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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第4章【威風堂々なる前後】

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第217話「トキシード-9」

「以上が報告になります」

『ご苦労。次の定時報告を待っている』

「ふぅ……」

 さて、トキシードに戻ってきた俺たちは、トキシード各部署との摺合せに向かったフィーファさんを見送り、手伝いを終えたトゥリエ教授たちと合流すると、ダイオークス組専用として割り当てられたホテルの建物に入った。

 そして、ダイオークスへの報告を含めた諸々の作業を終えると、まずは一息吐く。


「まずは軽くお茶でも飲みましょうか」

「そうだね。僕もだけど、皆気を張り続けていたせいで、だいぶ疲れているみたいだし」

「ありがとうナイチェル。ふぅ……」

 で、ナイチェルが淹れてくれたお茶を飲んで、もう一息吐く。


「さて、落ち着いたところで明日以降の予定について確認しておこうか」

「そうじゃな。吾輩もそれでいいと思う」

 明日以降の予定か……結構と言うか、かなり詰まっているんだよなぁ。


「まず明日については、二手に分かれて行動する事になる」

 部屋備え付けのモニターに、明日以降の予定を図としてシーザが書く。


「アタシ、ハル、トトリ、ロノヲニト、ナイチェルの五人は、メラルド・エタス・ヤクウィードの子孫で、その絵を一括管理しているエイリアス・ティル・ヤクウィードって子と会うで良いんだよね?」

「そうだが……ロノヲニト?」

「心配しなくても、交渉を担当してもらったフィーファからは既にいい返事が来ている。明日の朝にホテルの前で合流するようにとの事だ」

「つまり予定通り会いに行く。と」

 まず明日については、俺たち五人はアタッシュケースの内側に書かれていたメッセージの真偽を確かめるために行動する。

 勿論当初の予定には無い行動であるので、各方面に色々と迷惑をかけた事は確かである。

 尤も、かけられる迷惑以上に、イヴ・リブラ博士の言う真実の方が、誰も彼も気になっているようだが。


「で、残りの面々で、今日回収したアタッシュケースの中身の解析を手伝うんだよね。お姉ちゃん」

「そう言う事になる」

「まあ、書類以外は一応レベルの物になると思うのじゃ」

 で、シーザ、ミスリ、セブ、トゥリエ教授の四人は今日回収した短剣、USBメモリ、書類の解析作業をトキシード側が行うので、その手伝いをする。

 ただまあ、トゥリエ教授の言うとおり、記号と数字が並べられた書類以外は……解析できるとは思えない。

 今までだってそうだったし。

 ただ、この事はトキシード側も分かっている事である。


「で、明後日の午前中は、ハル君はUSBメモリの中身の確認。私たちは念のためにハル君を護衛。だね」

「その通りだ」

「皆よろしく頼む」

 と言うわけで、USBメモリの解析は一日で切り上げ、明後日には俺が中身を確認する手はずになっている。

 USBメモリの中身はまた例のファイルだったらしいしな。


「そして午後からは『春夏冬(ノーオータム)』のライブ鑑賞だね」

「VIPルームを使わせていただけるそうです」

「うん。ちょっと楽しみになるね」

「エタナール教皇陛下も私たちと同じ部屋で見るとの事だから、全員態度には気を付ける様に」

「言われなくても分かってるって」

 で、午後からは『春夏冬』のライブを見る。

 うん、ダイオークスでは警備の方に集中していて、全力で楽しむ事は出来なかったし、ちょっと楽しみではあるな。

 まあ、教皇様……それに湯盾たちも同じ部屋に居るだろうから、羽目を外しすぎるわけにはいかないが。


「最後に明々後日だが、この日にはハルに今日見つけた短剣が渡されることになっている」

「そして、その日の内に例の立方体に新しい短剣を挿し込んでみるようにとの事なのじゃ」

「分かってます」

 そして明々後日には……例の立方体に再チャレンジする事になる。

 順当に行けば、中に入っているのはまた例のアタッシュケースなんだろうが……少々どころでなく嫌な予感がして仕方がない。


「ハル。今日見つけた短剣で開けられると思うかい?」

 と、俺の不安を察したのか、ワンスが声を掛けてくる。


「開けることは出来ると思う。ただ……」

「ただ?」

「中に妙な物が仕込まれている気がしてしょうがない」

「「「……」」」

 ならば俺の感じている不安はしっかりと伝えておくべきだろう。

 心構えが有る状態で遭遇するのと、不意を衝かれるのとでは、出来る対応に大きな差が生じることになるから。


「全員に通達。明々後日、例の立方体を調べる際には防護服を着用しておくように」

「『テトロイド』の時みたいなことになったら洒落にならないしね」

「ロノヲニト。トキシード側にも同じことを伝えて欲しいのじゃ」

「了解。伝えておこう」

「リモートドールも幾らか用意しておいた方が良いかな?」

「良いと思います」

「相手はイヴ・リブラ博士だしね」

「何が起きても不思議じゃないよね」

 そう思って伝えたら、全員揃ってこの反応である。

 うん、実に正しい反応だな。

 イヴ・リブラ博士が相手なら、どれだけの対応策を練っても過剰になる事はないだろうし。

 問題は防護服程度で防げる何かで済むかだが……そこは予め【堅牢なる左】や【不抜なる下】、それに第四のUSBメモリで加わるであろう力で防御を固めておくしかないな。


「全員、明々後日については細心の注意を払って事に当たるように。分かったな」

「「「了解!」」」

 ただ、何かの決戦に臨むような空気は流石にどうかと思わないでもない。

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