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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第5章【シンなる竜頭の上オウ】
298/343

第298話「M5-15」

「いつぁys、あlてょうgひtぢえs」

「!?」

 片目の蛇が動き出した。

 そう俺が認識した瞬間、俺の身体は反射的に【威風なる後】の圧力場を生じさせ、自分の身体を最高速で横に吹き飛ばしていた。


「なっ!?」

 続けて聞こえてきたのはロノヲニトの驚く声と、俺が先程まで居た場所近くの壁に堅い何かがぶつかる音。


「なんつう速さだ……」

 その音が生じた原因は?

 言うまでもない。

 片目の肉蛇が俺を食い殺そうと、跳びかかって来て、勢いそのままに壁へぶつかったのだ。

 だがしかし、だがしかしだ。


「どん7tれしstふぁて」

「まさか【シンなるオウ】一つで此処まで変わる物とはな……」

 今、片目の蛇がやったのは【シンなるオウ】によって無尽蔵のエネルギーを得た全身の筋肉を、ただ跳躍の為に使っただけだ。

 にも関わらず、あの速さ。

 もしも直接受けてしまっていたら……元々保有している他の生物を取り込む能力を考慮しなくても、純粋な破壊力でもって間違いなく俺の防御を貫通して、無視できないダメージを俺に与えてくるだろう。


「せめてもの救いは、『崩落猿』程の技術と知性をコイツが持っていない事か」

「へうぃllべあtらいとりふぃtれしsts」

 片目の蛇が体内に収納していた武器と骨を表皮にまで湧きあがらせ、棘のように全身へ生やす。

 なるほど。

 攻撃が当たる範囲を大きくすることによって、俺へと攻撃を当てるつもりか。

 だがしかしだ。


「べcるしぇd!」

「アイツ程の考えを持っているならこんな手は打たないもんな!」

 片目の蛇が再び俺に向かって突っ込んでくる。

 が、その速度は明らかに先程の突進よりも落ちており、【竜頭なる上】の力で十分捉えられる範囲になっていた。

 それこそ、片目の蛇が微妙に螺旋状に回転しながら突っ込んでくる姿も、武器と骨の棘の間に隠れた無数の口が周囲に向けて肉片を吐き出す姿も捉えられる程に。


「ふんっ!」

 そう、見えているのなら、何の問題も無い。

 この程度なら、どれだけ飛んできても、【威風なる後】で全て叩き落せる。


「てぇふぉおぉっぽしんgうぉせgらんdもてぇr」

「さて、反撃……」

 そして、片目の蛇が再び突進の体勢を整える前に、反撃に転じる事も出来る。

 狙いは当然……


「だ!」

 片目の蛇の頭にある赤い目。

 勿論、赤い目を直接狙っても回避されるのは目に見えているので、まずは首を切り落とす事で運動能力を削いでからであるが。


「くgyrsr!?」

「ちっ!」

 が、片目の蛇は圧力の発生を直前で捉え、慌てた様子で身を捩り、首とその下に有った胴体の半ばを切断されつつも俺の攻撃を避ける。

 くそっ、今の片目の蛇には【シンなるオウ】が有るのだ。

 となれば、最低でも完全に切り離して、【シンなるオウ】の有効範囲外に出る肉片が生じるような攻撃でなければ意味が無い。

 直ぐに再生されるだけだ。


「てぇぺrそなっこrぢんgとあまsてr7しんてんちおn」

「ロノヲニト」

「何だ?」

 しかしそう考えると、この部屋は拙いかもしれないな。

 肉塊形態なら俺が自由に飛び回れるだけのスペースがあったこの部屋は俺にとって有効活用できたが、蛇形態になった今では、奴の方がこのスペースを有効活用することが出来てしまっている。


「いんてぇわyぇftべひんdとよう、えヴぇんfれえいs」

「俺の頼みごとについてはどうなっている?」

「だいたい終わっている。後は外と繋ぐだけだ」

 そうでなくとも、瘴気が無いこの空間では俺の能力は大きく制限される。

 その状態で、【シンなるオウ】を含んだ片目の蛇……それも恐らくは二度と分断される事の無いように殆ど同化と言っていい状態にまで赤い目とUSBメモリを接近させているであろう片目の蛇を相手にすると言うのは……負ける気はないが、勝つのは厳しいだろう。


「いちそんlyべいんげあてんbyめあんっぢさっぺありんg」

「分かった。なら出口は薄い壁にしておいてくれ」

「了解した。ついでに通路のマップを送っておく。ノクスソークスの構造を維持しようと思ったら、少々複雑な形になってしまったからな」

 となればだ。

 俺が取るべき手段はただ一つと言っていいだろう。


「のw……」

「この状況ならむしろ好都合だけどな」

 俺はゴーグルに送られてきた三次元的なマップに急いで目を通す。


「そうか。ハルハノイ、一応言っておくぞ」

「なんだ?」

 通路は複雑に曲がりくねっており、脇道など存在しないが、それでも迷路のようだと感じるほどの複雑さだった。


「いてゃsちllもれ……」

「アレからはエブリラ様の力は感じるが、エブリラ様の意思は感じない。アレはもっと禍々しい何かが仕込んだものだ」

「だろうな。でなければ、さっきの俺を殺す気としか思えなかった突進の説明が付かない」

 だが、俺の全能力を有効活用すれば、何とか最高速を維持したまま抜けることも可能だろう。


「それじゃあ……」

 俺は通路の入り口となる壁に手を当てる。

 そこは奇しくも、灰汁シュウがこの部屋から逃げ出そうとする際に用いようとした場所だった。


「あんだlてょうgひtぢえしつぁys!」

「逃げるぞ!」

 そして、片目の蛇が突撃を仕掛けてくるのと同時に、俺は壁を突き破ってロノヲニトが作り出した通路の中へと飛び込んだ。

12/14誤字訂正

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