表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第4章【威風堂々なる前後】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

204/343

第204話「警護任務-21」

「どういう事だ?」

「ふむ。ロノヲニト」

「分かった」

 何も起きない事に困惑する俺を尻目に、トゥリエ教授の求めに応じる形でロノヲニトが箱に近づく。


「何を……」

「よっと」

「「「!?」」」

 そして、ロノヲニトが行った行動にトゥリエ教授ともう一人の教授以外の全員が思わず絶句する。


「ロ、ロノヲニト……」

「ん?我ならこれぐらい出来て当然だろう。この身体は機械なのだし」

 そう、ロノヲニトは……自分の右目を取り出すと、眼球部分を外したのだった。

 いやまあ、ロノヲニト自身が言っているように、今のロノヲニトの身体はガイノイド……つまりは機械であり、自分の身体の一部を取り外す程度何の問題も無いのかもしれない。

 しれないが……


「では、探るぞ」

「うむ。頼んだのじゃ」

 人間そっくりな見た目で、自分の眼球を取り外し、人間の視神経に当たる部分を引き出し、その先端部分を箱のスリットの中に入れると言う行動には、生理的な嫌悪感に近い物すら感じる。

 実際、『春夏冬』の三人は明らかに吐き気のような物を覚えているようだし、トトリたちも視線を逸らしたり、頬をヒクつかせたりしているしな。

 ただ、間近で見せられている俺は……うん、何か起きた時の為にも、目を逸らすわけにはいかないな。

 いかないんだよなぁ……。


「どうじゃ?」

「スリットの中には複数の電極や検査用の機械と思しき物体が配されているな」

「ふむ。何処かで詰まっていたり、検査に支障を来たすような汚れと言った物は無いのじゃな」

「我が見る限りではそう言う問題は発生していないようだ」

 で、この際嫌悪感は気合でねじ伏せるとして、ロノヲニトの報告通りなら、箱が開かなかった原因は箱では無く短剣の方に有るらしい。


「つまり、挿すべき鍵が違う……と」

「まあ、そう言う事じゃろうな」

 なら話は単純だ。

 俺の短剣は【苛烈なる(アサルト)(ライト)】の爪としての役割もあるが、イヴ・リブラ博士が遺した物に繋がる鍵としての役割もある。

 そして、鍵と言う物は基本的に対になる錠しか開ける事は出来ない。

 つまり、俺の手持ちの短剣()はこの箱にかかっている錠に合っていないと言う事だ。


「えと、だったらどうするんだい?」

 南瓜さんが若干引き気味に俺たちに質問をしてくる。

 どうするかねぇ……。

 なお、後ろでロノヲニトが視神経を引き上げて眼球を填め直しているのは見ない事にする。


「検査用の機械があると言う事は、そこからハッキングし開けることは理論上可能じゃろう。じゃが……」

「イヴ・リブラ博士の性格からして、そんな事をしたら最低でも中身は確実に駄目になると思う」

「まあ、そうじゃろうな」

 まず正規ルートを利用しない方法は却下。

 イヴ・リブラ博士の性格なら、中身を駄目にするのと同時に、その作業を行っていた人間を死に至らしめる仕掛けぐらいは有ってもおかしくない。


「破壊は……?」

「うーん、俺の【苛烈なる右】で行けるとは思えないな」

「と言うより、人間の技術でどうこう出来るとは思えないな」

 箱の外装を破壊して開ける方法も当然却下。

 俺たちの手札で破壊できる程度の物質なら、『アーピトキア』が行った各種方法でも破壊出来ているはずだ。


「鍵を作るって言うのは?」

「そちらは実質的に不可能。と、言っていいでしょうな」

「実質的に不可能?」

 鍵を作ると言う案は……他の案に比べればまだ可能性はありそうだが、まず無理だろう。


「ええ、仮にこの箱に用いられている鍵が、彼の短剣と同じ技術を用いて作られた物だとしたら、その組み合わせは膨大無限。鍵の設計図が我々の手元に在って、初めて作れる可能性があるレベルでしょう」

「「「?」」」

「あー……確かに」

「まあ、無理だろうね……」

 もう一人の教授の言葉に『春夏冬』の三人は困惑の表情を浮かべるが、トトリたちは納得した様子を見せる。

 だがまあ、『春夏冬』の三人もこの短剣がどういう物なのか説明すれば、納得せざるを得ないだろう。


「実はな……」

 と言うわけで、『春夏冬』の三人に鍵を作れない理由について、教授たちの助けも借りながら要点だけを掻い摘んで話すとだ。


・この短剣は十種類以上の原子を、原子レベルで配置を決めて製作されている

・原子と言うのは非常に小さく、炭素ならば6.02214129×10の23乗個集まって、やっと12gになる(トゥリエ教授談)

・作るべき鍵の形は不明。もしかしたら、俺が今持っている短剣とは似ても似つかない形の可能性すらある


「と言う事になって、その組み合わせは……まあ、想像もしたくない数になる」

「うん。ごめん。アタシたちが悪かった。これは無理だわ」

 と言うわけで、作るべき鍵のパターンは無限ではないが、普通の人間には無限としか思えないような量のパターンが生じてしまい、とてもではないが鍵を新たに作ることなど出来ないのである。


「さて、それでこの箱は今後どうするんだ?」

「『アーピトキア』には悪いが、鍵が見つかるまでは何もするなと言った上で返すしかないのじゃ」

「まあ、それが妥当だろうな」

「我もそうするべきだと思う」

 結局、俺たちにこれ以上出来ることは無かった。

09/11誤字訂正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ