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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第5章【シンなる竜頭の上オウ】
245/343

第245話「トキシード-21」

「ん?早速か」

「「……」」

「ああ、帰って来たんだね」

 シーザさんとのお話が無事に終わり……うん、無事という事にしておいてくれ。

 俺もロノヲニトも精根尽き果てているけど。

 とにかく、話が終わって元の部屋に三人で帰ってきたところ、ワンスの周囲に全員が集まっていた。


「これかい?ロノヲニトに習った通りに、まずは皆に私の魔力を触れてみて貰っているんだよ」

「ああなるほど」

 で、何をやっているのかと思っていたら、魔力を扱うための訓練を自主的にやっていたらしい。

 まあ、ワンスの中にはロノヲニトに渡された魔力に関する知識が有るしな。

 問題はないだろう。


「うーん、これが魔力かぁ……」

「何か有ると言うのは分かりますが……」

「やっぱり分かり辛いねー」

 ミスリ、ナイチェル、セブの三人は苦戦している感じだな。

 全く以て未知の分野なのだから、これは当然の事だろう。


「やっぱり『サーチビット・テスツ』を操る時の感覚に似てるね」

「ふむ。角に意識を集中させて、感度を上げる時に似た感じがやはりあるのじゃ」

「おー、これが魔力なのね」

 対してトトリ、トゥリエ教授、エイリアスさんの三人は既に何かを掴んだ感覚があるらしい。

 三人とも特異体質……しかもトトリとエイリアスさんの特異体質は魔力との関係が深そうだから、当たり前と言えば当たり前の結果なのだろうけど。


「で、フィーファさんが参加していないのは何で?」

「私はトキシード側の人間なので、後で問題になっても嫌ですし、遠慮しておいた方が良いと判断しました」

「なるほど」

 で、フィーファさんだけがどうして参加していないのかと思ったら、所属している都市の違いから、遠慮したらしい。

 まあ、迂闊に広めれば確実に問題が起きる知識だしな。

 フィーファさんの言うとおり、所属する都市が違うなら遠慮しておく方が問題は起きないだろう。

 エイリアスさんについては……まあ、何とかなるんじゃないか?

 今は気にしないでおこう。


「しかし、箱の中の世界に比べるとやっぱり魔力が扱いづらいね」

「まあ、ハルたちとエイリアスの話を聞く限りでは、箱の中の世界は外と違ってかなり柔軟な世界だったようだからな」

「と言うか、これで難なく使いこなせてしまったら、我の立つ瀬が無いのだが……」

「まあ、それもそうだね」

 ふうむ。

 やっぱり箱の中の世界の方が魔力は扱いやすいのか。

 まあ、あそこは望めばなんでも出てくる世界だったもんな。

 使いやすいのも当然か。


「んー。でもそれなら、切っ掛けを掴むぐらいは箱の中でやってみた方が良いのかもな。俺が居れば箱の中の世界に入れるんだし」

 ちなみに、中に『クラーレ』が居た例の箱だが、俺たちが外に脱出してからも、外見中身共に変化した兆候はないとの事。

 うん。今まで見つけたアタッシュケースの中身が、『Halhanoy.txt』シリーズのデータが入ったUSBメモリ、装飾付きの短剣、プラスαだった事。

 あの箱の中に五つ目のデータと短剣が隠されていた事からして、あの箱自体がプラスαに当たる物だったんだろうな。

 と言うわけで、あの箱の中の世界の特製を有効活用するべくこんな提案してみたんだが……。


「ハル様。それは厳しいと思います」

「と言うと?」

「あの箱は確かにハル様が居なければ使う事は出来ません。ですが、あの箱を元にして複製品・劣化品を作れる可能性が有る限りは、あの箱を見つけた『アーピトキア』が手放す事は無いと思います。そして、『アーピトキア』が手放さない以上は、私たち第32小隊が私的な用件で使う事は難しいと思います」

「あー、言われてみれば確かに……」

「まあ、地道に外の世界で経験を積むしかないと言う事だな」

 見事に駄目だしされてしまった。

 まあ、あの箱に使われている技術からして、例え技術を一部流用しただけの劣化品でも、造れれば用途は色々と出て来るだろうしなぁ……。

 うん、無い物ねだりをしても仕方がないし、ここはスパッと諦めてしまおう。


「ふぅ……それで、アタシたちが個人的に魔力の扱い方を訓練するのは良いとして、第32小隊としてのこれからの予定はどうなっているんだい?」

 ワンスが魔力の放出を止めたのか、ワンスの周りに集まっていた面々が離れていく。


「これからの予定か……そうだな」

 で、これからの予定だが……シーザさんはしばしの間悩んだ後、口を開き始める。


「まず、近い内にダイオークスに帰ることは間違いない。何時までもトキシードに居る訳には行かないからな」

「まあ、そうだろうね」

 まずダイオークスに帰る。

 これは確かに決定事項だな。


「その後については……私としては何とも言えないな」

 だがその後については、シーザさんには何も分からないらしい。


「えと、まだ見つかっていないクラスメイトの皆を探すのは……」

「手がかりが無いから、探しようがない」

「俺の新しい能力も……同じか」

「そもそも、ハルの能力は今までの傾向からして、異世界人が現れた場所に在るのじゃ」

「『ノクスソークス』については?」

「工作員がハル様と似た気配を漂わせていたんだよね」

「気にはなりますが、相手は一つの都市です。ダイオークス外勤部隊の一小隊に過ぎない私たちでは何も出来ません」

 一応何かやれる事は無いかと思って意見を上げ合ってみたが……うん、こりゃあ、予定は未定な状態になるのも仕方がないな。

 次に繋がる手がかりがまるでない。


「まあ、ダイオークスに帰った後は通常業務に戻り、トキシードの聖地で発見した暗号の解読を待つ。と言うのが妥当な所だろうな」

「だねぇ……」

「まあ、仕方がない。かな」

 うん。これはまたお呼びがかかるまで待つしかなさそうだな。

 今の俺たちにやれる事は冗談抜きにないし。


 そうして、その日は残りの時間ずっと魔力に関する諸々を自主的にすることになったのだった。

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