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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第5章【シンなる竜頭の上オウ】
250/343

第250話「問題児-1」

「さて、まず確認すべきはこれからの予定だな」

 家に帰り、夕食も摂った俺たちは、自宅に居るとは思えない程に真剣な表情をして、リビングに集合していた。


「ナイチェル」

「はい。予定では、明日は私たちの代表がトキシードで起きた事について口頭で報告する事になっています」

「代表ってことは……」

「最低でも私とトゥリエ教授の二人は確定だ。後出来る事ならば、ハルとロノヲニト、ナイチェルの内から二人は付いて来てもらいたいところだな」

 明日は報告っと。

 で、俺、ロノヲニト、ナイチェルの三人の内、二人は付いて行くべきだと言われているわけだが……。


「それならまあ、俺とロノヲニトが妥当じゃないか?」

「ハル君、その二人の理由は?」

「今の三人だと、箱の中の世界について問われたら俺が話すしかないし、各種データの提出を求められてもその場でロノヲニトが出せるから」

「まあ、妥当ではあるな」

「では、吾輩、シーザ、ハル、ロノヲニトの四人で明日は行くのじゃ」

 と言うわけで、明日は問題なしと。

 ちなみに報告に行かない面々は自宅待機と言う名の休みである。


「では話を進めましょう」

 ナイチェルの言葉に全員が肯く。


「明後日については、一日休みですので、特に問題はないでしょう。そして、明々後日からは全員通常の業務に復帰する事になります」

「つまり……」

 此処で全員の目が本来此処に居るべきでない人物……ソファーの上で静かに寝息を立てながら寝ているエイリアスさんに向けられる。


「万が一明々後日までにダイオークス政府が対応策を立て、実行してくださらない場合、誰かがエイリアスさんの監視役として一緒に居る必要が有ります」

 うん、本当にどうして此処にエイリアスさんが居るんだろうな。

 おかげで、監視役を付ける件を筆頭にして、色々と面倒な事になっている。


「万が一そうなった場合はどうしようか……」

「私たちは無理だよね……」

「まあ、外勤部隊。それも実務の側だからねぇ」

「ああ、まかり間違っても素人を入れる訳には行かない部署だ」

 とりあえず明後日までは手の空いている人間が見ていればそれで済む。

 が、それ以降については、俺、セブ、トトリ、ワンス、シーザの五人がエイリアスさんについているのは間違いなく無理だ。

 あまりにも危険すぎるし、他の都市の人間に見せるわけにはいかない部分もあるのだから。


「そう言う意味では、我とミスリも厳しいか」

「そうなるかな。部外者には見せられない資料も中にはあるし」

 ロノヲニト、ミスリも無理だ。

 ミスリの部署は本人も言うように、部外者には見せられない資料が色々と有る。

 そして、ロノヲニトはミスリの補助に回るので、当然エイリアスさんを見ている暇はない。


「吾輩にもそんな時間は無いのじゃ」

 トゥリエ教授は……まあ、論外だよな。

 ダイオークス中央塔大学の教授なのだし。

 やるのが講義にしろ、研究にしろ、部外者を置くわけにはいかないし、そもそもとして監視役をやるような余裕は無いだろう。


「そうなると……」

 全員の視線がナイチェルに集まる。

 すると、ナイチェルにも既に察しがついていたのか、溜め息を一度吐いてから口を開く。


「はぁ……つまり、明々後日以降に万が一が起きてしまったら、私がエイリアスさんを見ているしかないわけですね」

「悪いナイチェル。でも頼んだ」

「いえ、これも私の務めですから」

 うん、消去法になってしまったが、ナイチェルがエイリアスさん見ているしかないだろう。

 幸いと言うべきか、ナイチェルの仕事はエイリアスさんを部屋の中に置いておく程度なら大丈夫な仕事だし。


「さて、万が一の対応も決まったところで、私はトゥリエ教授を送ってくるとしよう」

「うむ。よろしく頼むのじゃ」

 シーザとトゥリエ教授が席を立ち、玄関の方に向かう。


「二人とも気を付けて」

「気を付けてね。お姉ちゃん」

「ああ、行ってくる」

 そして、トゥリエ教授を中央塔の自宅に送るべく、二人揃って家の外に出ていく。

 うん、例の事件もあって、少々物々しい雰囲気かつ物騒な感じが今のダイオークスには漂っているが、シーザさんが付いているなら大丈夫だろう。


「ううん?」

 と、二人が家の外に出た音に反応したのか、エイリアスさんが目を覚ます。

 どうやら、寝ぼけているらしくて、かなりぼうっとしているが。


「……。ところでふと思ったんだけどさ。監視役って常時なんだよね」

「らしいね」

「寝てる間……と言うか、誰の部屋に泊めればいいんだろうね?」

「「「あっ」」」

 セブの言葉に、目に見えて動揺が広がる。


「んー?泊まる部屋なら、黒ドラゴンの部屋が良いの……」

「却下」

「はぁ?」

「駄目だから」

「論外です」

「本気で言ってる?」

「お断りします」

「……」

 とりあえずこの件についてはエイリアスさんの意見は聞けない。

 俺の部屋で泊まると言うのは、あらゆる面で駄目だ。

 百パーセント外交問題に発展する。


「じゃあ、眼鏡の部屋が良いのね」

「「「……」」」

 再びナイチェルに視線が集まる。


「……。もうこうなればとことんです」

「悪い。本当に悪いと思っているけど、ナイチェル。よろしく頼む」

 どうやら、ダイオークスにおけるエイリアスさんの世話はナイチェルに一任する事になりそうだった。

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