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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第5章【シンなる竜頭の上オウ】
273/343

第273話「狙撃犯-3」

「さて、ここまで説明すれば、私が君に何をやってもらいたいのか分かるね。ハル・ハノイ君」

「はい」

 さて、彼らの事情が分かったところで、赤髪の男性が俺の方を向き、単純にそう言う。


「彼らの体内に存在している俺の鱗の無力化。ですよね」

「その通りだ。『世界同時多発無差別狂暴化事件』の際、君の【威風なる後】は被害者たちの体内から鱗を取り除き、事態を鎮静化させることに成功した。となれば、今回も君の能力が通用する可能性は高い」

「はい」

「勿論、鱗を除去する事によって別の問題が発生する可能性も存在するが、それはまだ起きてもいない問題だ。鱗を除去してから考えるべき事であり、何をするにしてもまずは彼らを縛っているものを取り除かなければならない」

 俺の言葉に赤髪の男性は一度肯いてから、そう返してくる。

 実際、ペナルティの候補に取られているのが彼ら自身の命では無く、彼らの家族や友人であると言う可能性。

 実は言動など縛られておらず、彼ら自身の意思でもって黙っている可能性。

 そのほかにもまあ、可能性だけなら幾らでも挙げられるが、そこは赤髪の男性の言うとおり、まずは俺がやるべき事をやってからだろう。

 俺以外に出来る事でもないしな。


「まあ、何か起きてしまった時は、尋問室に居る面々と私が対応するから、君は自分のやる事に集中してくれ」

「分かりました。では……」

 狭い部屋であると言う事で、俺は念のために背後を見て、【威風なる後】を発動できるだけのスペースが有るかを確認。

 うん、問題ないな。


「【威風なる後】起動」

 と言うわけで、低出力版の【威風なる後】を起動。

 狭い室内をさらに狭くするように、俺の背中から目には見えない翼が伸びてくる。


「おおっ、正にドラゴンの翼なのね!」

「狭いな……」

「部屋のドアを開けておきましょうか」

 うん、やっぱり部屋のサイズ的に無理があると思う。

 おかげでダスパさんとナイチェルの二人がやむを得ず部屋の外に出ちゃったよ。

 ただ、俺にはどうしようもない事なので、我慢してもらうしかない。


「では、早速……と」

 俺は右手を銃の形にし、四つの尋問室が映っている画面に向かって真っ直ぐに伸ばす。


「……」

 圧力場の展開は……画面越しではあるが、問題なく出来るな。

 試しに尋問室の壁に向けて弱めの圧力場を発生させたら、きちんと押している感覚が返ってきた。


 では本番だ。

 狙うべきは四人の脳幹と心臓部分に突き刺さっている俺の鱗。

 どうするかは……理想は粉砕で、最低でも体外に弾き飛ばすぐらいはしないといけないな。

 となれば、体外に向けて押し出しながら潰すように圧力場を生みだせばいいか。

 後の問題は……


「やっぱりか」

「どうしたのね?」

 エイリアスさん曰く実体を有さないと言う鱗に対して、単純に【威風なる後】の能力を放っても命中するかどうかという問題だが、やはり単純に放つだけでは駄目そうだな。

 と言うか、もし何も考えずに単純に放っていたら、場所が場所だし、まず間違いなく死ぬな。


「エイリアスさん。場所については胸と頭で間違いないんだよな」

「間違いないのね」

「で、実体はないと」

「そうなのね。けど、確かにそこに存在しているように私の目には見えているのね」

「ふうむ……」

 さて、どう狙いを付けた物か……。

 確か前回は妙な感覚を覚えて、その感覚の出元に向けて能力を放ったら、ああいう結果になったんだよな。

 となれば、あの時の妙な感覚と言うのは、この件の真犯人が特異体質を使って俺の鱗に干渉していた為に生じていた感覚と言う事になる。


「今回だって、現在進行形で干渉しているのは確かなんだよなぁ……」

「そうだ。能力と命令の特性上、無意識でも構わないが、常時干渉している必要はある。今だってモニタリングぐらいはしているはずだ」

 で、赤髪の男性の言うとおり、今だって真犯人は特異体質を使って俺の鱗に干渉しているはずだ。

 なのに俺があの感覚を覚えないのは……前回は無差別だったために、俺へも干渉してしまったからで、今回は彼らだけを狙って干渉を行っているから。

 と言ったところか。

 なるほど、舐められたものだな。


「……」

 真犯人が単独なのか、複数なのかは分からないが、お前らが使っているそれは俺の鱗だ。

 どうやって入手したのかも、身体から引き剥がして使っているのかも分からないが、俺の鱗である事だけは絶対だ。

 お前らは無差別にやらなければ干渉されないと味を占めているかもしれないが、現在進行形で何かをしているのならば、絶対に俺にも影響は出てくる。

 故に、俺の鱗を使い続ける限り、狙いを付ける事は不可能ではない。

 それこそ、彼らの身体に埋まっている鱗では無く、鱗についている銅線を辿って、真犯人そのものを潰す事だって出来るはずだ。


「……」

「いや、今回は彼らに埋まっている鱗だけにしてくれ。今潰すとデメリットの方が大きい」

 が、赤髪の男性を一瞥して確認を取ったら、今はその時ではないと言われてしまったので、そちらに向けて能力を行使する事は止めておく。

 いずれにしてもだ。


「では行きます」

 俺を狙撃した男とその仲間たちの体内に存在していた俺の鱗はあっけなく破壊された。

11/20誤字訂正

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