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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第5章【シンなる竜頭の上オウ】
287/343

第287話「M5-4」

「それにしてもだ」

 俺はもぎ取った男の手の中から、二本のUSBメモリを抜き取ると、防護服に同化しているロノヲニトにそれを渡す。


「まさか成層圏で三時間ほど待機させられるとは思わなかった」

「確かに退屈で仕方が無かったな」

 そして、USBメモリを受け取ったロノヲニトは即座にそれの解析を始める。


「ま、その分の成果は有ったな」

 さて、ここらで俺が何をやったのかと、その結果について確認しておこう。

 まず俺がやった事は、ここノクスソークスの上空10km程の所で誰にも気づかれないように待機して、ダイオークス中央塔塔長の指示に応じる形で突撃しただけだ。

 まあ、事前に知らされていた場所を正確に狙うように気を付けたし、各能力をどのように組み合わせて発動するかもかなり練ったが、単純に言ってしまえばただ真っ直ぐに落ちてきただけだ。


「確かに。この場に居た敵についてはほぼ壊滅したな」

 だが、上空10kmから加速だけを続けて落ちてきたのだ。

 その速度は当然のように音速を超え、【苛烈なる右】の能力もあってノクスソークス全体を覆う屋根程度は紙のように引き裂かれた。

 そして、音速を超えた移動速度の為に、俺が通過した後には衝撃波が発生し……もしかしなくても部屋の中は台風か何かが過ぎ去った後のように荒れ果て、何人かの人間は赤いボロ布のようになって転がっている。

 生き残っているのは……例の仮面を身に着けた異世界人がほぼ無傷で……ああ、USBメモリを持っていた奴もゼロ距離で衝撃波を喰らったはずなのに、虫の息とは言え生きているな。

 随分と丈夫な事で。


『敵襲!敵襲!』

「くそっ」

 警報音の様なものが部屋の内外から聞こえ始めてくる。

 と同時に、こちらに向かって重い何かを持った多数の人間が向かってくる音も聞こえてくる。

 そして、それに合わせるように生き残った異世界人は吹き飛んだ男を放置し、部屋の外に向かって一人で逃げ出し始める。


「ハルハノイ。どうやら先程回収したUSBメモリだが、片方はダミーだったようだ。データが入っていた気配も無い」

「ふうん、なら、後で適当に重要そうなパソコンにハッキングをして貰っていいか?本当に二本回収してるなら、コピー辺りが入ってるだろ」

「分かった」

 追ってもいい。

 が、後回しでも問題ないな。

 今まででの情報や先程の会談を聞く限りでは、連中が俺の能力を利用していた事はほぼ間違いない。

 となれば、当然これから俺が目覚める能力にしても、連中の使っていた能力に近しいものになるはず。

 なら、最低でもノクスソークスの中程度は全て把握できるようになるはずだ。


「で、もう一つのUSBメモリの中身は?」

「そちらには『Halhanoy6.txt』と言うのが入っていた。我の方で軽く調べてみたが、どうやらオリジナルデータのようだ」

「分かった。なら早速流してくれ」

「了解した」

『プログラム・ハルハノイO(オペレーション)S(システム)のアップデート開始を確認』

「撃てぇ!!」

 風防兼用のゴーグルにロノヲニトが『Halhanoy6.txt』の中身を高速で流し始める。

 と同時に、部屋の外から現れたノクスソークスの兵と思しき男たちがアサルトライフルのような物の引き金を引くが……。


「ギャア!?」

「どうした!?」

「馬鹿な……」

「無傷だと……」

『現在の状況と使用者のオーダーを確認』

 うん、こちとら対人用スナイパーライフルでも、思いっきり殴った程度のダメージしか俺に与えられないような圧力場を全方位に向けて展開しているのだ。

 アサルトライフル程度なら、良くてその場で落下、場合によっては撃った当人に向けて弾丸のお返しになるに決まっている。

 加えて……


『シャットダウンを行わず、アップデートが終わった部分から順次展開を開始します』

「うぐっ……」

「がっ……」

「視界が……」

「どうした!?」

 奴らは俺の力を今まで利用していた。

 俺が手にしてしまえば消えてしまうような力をだ。

 その詳細はまだ分からないが、まあ突然今まで明瞭だった視界がぼやけたり、良く聞こえていた耳が聞こえなくなったりすれば、体調不良の一つや二つ程度は起こして当然だろう。


「だいたい25%読了と言ったところだな」

「へぇ、四分の一でこれだけ影響が出るのか」

「くそっ!まさか!?」

 俺はワザとらしい笑みを作ると、男たちにその顔を向ける。

 それだけで、男たちの何人かは今自分たちに起きている異常の原因を悟ったのか、顔を青ざめさせている。


「50%読了」

「さてお前ら。状況は分かっているよな」

『プログラム【竜頭なる(ドラゴニック)(アッパー)】Ver.Lの展開を開始』

「「「…………」」」

 俺の頭を覆うように、見えない防護壁が展開されていく。


「75%読了」

「俺の力を利用して、散々好き勝手にやって来たんだ。ここで退けば、待っているのは数に物を言わせた民衆の暴力だけだぞ」

「「「う……」」」

 やがて、頭全体を覆ったところで、続けて側頭部から一対の山羊の角の様なものが、その根元の辺りには宙に浮く形で赤紫色の水晶玉が二対、低出力版であるにも関わらず、常人の目にも見える形で生じる。


「100%だ。ハルハノイ」

『【竜頭なる上】の展開を完了。オーダーに従い、現時点では記憶の処理は行いません』

「さあ来いよ!取り返せるものなら取り返してみろ!!」

「「「うおおおぉぉぉ!!」」」

 そして、俺の新たなる力……【竜頭なる上】が発動すると同時に。ノクスソークスの兵たちは再び俺に襲い掛かってきた。

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