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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第5章【シンなる竜頭の上オウ】
263/343

第263話「崩落猿討伐作戦-2」

 その後、説明はつつがなく終了し、俺たちは三日後を『崩落猿討伐作戦』の決行日としてその場は解散。

 明日以降は作戦の準備に専念する事となった。

 で、26番塔で行う作戦である以上は、26番塔外の人間に話すのはもってのほかなのだが……。


「なるほど。そう言う作戦になったのですね」

「まあ、妥当な作戦だと思うのじゃ」

「頑張ってなのね」

 うん、その日の夜。

 トゥリエ教授も招いて夕食を食べた後、トゥリエ教授、、フィーファさん、エイリアスさんの三人には普通に作戦の概要を話しました。


「応援してくれるのはありがたいが……その前にだ」

 問題じゃないかって?

 大丈夫だ。問題ない。

 と言うのも……


「トゥリエ教授。エイリアスさん。二人とも『崩落猿』について教えてくれていいか?」

 ライさんの言う別口で得た『崩落猿』の情報。

 その出元がこの二人であるからだ。

 ちなみに、後で聞いた話では一週間ほど前にライさん自身が話を聞きに来たらしい。


「分かったのじゃ」

「喜んでするのね」

 なお、喜んでいる二人には申し訳ないが、情報の提供者と言っても塔外の部外者には変わりないため、教えたのはあくまでも作戦の概要であって、詳細ではないと言っておく。


「まずはこれを見て欲しいのじゃ。フィーファ」

「分かりました」

 後、エイリアスさんとフィーファさんの二人はダイオークス中央塔大学ではトゥリエ教授預かりになっているそうだが、エイリアスさんは『真眼』で、フィーファさんは高い雑用能力で普通に重用されているらしい。


「『崩落猿』を遠くから撮影した映像ですね」

「ミーティングでも見た奴だね」

 トゥリエ教授の指示でフィーファさんがパソコンを操作し、スクリーンに映像を映し出す。

 そうして映し出されたのはナイチェルとワンスの言うとおり、ミーティングでも見た『崩落猿』の戦闘映像だ。


「で、この映像をちょっと特殊なプログラムでもって加工するとじゃ」

「はいはいっと」

「こうやって、現在の『崩落猿』の姿が分かるようになるのじゃ」

 スクリーンに映し出された『崩落猿』の映像が変化し、『崩落猿』の姿が明確な輪郭を有した物に変化する。

 その姿はかつて『テトロイド』から帰ってくる時に遭遇したものとよく似ていたが、身体が大きくなった分だけ、変化もしていた。


「さて、それで説明じゃが……基本的な説明はミーティングで聞いていると思うし、特殊能力と奥の手らしき物に限って説明をさせてもらうのじゃ」

「分かりました」

 さて、『崩落猿』の現在の姿が分かったところで、本格的な説明開始である。


「まず、『崩落猿』と言う通称の元にもなった咆哮能力についてなのじゃ」

 そう言って、今まで調査班が集めて来てくれた情報を元にして造られたであろう模式図がスクリーン上に展開される。

 どうやら、咆哮能力の射程や範囲、原理などについて説明してくれるらしい。


「この咆哮能力じゃが……」

 そして、そんな俺の予想通り、トゥリエ教授の説明は多岐にわたった。

 普段ならばだいたい途中でスルーが入ってしまうのだが、今回に限っては誰もが真剣な眼差しでもって、終始集中してトゥリエ教授の話を聞いていた。

 まあ、直接命に関わるのだから、当然と言えば当然だが。


「以上が『崩落猿』の咆哮能力について分かっている事なのじゃ」

「なるほど」

「ただ、これはあくまでも予測値です。実際には予想を上回る破壊力や範囲を有する可能性もあるので、十分に気を付けてください」

「了解です」

 で、フィーファさんの注意をもって、咆哮能力の説明については無事に終了した。

 うん。やっぱり油断はできないな。

 これはゼロ距離で受けたら、俺だって十分にヤバいレベルだ。


「それで奥の手と言うのは?」

「これを見て欲しいのね」

 おまけに『崩落猿』にはまだ何か奥の手が有ると言うしな。

 と言うわけで、そちらについて尋ねたら……エイリアスさんが一枚の絵を出してきた。


「これは……」

「エイリアスさんが今の映像の元画像を見て、描いたものです」

「ちなみに、『真眼』の事を考えず、客観的に見てもこの絵の信ぴょう性は高いと判断出来る出来なのじゃ」

 その絵は『真眼』を通して見た『崩落猿』の姿だった。

 基本的な姿は元の映像と変わらない。

 だが、首には鎖のような物が巻き付けられ、口と胸にはラッパのような物が装着されていた。

 そして、四肢は……どうにも説明はしづらいが、何かが装着されているようだった。

 うーん、なんて言えばいいんだろうな……。


「何なんだろうこれ」

「うーん、小手とブーツ。と言うのが近いと思うね」

「そうだな。ただ、それだけだとどうにも違和感のような物を感じる」

「何か仕込みの様なものが有るって事?」

「かもしれないな」

 どうやら、皆もその正体については分からないらしい。

 と言うわけで、俺はこの絵の作者であるエイリアスさんに説明を求めるように視線を向けるが……。


「私にもよく分からないのね。でも、何かが有る感じだけはしたのね」

 と、言われてしまった。


「いずれにしても、『崩落猿』の四肢には何かしらの仕込が為されている。そう考えて行動するのが正解だろうな」

「だね。それだけは間違いないと思うよ」

「そうだな。気を付けないと拙そうだ」

 ただまあ、その正体は分からなくとも、『崩落猿』の奥の手を事前に知っておけたのはデカい。

 となれば後は、やれるだけの事をやるだけだ。

11/09誤字訂正

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