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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第5章【シンなる竜頭の上オウ】
295/343

第295話「M5-12」

「ふんっ!」

「gyhfgぁ……」

 俺に向かって跳びかかってくる肉塊に向けて、俺は【威風なる後】の圧力場を発生させる。

 ただし、その形は線でも点でもなく、面であり、更に言えば圧力場の面を境界線として、対象を引き裂くように発生させる。

 加えて、その範囲も部屋を二分するように、床から天井まで届くように配置する。


「「ggjhyvhじおhgj!?」」

 すると当然、肉塊は圧力場によって二つの塊に引き裂かれ、俺を間に挟むように床に落ち、辺りに肉片と血飛沫を撒き散らす。

 ただ、今回は【威風なる後】の圧力場によって、それぞれの身体から引き剥がされた肉片も血も接触していない。

 さて、これでどうなる?

 もしも、核と物理的な繋がりを持っていなければ、動けないと言うのであれば、これでどちらか片方は動かなくなるわけだが……


「ちっ、そんなに甘くはないか」

「ぎぃくおbんgyt!!」

「kjぐfちぃうhg!!」

 結果は、両方の肉塊がそれぞれに別の叫び声を発しながら、俺に向かって跳びかかり、俺が逃げたために空中で衝突した二つの肉塊が再び融合すると言う物だった。

 どうやら、最低でもこの肉塊には二つ以上核になるような部位が有るらしい。


「dyttるうb……」

「なら、これならどうだ?」

 俺は肉塊が周囲の肉片を集め終えて、再び跳ぼうとする前に【威風なる後】の圧力場を再展開する。


「「「ぎぃうghbdryたrtx!?」」」

 その形は簡単に言ってしまえば網の目。

 縦横奥行の三次元方向に、先程と同じように圧力場の面を発生させ、肉塊を箱の形に強制的に分割。

 分割した肉体は箱の外に血飛沫などを漏らさせないように気を付けつつ、部屋中にばら撒く。


「「「くtysふぁくrrw!!」」」

 部屋中にバラバラに置かれた64個の肉片から、身の毛もよだつような叫び声が上がる。

 だが、そうやって無数の叫び声が上がり、普通の人間ならそれだけで気が触れそうな状況の中で、今までとは明らかに違う動きを肉片たちはし始める。


「へぇ……」

「「「くydfgsきうft!!」」」

「「「hげぢゅgて!!」」」

「「「きゆええtcぎゅd!!」」」

 肉片たちはそれぞれが個別に蠢き、動き始める。

 あるものはむやみやたらに跳び回り、またあるものは全身から血飛沫を周囲に撒き散らす。

 明らかに他の肉片に狙いを付けて飛びかかるものも居れば、そのばでただ震えるだけのものも居る。

 叫び声を上げるものも居るが、黙々と周囲の状況を無数の目で観察する肉片もいる。

 やがて、幾つかの小さな肉片は僅かに震える事すらやめて、生命と魔力を周囲に散らしだす。


「ちょっとは性質が読めてきたな」

 これだけの情報が有れば、流石の俺でも幾らかの予測は付けられる。

 まず、肉片たちの能力は身体に残っているパーツに大きく影響される。

 具体的に言えば、手足が無いものはその場から動くことが出来ず、目などの感覚器官が無いものは狙いを定めて動く事は出来ない。

 そして、心臓や肺と言った循環器系を有さない肉片は身体に残された酸素が尽きるまでの間しか動くことが出来ず、それが尽きればただの肉に成り下がる。

 これが基本のルールだ。


「ぎぃうgっげrs!」

「ぐrsdfつyty!」

「っと」

 その中で例外が二種類ある。

 俺は他の肉片たちよりも明らかに素早い動きで飛びかかってきた、二つの肉片を避けながら、その例外へと目を向ける。


「させるかっての」

「ぎゅいbhfg!?」

 例外の一つは【シンなるオウ】を含んでいる肉片だ。

 こいつは、【シンなるオウ】からエネルギーを供給されているので、循環器系が無くとも動き続けられるし、肉の糸や血の線などで他の肉片に繋がっていれば、そいつにもエネルギーを供給することが出来る。

 故にコイツの周囲には【威風なる後】の圧力場を常時展開、他の肉片からは隔離しておく。


「ぎゅおいえsdfy!!」

「くgftyrvrt!!」

「またか」

 と、再び二つの肉片が、先程よりも巨大化した状態で飛びかかってくる。

 コイツらが例外その二だ。


「まったく、執拗極まりないな」

 コイツらの特徴は目だ。

 本能と狂気しか存在していないような目を他の目がしている中で、この二つの肉片に存在している二つの目だけは理性と明確な意思を有している。


「赤と青……か」

 その目の色は鮮血のような赤と、深い深い海のような青。

 『神喰らい』エブリラ=エクリプスと同じ色の目。

 まあまず間違いなく、そう言う事だろうな。


「本当に灰汁が無謀な真似をしてくれて助かったな」

「「きぃdrふぇfじゅyt!!」」

 二つの肉片がフェイントを織り交ぜ、明らかに連携を取りつつ飛びかかってくる。

 俺はそれを避けると、いっそ一つにしてしまった方が楽だと判断して【威風なる後】で二つの肉塊を衝突させようとするが、それは見事に回避される。

 ああうん、確信した。


「おかげで、罠にかからずに済んだ」

「「hふぇふhfrsxz……」」

 コイツらは【シンなるオウ】のデータの中に仕掛けられていた罠だ。

 何も知らずに【シンなるオウ】を読み込んだ俺を内部から浸食し、俺の意思を食って完全な駒とするための『神喰らい』の悪意に満ちた罠だ。

 だから、今も俺に対して執拗に攻撃を仕掛け、俺を喰らおうとしているのだ。


「さて、そろそろ本格的に削らせてもらうぞ」

 いずれにしても、罠は不発に終わった。

 コイツらを始末する算段もある程度着いた。

 ならば、後は実行するだけである。


「【威風なる後】【苛烈なる右】!」

 そして俺は二つの能力を起動させた。

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