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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第5章【シンなる竜頭の上オウ】
243/343

第243話「トキシード-19」

章タイトルは誤字ではないと先に言っておきます。

「はぁ……やっと落ち着ける」

 『クラーレ』との戦いが終わり、箱の中の世界から無事に脱出してから二日後。

 俺たち第32小隊の面々はボウツ・リヌス・トキシードに用意されたホテルでゆったりと休んでいた。


「事情聴取にレポート……」

「質問攻めの嵐だったねぇ……」

 うん、昨日一昨日は大変だった。

 俺、トトリ、ワンスの三人は『クラーレ』との戦い含め、箱の中であったことを根掘り葉掘り聞かれたし、残りの面々も色々あったらしく、かなり長時間の事情聴取と大量のレポートを書かされていた。


「で、どうしてエイリアスさんがここに?」

「何か、面白そうな事が起きる予感がしたのね」

 で、トキシードで俺たちを世話する役であるフィーファさんは良いとして、完全な部外者であるエイリアスさんがどうして此処にいるのか、ナイチェルが尋ねてみたのだが……うん、見事なドヤ顔で返された。

 後フィーファさん。

 貴女が謝る必要は無いと思いますよ。

 貴女が彼女を止められるとも思えませんから。


「ふむ。どうやら全員……部外者も一人居るが、揃っているようだな」

「まあ、居ても問題はないだろう。この二人ならむしろ好都合だ」

「お姉ちゃんお帰り。ロノヲニトさんも」

「二人ともお帰りなさい」

 と、何処かに行っていたシーザとロノヲニトの二人が帰ってくる。

 シーザの表情は……危険な任務時のように、真剣な物だな。

 これは何か有ったか?いや、何か有ったんじゃなくて……


「悪いが、この場に居る全員に話が有る。少々付き合ってもらうぞ」

 これから何か有るらしい。


「話と言うのは、例のあの件じゃな」

「そうだ。そう言うわけだから、フィーファ。済まないが、この部屋を一時的に隔離させて貰うぞ」

「少々お待ちを……許可出ました。今私たちが居る建物に限って、どういう改造を行ってもいいそうです」

「ロノヲニト」

「分かった」

 ロノヲニトが部屋の床に手をやる。

 すると、壁の中で何かが蠢くような音がしばらくの間し続け……


「隔離完了」

 一瞬照明が消えた後には、扉も窓も強固にロックされていた。

 ふむ、一瞬照明が消えた辺りからして、電源何かも完全に独立させたんだろうな。

 となれば、振動や熱、電波と言った物も遮断しているだろうな。


「よし、それでは話を始めるとしよう。話の内容は、ロノヲニトがワンスに渡したデータの一部についてだ」

「一部?全部じゃ無くてですか?」

「我が渡したデータは大別すれば二種類あってな。その内の片方については、ワンスとシーザ以外に明かす気はないし、シーザもそう判断したものだからな。気にしなくてもいい」

 スクリーンのようなものが下りて来ると同時に、ロノヲニトがプロジェクターに触れ、映像が投射され始める。


「そしてもう一つのデータについては、私とロノヲニトの二人で協議した結果。一般に広めるのは危険だと判断したが、この場に居る面々と、各都市の上層部には伝えておくべきだと判断した」

 シーザがフィーファさんの方を向く。

 すると、フィーファさんも自分がここに居る意図を察したのか、小さく頷いた。

 なるほど。

 フィーファさんは各都市の上層部に直接話を伝える役目と言うわけか。


「それでこの隔離部屋なのじゃな」

「そうだ。では、話を始めるとしようか。ロノヲニト」

「分かった」

 ロノヲニトがプロジェクターから手を放し、シーザとロノヲニトの二人はスクリーンの左右に分かれて立つ。


「先に断っておく。今から我が話をするのは、迂闊に口外すれば、それだけで一つの都市の存亡に関わりかねない話だ。全員気を付けて聞くように」

 ロノヲニトの言葉に全員が静かに頷く。


「では話そう。魔力(マーナ)についてな」

 そうしてロノヲニトの話が始まった。


------------


「まず初めに、我が知っている魔力と言う物の定義について話しておこう」

 ロノヲニトの意思に応じて、スクリーンの映像が待機画面から白抜きの人型が表示された画面に切り替わる。


「魔力とは、生きている者も生きていないものも、この世に存在するありとあらゆる存在が有しているエネルギーのような物だ。細かい定義や性質などは世界ごとに異なるそうだが、この点については何処の世界でも同じだそうだ」

「そうだと言う事は、イヴ・リブラ博士に与えられた知識なのじゃな」

 トゥリエ教授の指摘にロノヲニトは小さく頷く。

 と同時に、スクリーンの人型が色取り取りの光をその身から放ち始める。


「何処の世界にも在ると言う事は、当然この世界『クラーレ』にも魔力は存在するし、我々人間も持っている。それどころか、瘴気が地上を覆う以前よりも分かり易い形で発露するようになっている」

「最も分かり易い形は……この場だとトゥリエ教授とエイリアスの二人だな」

 ロノヲニトの視線がトゥリエ教授に、シーザの視線がエイリアスさんに向けられ、俺たちの目も必然的に二人に向けられる。

 この二人の共通項は……


「まさか……」

「そうだ。ロノヲニトが言うには、この世界では魔力による変化が特異体質と言う形で表れているらしい」

 そう、特異体質だ。

 ある程度血筋によって現れやすいかどうかが関わると聞いていたが、まさか魔力なんてファンタジーな物が関わっているとはな……。

 いやまあ、俺自身半分ぐらいはファンタジーな存在なんだが。


「だが、特異体質以上に、魔力が目に見えて明らかな形で表れているものがある」

「特異体質以上に?」

 だが、ロノヲニトが放った一言は、特異体質の正体を言った一言以上に、俺たち全員の度肝を抜く事になった。


「瘴気。あれもとある存在の魔力だ」

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