと複雑な気分)」

 『シクスティ』……箱の中の世界でトトリ、ミスリ、ロノヲニトの三人で設計・製造した瘴巨人だったか。


「『シクスティ』ねぇ……一体どんな瘴巨人なんだ?」

「背中のアレとか用途の検討すらつかないよな」

「マトモに動くのか?これ」

 周囲の人山から様々な声が上がる。

 まあ、そう言う声を挙げたくなる気持ちも多少は理解できるな。

 なにせ、『シクスティ』は基本的な骨格……人間に酷似した部分については以前のトトリの乗騎である『テンテスツ』に酷似しているが、背中部分には『テンテスツ』どころか、ほぼ全ての瘴巨人には付いていないであろうパーツ……六本の巨大な棘のようなものが付いているのだから。

 しかも、そのパーツのせいで普通の瘴巨人よりも更に前かがみな姿勢で待機しているしな。


「で、トトリ、ミスリ、ロノヲニト。実際のところどうなんだ?」

「んー、こっちの世界ではまだ動かした事が無いから、ちゃんと使えるかどうかについては何も言えないかな」

「理論上は問題ないはずです」

「建造も我の能力を使ってやっているから、本当にそのままこちらに送られて来たならば、問題なく動くはずだ」

 と言うわけで、その詳細を知っているであろう三人に詳しい内容を聞いてみたが……まあ、そう言う答えが返って来るよな。

 あの変態の事だから、アチラのものと本当に同じものなのかと言う点については心配しなくてもいいだろうけど。


「シャインさん。ドクター。この場で動かすのは?」

「ちょっと待ってくれ。上に許可を取ってみる」

「だそうじゃ」

「了解です」

 まあ、武装についてはともかく基本的な動きが出来るかについては早めに確かめておいた方が良い。

 そう思ってこの場で動かしても問題ないかを俺は尋ねてみる。


「上の許可は取れた。が、武器関係については控える様にとの事だ」

「分かりました」

「ありがとうございます。じゃ、ちょっと乗ってみるね。ロノヲニト」

「分かった。頼むぞ。ミスリ」

「はい」

 許可が取れたところで、ミスリがガイノイドの体からロノヲニトの本体を取り出し、ミスリからロノヲニトを受け取ったトトリはそれを手に持って『シクスティ』へと向かう。

 えーと?


「『シクスティ』はトトリ様とロノヲニト様。二人の能力を使用することを前提とした瘴巨人なんです。なので、二人揃わないと、色々と不具合も出るんです。ボソッ……(『虚空還し』対策もありますけど)」

「つまり、一種の複座式って事か?」

「そう言う事になりますね」

「へー」

 俺を含めて殆どの人間がトトリたちの行動を疑問に思っていると、ミスリから捕捉が入る。

 複座式の瘴巨人か……まあ、トトリの特異体質とロノヲニトの能力は確かに相性が良さそうだしな。

 組み合わせるのは普通にありだろう。

 『虚空還し』……『守護者』対策と言うのはエネルギー面での話だろうな。

 ロノヲニトが居れば、瘴気が無い空間でも動かせるのだろうし。


「準備完了。『シクスティ』起動します」

 そうして俺が考えている間にトトリは『シクスティ』の中に入る。

 そして、トトリの声が中から聞こえてくると同時に、『シクスティ』はゆっくりと起き上がり始めた。

今年最後の投稿になります。良いお年を!

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