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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第6章【シンなる央】
313/343

第313話「トリコテセン-1」

「ここは……」

 箱の中の世界から帰ってきた俺たちが現れたのは、見知らぬ部屋だった。


「ノクスソークスじゃあ……ないね」

「ダイオークスでもないと思います」

 部屋の中には無数のパイプが張り巡らされており、それは壁と天井だけでなく、足元の金網の下もだった。


「この箱って、あの箱だよね?」

「そうだと思います」

 敢えてこの部屋の姿に近い物を挙げるなら……何か巨大な可動物のエンジンルームってところか。

 何故俺たちが先程まで居た箱と無数のパイプが繋げられているのかは分からないが。


「となると、ここは『アーピトキア』で良いのかな?」

「順当に考えればそうでしょうね」

 セブの言うとおり、この箱は『アーピトキア』で発見されたと言う事で、俺が中で『クラーレ』を倒した後は『アーピトキア』に戻され、研究が行われていたはずだ。

 となれば、普通に考えてここは『アーピトキア』である可能性が高いだろう。


「とりあえず外に出てみよう。何時までもここに居ても仕方がない」

「そうだな。そうするとしよう」

 シーザの提案で俺たちは部屋の中に用意された見るからに厳重そうな扉を開け、俺を先頭に外に出ようとする。


「おおっ、お主ら。帰って来たんじゃな」

「あ、納豆海月が居るのね」

「ドクター」

 扉を開けた先に居たのは?

 水色毛玉ことドクター……ナントウ=コンプレークスと数名の男性だ。

 うん、エイリアスがドクターを見て開口一番に納豆海月とか言っているが、ドクターが実はあの変態(チラリズム)の部下である事を考えれば、変態的に納豆を極めていて、その結果としてエイリアスの目に納豆を持っている姿で写っている事は驚くに値しない。

 今までの付き合いからして、あの変態に比べれば遥かにマトモである事は間違いないしな。


「さて、何から話したもんじゃろうな……ああ、とりあえずそこに座ると良いじゃろう。そこの部屋はあまり長時間外に繋げておきたい部屋ではないしの」

「分かりました」

 とりあえず、ドクターの求めに応じて俺たちは部屋の外に移動。

 扉も言われた通りに閉めておく。


「それでドクター。ここは何処なのですか?」

「ここは『トリコテセン』じゃ」

「『トリコテセン』?『アーピトキア』では無いのですか?」

 で、ナイチェルにドクターから情報を得て貰っている間に、俺は『トリコテセン』と言う名前であるこの場所を見回してみる。

 部屋の大きさは先程の部屋とさほど変わらない。

 出入り口は先程の部屋と、更に外へと繋がる扉が一つ。

 どちらの扉も金属製の厳重な扉だが、外に繋がる扉の方には窓が付けられており、外の様子が見られるようになっている。


「うむ。ここは浮瘴船『トリコテセン』のエンジンルームじゃ」

「浮瘴船!?」

 部屋の中に置かれているのは……待機用と思しき机と椅子だけで、隠れられるようなスペースは何処にもない。

 なるほど、ここは『トリコテセン』のエンジンルームを守るための警備室と言ったところなのか。


「それってもしかして……」

「お主らの考えておる通り、イヴ・リブラ博士の設計した船じゃ。ちなみに現在は試験航行中じゃ」

「へー……」

 で、『トリコテセン』は『神喰らい』が設計した浮瘴船と。

 うん、そうなるとだ。

 もしかしなくても……


「じゃああの箱が……」

「そう。『トリコテセン』のエンジンじゃ」

「何じゃと!?」

 やはりか。

 どうやら俺たちが先程まで居たあの箱は、修行場としての役割だけでなく、動力炉としての役割も持っていたらしい。

 まったく、あのサイズの箱に一体どれだけの機能を詰め込んでいるんだか……今更か。


『ナントウ!聞こえているか!?ナントウ!』

「ん?」

 と、ここで突然部屋の中に誰か男性の声が響き渡る。

 どうやら表に見えないだけで、きちんとスピーカー類も部屋の中に設置されているらしい。


『格納庫に突然所属不明の瘴巨人が待機状態で現れたぞ!どうなっている!?』

「あ」

「あー」

「ボソッ……(それってまさか……)」

「社長の仕業じゃな……」

 放送を聞いたトトリ、ロノヲニト、ミスリの顔色が変わり、ドクターが頭を痛そうにする。

 あー、トトリたちと言う事に、現れたのが瘴巨人だと言う事。

 これを合わせて考えれば……うん、箱の中の世界でトトリたちが造って使っていた瘴巨人を、変態がこちらの世界に飛ばしたのだろう。

 あの変態ならそれぐらいは出来てもおかしくない。


「あー、もしもし?儂じゃ。ナントウじゃ。今から確認に向かうから、誰も触れないように言っておいておくれ」

 ドクターが懐にしまった通信機に向かって何かを話すと、席から立ち上がる。


「全員付いて来るのじゃ。もしかしなくともお主らに関わりが有るものじゃろうしな」

「もしかしなくてもそうでーす」

「どう考えても『シクスティ』だよね」

「そうだろうな」

 そして、部屋に居る男性たちに二、三話しかけた後、俺たちはドクターに付いて行く形で部屋の外に出ていくのだった。

 さて、『トリコテセン』に『シクスティ』。

 一体どんな物だろうな?

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