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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第5章【シンなる竜頭の上オウ】
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第278話「狙撃犯-7」

「んん……朝……いや、昼か……」

 『崩落猿討伐作戦』の翌々日。

 俺は自分の部屋で目を覚ますと、まずは時計を見る。

 時刻は午前十時。

 うん、四時間ぐらいは寝れたか。


「本当に丸一日だもんなぁ……」

 で、何故午前十時で四時間は眠れたかなんて言うかと言えば、昨日の朝六時から今日の朝六時まで、文字通りに一日中(24時間)エイリアスに付き合わされたのである。

 実際休憩は、トイレと食事の一時ぐらいだったかな。

 俺もエイリアスも。

 なお、監視役のフィーファは途中で寝てしまったと言うか、気絶してた。


「で、この絵はどうするかな……」

 俺は隣で寝ているフィーファとエイリアスの二人を起こさないように気を付けつつベッドから降りると、昨日エイリアスが描いた五枚の絵を見る。


「うーむ……」

 五枚の絵を見た俺は思わず唸る。


 一枚目はトキシードでエイリアスが描いた俺のスケッチを清書したもので、『クラーレ』との戦いで見せた俺の姿そのままである。

 が、その鱗の質感や威圧感は流石エイリアスといったレベルのものである。

 これはまあ、表に出しても問題ないな。


 二枚目は一枚目のアレンジとでも言えばいいのか、人間の身体に俺の能力によって生える翼や鱗を付け、全体の形を整えた絵だ。

 そうだな、敢えて言えば竜人形態とでも言えばいいかもしれない。

 これもまあ、表に出して良いだろう。

 と言うか、燃費の問題さえ片づけることが出来れば、この姿を実際に取ることは可能だろうし、『崩落猿』サイズの相手なら一枚目の絵の状態よりも有用だろう。


 で、三枚目だが……文字通り、素の俺の姿です。

 フルヌードです。

 誰が見て喜ぶんだこんな物。

 まあ、エイリアスの画家としての腕前のおかげか、何処かの美術館に飾られていても違和感が無いような出来にはなっている。

 が、それでも敢えてもう一度言おう。

 誰が見て喜ぶんだこんな物。


「まあでもこの絵に比べれば……な」

 ただまあ、それでも四枚目と五枚目に比べればマシか。

 この二枚は絶対に世間には出せない。

 十八禁的な意味で。

 と言うのも、エイリアスの画力と『真眼』が合わさった結果として、今目の前で事が行われているような臨場感を持ってしまっており、これを表に出すのは俺とエイリアスの二人はともかく、フィーファにとっては著しく不名誉な物になる可能性もあるぐらいだ。

 フィーファについては耐え切れなくなった俺が半ば言葉巧みに騙したようなもんだしなー。

 と言うわけで、二人が起きる前にこの絵は封印しておくとしよう。

 具体的には布と紐でぐるぐる巻きにしておきます。


「んん……もう朝なのね?」

「おう起きたか」

 と、絵の封印が完了した所でエイリアスが目を覚まし、目をこすりながら俺の方を向く。

 それにしても……。


「しかし昨日あれだけやったのに、よくたった四時間で起きれるな」

「それは黒ドラゴンもなのね」

「俺は半分人間じゃないんだが……」

 エイリアスは何も付けてない胸を張ってそう言うが、本当にとんでもないと思う。

 誇れる事ではないかもしれないが、俺の半分はイヴ・リブラ博士製の存在であり、長時間の激しい戦いにも耐えられるように相当タフに作られている。

 体力面で見ても、装甲面で見てもだ。

 そんな俺にエイリアスは一時的にとは言え、体力面で付いて来れる。

 これは本当に驚くべき事……と言うか、エイリアスが本当に人間なのか怪しくなってくるような話である。

 半分人間じゃない俺が言うなと言われそうだが。


「フィーファは……まだ寝てるのね」

「疲れ切ってるんだろ」

 とりあえず、昨日一日でどうしてエイリアスの事を俺が若干苦手なのか、その理由も分かった気がする。

 と言うのも、身体能力や精神面と言った部分での相性は問題ないか、むしろ良いぐらいなのだが、主導権に限っては俺もエイリアスも自分が主導権を握りたがるため、そこの面で相性が良くないらしい。

 俺の方が押されると言う意味で。


「それで、これからどうするのね?」

「そうだな……今日はまだ休みだけど……絵についてはナイチェルたちに相談することになるな。ウチの中に飾るスペースは無い……と言うか、二枚ほど飾る事も憚れる絵があるしな」

 そう言って俺は先程封印した二枚の絵をチラ見する。

 するとエイリアスにも布と紐でグルグル巻きにされたソレの中身を察したらしい。


「むー、二枚とも自信作だったのに……」

 口を尖らせながら、不満げそうにそう言う。


「いやまあ、自信作なのは理解できるし、実際出来が良かったのは認めるけど、アレは表に出せないだろう」

「でも自信作なのね。一番ハルとフィーファの本性をよく描けていたのね」

「……。その点については否定しない」

 確かに否定は出来ない。

 否定はできないが、それでも飾るわけにはいかない。

 むしろ否定できないからこそ、飾れない。

 と言うわけでこの話題については無理やりにでも切り上げさせてもらう。


「ほら、もう昼なんだし、とりあえず服を着ろ。もしくは着替えを準備して、風呂に入っておけ」

「むう、分かったのね」

 まあ、この後も風呂関係で少々あったのだが、それは脇に置いておくとしよう。

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