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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第5章【シンなる竜頭の上オウ】
289/343

第289話「M5-6」

「ハッキングの方はどうだ?」

「今のところは何も」

 俺は【威風なる後】を使って、【竜頭なる上】が失われた事によって混乱しているノクスソークスの中を飛んでいく。

 目標は言うまでもない。

 灰汁シュウだ。


「しかし複雑な構造だ」

 さて、ノクスソークスの構造だが、イヴ・リブラ博士もイクス・リープスも関わっていないので、当然そのどちらともまるで似ていない。


「複雑と言うより、無計画に継ぎ足したと言った方が正しいんだろうけどな」

 基本的な形状は円錐に近い。

 そして、その内部はダイオークスのように複数の塔に分かれているのではなく、元の世界のビルのように壁で細かく区切られ、大小様々な通路が網の目のように張り巡らされている。

 その為、ボウツ・リヌス・トキシードのエイリアスが住んでいた場所のように、都市全体が半ば迷路のようになっていた。

 ぶっちゃけ、かなり移動が面倒です。


「無計画……まあ、ニルゲ(人間)らしいと言えばらしいか」

 で、どうしてこのような構造をしているのか。

 聞くところに依れば、この三百年の間に円錐の外壁へと次々に都市運営に必要な施設を作っていった結果がこれらしい。

 なので、基本的な構造は円錐と言ったが、今では針山と言った方が正しいような外観にノクスソークスはなってしまっているし、そうやって無計画に継ぎ足していった結果として、上の目が及ばない領域と言うのも少なからず出来てしまっているようだった。


「と、ここは問題ないな」

 俺は【竜頭なる上】で壁の中を見透かし、構造的に破壊しても問題ない場所を見つけると、【苛烈なる右】で壁を破壊。

 ショートカットを行う。

 うん、これで幾らかは距離が詰まったな。


「それにしても、一直線に行ってはいけないのか?」

「それをしたいのはやまやまなんだが、そうもいかないだろ」

 と、ロノヲニトから疑問の声が上がる。

 うん、正直に言えば、俺と奴の間にある物全てを吹き飛ばして、一直線に移動してしまいたくはある。


「殺せぇ!」

「娘の仇だ!」

「俺たちの怨みを思い知れ!!」

「舐めるなぁ!ちか……らびゃ!?」

 俺は移動に使っていない分の【威風なる後】で、住民らしき人たちに向けて銃を構えていたノクスソークスの兵士を吹き飛ばす。

 そう、これが一気に迫るわけにはいかない理由の一つだ。

 【竜頭なる上】が俺のものになった関係で、今ノクスソークスの中では、虐げられていた者たち……一般住民と無理やり協力させられていた者たちが、虐げていた者たち……自分の意思で協力していた者たちに対する反撃を開始している。

 そんな状況で俺が全てを無視して吹き飛ばしていったら?

 間違いなく、少なくない人間を巻き込むだろう。

 それは少々よろしくない。


「ああいうのも居る事だしな」

「それに、都市全体の強度の問題か」

「それもある」

 加えて、最初の突撃の際に俺はかなりのダメージをノクスソークス全体に与えている。

 それこそ、俺が無節操にこれ以上の破壊を行えば、ノクスソークス全体が致命的なダメージを受けかねない程のダメージをだ。

 もしここでノクスソークスが崩れてしまえば?

 最悪のケースだが、外の瘴気が流れ込んできて、ノクスソークスの住民の大半が死んだ挙句、奴は行方不明と言うのも十分にあり得る。

 もしそうなれば……また別の都市に奴が紛れ込む可能性はゼロではないだろう。


「足止めは?」

「勿論している。が、成果は芳しくないな」

 勿論、奴を追いかけるにあたって、【威風なる後】の圧力場で足止めとしての攻撃は行っている。

 が、どういう理屈なのかは分からないが、奴はそれを巧みに避け、最初の頃と大して変わらない速さで何処かに向かって逃げ続けている。


「住民たちの足止めは……期待できないか」

「するべきじゃないだろ。相性が悪すぎる」

 当然、圧政の主犯格の一人と言ってもいい奴に対して、住民たちは見つけ次第攻撃を仕掛けようとしている。

 が、こちらは奴の特異体質によるものだろうが、攻撃を仕掛けようとした人間はその瞬間に茫然自失の状態となり、足止めすら出来ずにいる。


「しかし、あいつは何処に向かっているんだ?」

「外ではないのか?」

「いや、外って感じじゃあないな」

 と、俺は奴が向かっている先が気になったので、ロノヲニトに奴の位置と進行方向を伝えると同時に、その先に何が有るのかを【竜頭なる上】で探ってみる。

 まず外に繋がる通路では無い。

 奴がいる場所の近くにそう言う緊急用の通路のような物は見えないし、外壁や空港まではかなりの距離があるからだ。

 かと言って、発電施設や大きな病院のように、交渉に使えるような施設へと向かっているわけでもなさそうだった。


「む、ハルハノイ。奴の向かっている先だが、どうにも今我が探っているネットワークから隔絶された場所のようだ。何処を探っても繋がりが見つからない」

「何?」

 外部との繋がりが無い場所だと?

 なら、直接行って確かめてみるしかないか。

 俺の【竜頭なる上】でもなんかよく分からない施設になっているようだしな。


「よっと。此処がそうか」

 そうして、何枚目かの隔壁を破ったところで、俺の視界に件の施設の入り口……厳重な扉でもって封鎖された通路が目に入り、その施設の中に入ったはずの奴の気配が感知できなくなった。

12/05誤字訂正

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