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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第5章【シンなる竜頭の上オウ】
297/343

第297話「M5-14」

「ぎょいvfst!」

「くfzsfry!」

 二つの肉片が、まるでゴムまりのように部屋の中を跳ねまわり始める。

 その軌道は肉片表面の手足に、棘のように飛び出している武器の影響もあって、非常に複雑で予測がしづらいものになっている。


「ktwrtyy!!」

「来るか」

 青い目の肉片が俺に向かって突撃し、その攻撃を避けた所に赤い目の肉片が突撃を仕掛けてくる。

 が、何の問題も無い。

 そのままさらに回避すればいいだけの話である。


「くtftじゅgy!」

「……」

 そう俺は判断して赤い目の肉片の攻撃も回避。

 で、こいつらは連携が取れているので、当然ここで青い目の肉片が突撃を仕掛けてくるわけだが……。


「kgfty……くy!?」

「見えてるっての」

 【竜頭なる上】によって視野が極端に広くなっている今、背後からの不意討ち程度は何と言う事はないし、激しく動き回る肉片に当たるように【威風なる後】の圧力場を発生させることも至極簡単であるし、圧力場を集中させて撥ね飛ばす事ぐらいは訳ない。

 まあ、こいつ等も圧力場の発生を感知できるようなので、圧力を発生させようと思ってから、実際に発生するまでの間に存在する僅かなタイムラグの内に、核である目玉を別の場所に移動させられてしまうのだが。


「っと、狙いはそっちか」

 で、当然の話ではあるが、俺がこんな事を出来るのは『神喰らい』エブリラ=エクリプスの罠であるこいつらが知らないはずがない。

 なので、他に狙いがあるのではないかと思っていたのだが……。


「だがまあ、また一つお前らの情報が見えてきたな」

「くyてdyg……」

 うん、気が付けば【シンなるオウ】を持っていた肉片が消えていて、その場所には赤い目の肉片が居る。

 どうやら、赤い目の肉片が【シンなるオウ】を取り込んだらしい。

 ただ、これで赤い目と青い目の肉片は明確な意思は持っていても、エネルギー関係については他の肉片と大して変わらないと言う事は分かったな。

 でなければ、青い目の肉片を囮にしてでも、赤い目の肉片が【シンなるオウ】を取りに行くはずがない。


「てことはだ」

 俺は【苛烈なる右】の力場でもって空気中の二酸化炭素を片っ端から酸素に変えていく。


「お前は焼けるな」

 そして、【威風なる後】の圧力場を用いて、【苛烈なる右】の爪の上に火を発生させ、その火を青い目の肉片に向けて伸ばす。


「くttyfげ!?」

「あdつうtgr!?」

 青い目の肉片が炎に包まれると同時に叫び声を上げ、それに合わせるように赤い目の肉片も悲鳴を上げる。


「さあ、燃え尽きろ!」

 俺は分解の速度を上げ、更に大量の酸素と火勢を増すための媒体を【苛烈なる右】で作り出し、【威風なる後】でそれを送り込む。


「しょいrfてf!?」

 炎から逃れるように青い目の肉片が部屋の中を跳ねまわり始めるが、俺の付けた火が消えることはない。

 当然だ。

 燃料が常に作り出され、供給され続けているのだから。

 そして、幾ら跳ね回られたところで、燃え盛る供給線が途切れることはない。

 なにせ実体のない圧力による供給線なのだから。

 それどころか、青い目の肉片が燃えれば燃えるほど、俺が燃料に出来る物も増え、その火勢は増していく。


「きょyれw!」

「させるか!」

 と、ここで赤い目の肉片が青い目の肉片に向かって跳びかかる。

 が、俺は二つの肉片がぶつかる前に、【堅牢なる左】の斥力場でもって青い目の肉片の方を殴り飛ばし、その融合を阻止する。


「危ない危ないっと」

 もし融合されてしまえば?

 先程の粉塵爆発で【シンなるオウ】を含んだ肉片は表皮が焦げただけであり、その表皮もすぐに新鮮な物に再生していた。

 それと同じ能力を今の赤い目の肉片も有しているのは当然だろう。

 となれば、二つの肉片が融合してしまえば、今青い目の肉片に着いている火も意味を失うだろう。

 うん、本当に危なかった。


「きtでぃういbてs……」

 それからも、赤い目の肉片は青い目の肉片に向けて跳びかかろうとするが、俺はそれを悉く阻止してやる。

 すると、どれほどの時間が経っただろうか?

 やがて青い目の肉片はその動きを止め、燃え盛っていた炎もその勢いが自然に衰えていく。


「燃え尽きたか」

「……」

 どうやら、青い目の肉片を芯まで完全に焼き尽くしたらしい。

 その身に宿していた魔力も完全に霧散してしまっている。


「さて……」

 で、念のために【威風なる後】で黒こげになった肉片を叩き潰し、本当に燃え尽きたのかを確認しておく。

 うん、完全に燃え尽きているな。

 これなら大丈夫だろう。


「後はお前だけだな」

 仕留めた事を確認した所で、俺は残った赤い目の肉片に目を向ける。


「……」

 赤い目の肉片はどうしている?

 黙っている。

 が、呆然としていると言うよりかは、喋るためのエネルギーすら別の何かの為に溜め込んでいるかのような黙り方だった。

 これは……来るな。


「いあめgg」

 赤い目の肉片の表面がざわめき立つ。

 そして、それと同時に表皮部分に出ていた目や手足、武器の類が、全て肉片の中に収納されていき、巨大な肉の塊……いや、肉の卵とでも言うべき姿になる。


「あぺrそnうぃてゃにんふぃにてぽっしびぃty」

「コイツは……」

 やがて、肉の卵が割れて中から出てきたのは?


「蛇?」

「てょせうぉえxpっれせさりんgうぃthてぇぼdy」

 無数の手足と内臓、骨、髪、武器で作られた、全身に顔を持つおぞましき姿をした片目の蛇だった。

12/13誤字訂正

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