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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第5章【シンなる竜頭の上オウ】
277/343

第277話「???-9」

「救難信号を発したDe-Gorの回収を完了。De-Gorの状態を確認。左腕部消失のほか、細かい傷も複数確認。修理作業を開始する」

 『クラーレ』の何処か。

 周囲一帯を深いと言う形容詞では表せない程に濃く深い闇に包まれたその場所に、『守護者』は以前と全く変わらぬ姿のまま、黄金色の球体を抱えた状態で立って居た。


「De-Gorの戦闘データを回収。解析開始。左腕部の切断面に付着している敵対者の魔力残滓を確認。解析開始……これは」

 『守護者』の眉間に微かだが、確かに皺が寄る。


「どういう事だ?切断面に付着していた魔力残滓から以前検知した神気パターンを確認。一致率は100%。同一存在が発したものと断定。また、De-Gorの戦闘データからも、同様の神気パターン……De-Fleを破壊した存在の神気パターンを確認」

 『守護者』の黒い目に金色の虹彩が激しく動き回り、『守護者』にしか見えていない何か……恐らくは解析結果のデータを素早く読み込んでいく。

 そしてそれと同時に、『守護者』の抱えている黄金色の球体が激しく乱回転を始め、周囲を照らし出していく。


「この神気パターンの保有者は、『神喰らい』エブリラ=エクリプスの意を受けたものとして、敵性存在と認識。以前握り潰したはず。なのに何故生きている?」

「アンノウン。履歴を検索したが、この神気パターンの保有者は間違いなく握り潰している」

「調査が必要?」

「ネガティブ。当時の状況を現在調査する事は不可能」

「ポジティブ。敵性存在が最低でも一体存在する事は確定。よって、敵性存在を調査する必要性はある」

「何故生きている?」

「アンノウン。以前握り潰した存在が囮であった可能性など、複数の可能性が挙げられるが、詳細は不明。ただ、De-Gorの戦闘データから、敵性存在自身が身代わりや分体生成の能力を有するとは考えにくい」

「……」

 『守護者』の表情が当初の物に戻り、黄金色の球体も回転を止める。


「今後の作戦を検討する」

「ポジティブ」

「我が敵性存在が現れた場所に赴き、攻撃を仕掛ける」

「ネガティブ。我は『守護者』。この場から離れるわけにはいかない。『神喰らい』の裏に『狂悪者』が居る事が判明した現状では尚更である」

「『箱舟』をこの場から移動する」

「ネガティブ。『箱舟』の移動は不測の事態を引き起こす確率を著しく上昇させる。また、我が居る場所については、敵性存在は勿論の事、『神喰らい』も知らないはず。よって『箱舟』を移動する事によるメリットはデメリットを大きく下回る」

「『狂正者』たちに援軍を要請する」

「ネガティブ。既に『狂正者』たちには情報を伝えている。また、迂闊に『無意識』の領域に接続すれば、『狂悪者』が『無意識』の領域を利用してこちらの情報を盗み取る可能性が存在する」

「他の神に助力を求める」

「ネガティブ。この場に我以外の存在を招く事は、『箱舟』に対する影響が予測できない。それ以前として、他の神など信用ならない。信用してはならない」

 『守護者』は一人で、複数人居るような呟きを続ける。

 だが、何かが定まったのか、『守護者』は一度その動きを止める。


「我の役割は?」

「『箱舟』の封印を守り続ける事」

「その為の基本方針は?」

「誰もこの場が存在する事を知らないようにする」

 そして『守護者』の口から発せられた言葉は、ある意味では究極の守りとは何かを示すものだった。

 そう。

 知らなければ、そこに近づこうとするのは蛮勇の者だけ。

 知らなければ、どうすればいいのかも分からない。

 知らなければ、何も干渉する事は出来ない。

 知らないものに対しては誰も何もする事は出来ず、しようとすらしない。

 そうすれば、あと問題となるのは幾つかの不慮の事態だけとなる。


「方針達成のための理想は?」

 ただそれは現実的に可能なレベルの話であって、理想ではない。


「現在地上に存在している全ての存在を消し去る事」

「それは可能か?」

「ネガティブ。我の魔力の中……瘴気結界では人間は生存出来ないようにしたが、未だ何処かに隠れ家を保有し、我のゴーレムに対して抵抗を続けている。これを一度に殲滅する事は、行使する力の量からして、『箱舟』に対して影響を与えることになる」

「瘴気結界に開いた穴を感知する事は可能?」

「ポジティブ。ただし、感知できる穴のサイズと時間に限界有り。開いた穴の時間が極端に短かったり、開いた穴の範囲が極端に狭い場合には感知できない」

「感知した場合の攻撃方法は?」

「感知したエリアを覆うように握りつぶす事が最も確実かつ、『箱舟』への影響が少ないと考えられる」

 本当の理想は、そもそも侵入する可能性がある存在を一切合財消し去ってしまう事。

 そうすれば、どうやって守る守らない以前の話である。

 尤も、現状ではそんな事が不可能であることは、『守護者』にも分かる事ではあるが。


「方針を決定。今後も現在の路線を継続する事とする」

「ポジティブ。『神喰らい』『狂悪者』を最大の敵性存在として警戒をしつつ、戦力の増強を今後も行う」

 故に『守護者』は変わらぬ姿で扉の前に立ち続ける。

 己の役割を果たす為に。

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