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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第4章【威風堂々なる前後】
237/343

第237話「M4-11」

『『『死ねっ!滅びろ!消滅しろ!!』』』

「はぁ、やっぱりこうなるか」

 『クラーレ』の身体から生えた無数の石柱が俺に向かってミサイルのように飛んでくる。


「トトリ、ワンス。二人が居る空間は俺が急制動しても影響が及ばないように作ってあるが、一応身構えておいてくれ」

「分かったよ」

「うん」

「じゃあ……」

 『クラーレ』の攻撃に対して俺は【不抜なる下】で体を固定したまま、【威風なる後】の能力によって自分の身体に負荷を掛けて行く。


「行くぞ!!」

「「!?」」

 そして、十分に圧力貯まったところで【不抜なる下】の能力を解除。

 俺の身体は貯められていた圧力によって急加速し、一気に『クラーレ』の放った石柱に向かって接近していく。


『『『死ぬがいい!滅びるがいい!蝕まれるがいい!!』』』

「やれるものならやってみろ!」

 遠目では小さく見えた石柱も、眼前にまで迫れば一本一本が今の俺の爪並の大きさと太さを持っている事。

 その先端に紫色の物体が矢じりとして取り付けられている事が分かる。

 紫色の物体の正体は分からない。

 が、今俺に向かって来ている全ての石柱を喰らったら、流石にただでは済まない事は確かだろう。


「【威風なる(プレッシャー)(バック)】!へし折れ!」

『小癪な!』

 故に俺は【威風なる後】の力の内、俺の身体を動かすのに使っていない余剰出力を攻撃に転用。

 俺に向かって飛来する石柱群に対して、一本一本個別に真横から一点に集中させる形で圧力を発生させ、叩き折っていく。


『『『その程度で私の攻撃を凌ぎ切れると思っているとは片腹痛い!』』』

 勿論、『クラーレ』からは後詰として次々に新しい石柱が放たれ、俺の身体に向かってきている。

 そして、徐々にではあるが、石柱の弾幕の密度は確実に上がって来ていた。


『『『やはり瘴気の塊は、瘴気の塊に過ぎんか!!』』』

「【堅牢なる(フォートレス)(レフト)】!弾け!」

 だが問題はない。

 俺は左腕を自分の正面に持ってくると、【堅牢なる左】の能力によって斥力場を形成。

 と同時に【威風なる後】の余剰出力を加速に回し……


『『『なっ!?』』』

「行くぞ『クラーレ』!」

 突撃。


『『『ちぃ!?』』』

 『クラーレ』の放つ石柱の密度がさらに上がるが、正面から来た物は【堅牢なる左】の斥力場によってその進路を阻まれ、砕け散り、斥力場を迂回して襲い掛かろうとした石柱は俺の速さに追いつくことが出来ない。


『このっ……』

 そして、『クラーレ』の眼孔に再び光が集まり始めた時。

 俺は既に、体長が1km近くある今の俺と比較してもなお巨大な『クラーレ』の肉体の前にまで迫っていた。


『!?』

「裂け!【苛烈なる(アサルト)(ライト)】!」

 『クラーレ』の瞳孔が大きく開かれる。

 だが俺はそれを無視して右腕を振りかぶると、短剣を核に持つ四本の爪の延長線上に物質分解の力場を形成。


「オラアアアァァァ!!」

『『『ギヤアアアァァァ!?』』』

 【不抜なる下】によって身体の勢いの方向を強制変更すると、【苛烈なる右】によって『クラーレ』の肉体を深く深く抉り取る。


「やった!?」

『この……』

「まだだよ!ハル!」

「分かってる!」

 だが、この程度で倒れるほど『クラーレ』は華奢な存在では無かった。

 『クラーレ』の怒りに染まった瞳がこちらに向けられる。

 と同時に、俺は【不抜なる下】の能力を解除し、突撃した時と同じように【威風なる後】と【堅牢なる左】の能力でもって再加速、離脱の為の動きを始める。


『『『瘴気の塊の分際でええぇぇ!』』』

 再び『クラーレ』が眼孔部分から光線を放ち始める。

 だが、先程と違って、ただ放ち続けるだけでなく、俺に攻撃を当てるべく、『クラーレ』はゆっくりと俺が居る方に向かってその巨大な体を回転させ始めていた。


「くそっ!?」

 あんな攻撃をゼロ距離で喰らうのは危険すぎる。

 そう判断した俺は全力で『クラーレ』の周囲を回るように逃げ続ける。

 だが、元々クラーレが向いていた方向から90°程進んだ時だった。


「っつ!?」

「ハル君!?」

「ハル!?」

 突如として、俺の動きが鈍る。

 それはまるで、進んでいる場所が空の上から海の中に変わったかのような変化だった。

 どうしてこんな変化が起きたのか。


「ちいっ!色彩変更!」

 俺は、俺の力が及んでいる領域を瘴気の色でもって塗り潰した。

 すると、こんな変化が起きた理由は直ぐに分かった。


『『『滅びろおおぉぉ!!』』』

 俺の周囲は瘴気の血の様な赤い色ではなく、黒いコールタールの様な空間になっていた。

 それは、此処が俺の領域では無く、『クラーレ』の領域であることを示していた。


「脱出!!」

 俺はすぐさま進路を変更。

 自分の領域に脱出するところで、俺の身体を掠めるように『クラーレ』の光線が俺のさっきまで居た場所を過ぎ去っていく。


『ちぃ!』

 そして、そこでエネルギーが尽きたのか、『クラーレ』の光線が消える。


「よしっ、もう一か……」

『だが……』

 俺はそれを好機と見て、再び突撃しようとする。

 だがその時だった。


『『『そろそろ効いてくる頃よなぁ』』』

「っつ!?」

 突然、俺の動きが鈍る。

 それも、先程の相手の領域に踏み込んでしまったのとは全く別の感覚でもって。

 心当たりはある。

 最初の石柱群の矢じりに使われていた紫色の物体だ。

 だが、俺の体の免疫機構を抜いて身体を麻痺させてくる毒だと……くそっ。


『『『縊り殺してくれるわ!』』』

「ぐっ……」

 『クラーレ』の背後から、眼軸に当たるであろう部分が俺に向かって伸びてくる。

 俺は咄嗟に【威風なる後】を発動させ、距離を取ろうとするが、そこに今までの勢いは無かった。


『『『死ぬがいい!』』』

「ハル君!?」

「ハル!?」

「くそっ……」

 そして『クラーレ』の眼軸が俺の頭に絡み付き……俺の首をもいだ。

もげたッ!第五部完!!





……。勿論冗談ですよ。

何となく言わなければならないと思ったので書きましたが。


10/15誤字訂正

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