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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第6章【シンなる央】
314/343

第314話「トリコテセン-2」

「さて、格納庫に行くついでに、『トリコテセン』について話せる事を話しておこうかの」

 俺たちはドクターを先頭として、ゆっくりと『トリコテセン』の船内を歩いていく。


「まず先程も説明した通り、この『トリコテセン』はイヴ・リブラ博士が設計した船じゃ。名前もその設計図の隅の方に走り書きされていたものを使っておる」

 浮瘴船に乗るのは初めてなので詳しい事は分からないが、船と言うだけあって、少し足場が揺れている感じがする。

 これはまあ、何かに浮いている物の宿命だろう。


「で、その設計図を基に、ダイオークスとボウツ・リヌス・トキシードの二都市を筆頭として各都市が建造。イヴ・リブラ博士のレポートを解読しても技術が足りていない面については我が社……多次元間貿易会社コンプレックスから技術供与を行い、完成させたのじゃ」

「なるほど、道理で素晴らしい出来なのじゃ」

 で、ドクターは既に自分の所属を隠す気は無いと。

 まあ、隠していたら、この場にドクターが居るはずないし、そもそも『トリコテセン』自体完成していないだろうが。


「では、『トリコテセン』本体のスペックについても言及しておこうかの」

 しかし、『トリコテセン』はかなり大きいな。

 通路は普通に二、三人の人間が横になって歩けるサイズだし、ドクターの歩きが多少遅い事を加味しても、まだまだ格納庫には着かない感じがする。

 あ、【竜頭なる上】については誰と遭遇するか分からない状況と言う事で、この場で使うのは控えている。

 あれは低出力版でも見た目が変わってしまうからな。


「まず全長は約500m。幅も70m近くあるの。ああ、甲板の位置ではないが、高さも幅と同じくらいじゃな」

「随分とデカいんだね」

「塔の直径の半分も有るのか……」

 ……。

 大きいと思ったら、本当に大きかった。

 500mって……ああでも、俺の最大出力状態だと全長が1km行くんだから、それに比べたら半分程度か。

 そう考えれば、そこまで大きくも無いんだな。

 俺の最大出力状態が大き過ぎるとも言うが。


「動力源は浮瘴船らしく、基本的には周辺の大気中に存在する瘴気を利用しておる。が、対『虚空還し』を想定して、瘴気が無い空間でも活動できるようにイヴ・リブラ博士が造った箱も動力源として利用しておる」

「いったいどうやって、あの箱からエネルギーを?」

「そこはまあ、色々と面倒な理論が絡んでくるんじゃが……うむ、今は辞めておいた方が良さそうじゃな。アレを説明しようと思ったら、かなり真面目な講義会を開くことになりそうだしの」

「では機会が有れば頼むじゃ」

 エネルギー源はあの箱でもあるらしいが……うん、詳しい説明をされても困る。

 トゥリエ教授やロノヲニト、ミスリはともかくとして、俺なんかが理解できるとは思えない。

 そもそも『アーピトキア』の人たちが色々と調べても、まるで正体が分からなかった代物だしな。


「で、話を続けるが、船の形状としてはタンカーや空母と言うのが恐らくは近い形なのじゃ」

「タンカーに空母……?」

「まあ、瘴巨人を発艦させたり、多くの人間が拠点とするにはいい形と言う事なんだろうな」

「ん?ああ、そうじゃったな」

「あー、これを見た方が説明は早いな」

 まあ早い話が、上部が平らな形の船。

 と言う事なんだろうな。

 ドクターの説明で空母やタンカーと言う言葉の意味が分からなかった面々の為にロノヲニトが見せている模型もそんな感じの代物だしな。


「ちなみに武装は?」

「『トリコテセン』はその役目が旗艦じゃし、補給物資の関係もあって、武装はエネルギー放出系の武装が主じゃな」

「エネルギー放出系?」

「魔力に幾らかの性質を付与して直線的に発射する主砲が一門。副砲……と言うよりかはミサイルのように、それぞれが自立して別個にターゲットへと向かって行く魔力弾を発射する砲門が……百基以上あったはずじゃな。他にも色々と……物理兵器含めて武装が用意されてある筈じゃ」

「へー……」

 武装についてはドクターも把握しきっていないと。

 まあ、ドクターが関わっていない部分なんだろうな。

 それなら知らなくても仕方がない。

 ドクターが興味を持つ分野とも思えないし。


「しかし、これだけの船となると、動かすのにも相当の人数が必要そうですね」

「いや、それがそうでもないんじゃ」

「と言いますと?」

「社長が船を動かすためのAIを何処からか拾ってきたのもあって、動かすだけなら最終的な決定を下す人間が一人居れば良いぐらいなんじゃ。まあ、戦闘を行ったり、他にも色々と細かい事をやるためには他にも人間が必要じゃがの」

 これ程のサイズの船を一人で動かせるのか、それは凄いな。


「と言うわけで、食糧を生産する設備が載せられているのもあって、百人程度であれば年単位で何処にも寄港せずに航行し続ける事も可能なぐらいじゃ。おまけに瘴海の上も中も、深海も宇宙空間も航行可能と来ておる。流石はイヴ・リブラ博士設計と言ったところじゃの」

 うん、一人で動かせる以上にトンデモナイ情報が普通に出てきたな。

 年単位で航行できるとか、もうそれ普通に小さな都市みたいなものだろ。


「と、ようやく着いたの。ここがそうじゃ」

 と、ここでようやく格納庫に着いたらしい。

 そして、ドクターの手によって格納庫に続く扉が開けられた。

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