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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第6章【シンなる央】
311/343

第311話「箱の中の世界-8」

 一方その頃。

 トトリたちはウスヤミが最低限の監視だけを続ける中で、自主的に訓練を積み、研究を進めていた。


「ふと思ったんだけどさ」

「なんですか?トトリ様」

 トトリたちの研究成果と、この空間の特性によって生み出された素材を組み合わせて作られた瘴巨人に乗ったトトリが、足元でその瘴巨人の整備をしているミスリに話しかける。


「ハル君、私、ロノヲニトはともかくとして、ミスリさんたちはどうやって『守護者』の元に行くんだろうね?」

「あー、そう言えば、その辺りの話については聞いてませんでしたね」

 ミスリは『テンテスツ』を基本として、幾つもの追加パーツが繋げられた様子の瘴巨人から手を離すと、フィーファとナイチェルの二人と話しているウスヤミの方に視線を向ける。


「そう言えば話してませんでしたね」

「ウスヤミ様」

 すると、ウスヤミの方もトトリたちの話を聞いていたのか、フィーファとナイチェルの二人との話を切り上げて、トトリたちの方に近づいてくる。


「折角なので、『守護者』の居場所を割りだした方法と一緒にお教えしておきましょう」

「お願いします」

 さて、その説明であるが、簡潔にまとめてしまえばこうなる。


 『守護者』の居場所の算出方法については……当時の『クラーレ』を観測していたデータが多次元間貿易会社コンプレックスに有るので、そこから計算したデータがまず一つ。

 加えて、当時の『クラーレ』の住人に『守護者』が現れた時の様子を正確に描いた絵が有るので、その絵から得られた情報によって計算したデータが一つ。

 で、この二つのデータを組み合わせることによって、『守護者』の正確な居場所を突き止めることに成功したと言う。


「それってもしかしてエイリアスさんの御先祖様の……」

「もしかしなくても、そうだと思います」

「ええ、その御方で間違いありません。普通の人間がアレを直視するだけでなく、記録してみせたというのは、驚く他ありませんでしたが」

「ボソッ……(ウスヤミ様が驚くって……)」

「へ、へー……」

 勿論、後者のデータについてはエイリアスの先祖であるメラルド・エタス・ヤクウィードの描いた絵から算出したものである。


「それで行く方法ですが……」

 では、その算出した場所にどうやって行くのか。

 此処ではその場所の詳細については敢えて省くが、今まで誰も踏み入っていない事から、『守護者』が居る場所は通常の手段で辿り着く事が出来ないのは明らかだった。

 そして、人間の技術発展を待っていたならば、数百年単位の時間があっても足りない事は間違いようのない事実だった。

 当然、その事は『神喰らい』も、ウスヤミたちも予測している事である。

 なので……


「現在、『クラーレ』では『神喰らい』の設計した船が造られています。なので、それを使います」

 対策も当然立てられていた。


「え!?」

「大丈夫なんですか!?」

 ただ、その対策はトトリとミスリの驚き様が表すように、普通の人間にとっては不安にしかならないような物だった。


「性能面では問題ありません」

「いや、そっちは心配してないんだけど……」

「イヴ・リブラ博士設計ですからね……」

 性能面を気にしての話ではない。

 と言うより、ダイオークスやトキシードと言った現在まで大きな問題も無く建造当時の姿を保っているような諸都市も設計した『神喰らい』の設計と言う時点で、性能面については二人も心配していない。


「ただ、そんな博士が造ったものを本当に作れるのかなぁ……と」

 問題の一つは技術面。

 どれだけ優れた設計であろうとも、それを実現できるだけの技術力が無ければ、意味なんて無いのである。


「そちらについては、『守護者』討伐に使うためにも、変た……チラリズムの部下であるナントウと言う者が、『クラーレ』の人間に技術供与をするそうです」

「ああなるほど」

 が、そちらについてはドクターことナントウ=コンプレークスが既に対応していると言うのが、ウスヤミの言葉だった。

 余談だが、この技術供与の対価として、ドクターの指名手配解除と、『守護者』討伐の為に建造した船を使う事を各都市の責任者に認めさせている。

 一見すると、都市側の方が一方的に損しているようにも見える交渉内容だが、コンプレックスから与えられた技術にはそれだけの価値があった。


「えと、安全面……あ、情報についての方です。それはどうなのかなぁ?と、思ったり」

 もう一つの問題は安全面。

 敵か味方か未だに確定しない『神喰らい』エブリラ=エクリプスの設計と言う事もあって、乗っている人間に対して何かしらの影響を与えるような何かや、情報を奪うような何かが仕込まれているのかでは無いかという懸念だった。


「そちらについては、事前にチラリズムが検査をして、危険な物が仕込まれていない事を確認したそうです」

「へー」

 だが、そちらについても既にチラリズム=コンプレークスが対応しているとの事だった。

 勿論、トトリたちの脳裏には一瞬ハルの特訓をしていたのではないかと言う疑問も浮かぶが、そこはこれまでに散々変態的ながらも超絶的な能力を見せつけられているので……


『まあ、あの変態ならそれぐらいは出来てもおかしくないか』


 で、済まされるだけだった。

 ある意味信頼されているチラリズム(変態)である。


「それでは、疑問は解消できましたか?」

「はい。ありがとうございました」

 そして、トトリたちは自分の修行に戻るのだった。

12/27誤字訂正

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