表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第4章【威風堂々なる前後】
203/343

第203話「警護任務-20」

「これがそうなのじゃ」

 俺たちが案内された部屋には、一つの台座と金属製と思しき立方体が置かれていた。

 うん。どうしてこれが俺たちに見せたいものなのかは分からないが、他にこの部屋に在るのはどう見ても何かの調査をするための機械や器具だし、この立方体が俺たちに見せたいもので間違いないだろう。


「えと、トゥリエ教授。これって何なんですか?」

「それは……」

「アタシたちが最初に飛ばされた建物に隠されていた物品らしいよ」

 トトリの質問に南瓜さんが答える。

 その事にトゥリエ教授は一瞬不満そうな顔し……直ぐに数枚の資料を手に取って説明を始める。


「『アーピトキア』側から渡された資料によれば、正体不明の金属によって作られた箱との事じゃ」

 うん、どうやらトゥリエ教授は反論をして話を遅らせたら、この前の二の舞になると判断したらしい。

 そして、トゥリエ教授は『アーピトキア』側がこの箱について調査した結果について淡々と語り、全てが語り終ったところで俺たち第32小隊は……


「「「はぁ……」」」

 深々と溜め息を吐いた。

 だが、溜め息の一つぐらい吐いたって許されるだろう。


「そこまでやって壊れないとか、どう考えてもイヴ・リブラ博士の創作物だな」

「と言うか、他にこんな物を作れる人間が居たら、そっちの方がむしろ困るかも」

「いずれにしても、またハル関連の何かが中に入っているんだろうね」

「USBメモリに、短剣に……」

「何かしらの論文と言ったところでしょうか」

「どっちにせよ、また荒れそうだな」

「毎回毎回、私たちの常識を壊されるような何かが来るんですよねぇ……」

「エブリラ様だからしょうがない」

 今までを知っているなら、この中には高確率で俺を強化してくれる何かと、今までの常識を木っ端微塵に壊してくれるような何かが入っている事はほぼ間違いないのだから。


「え、えーと、イヴ・リブラ博士って、羽井と関係が有るんだっけ?」

「ん?どうしてその事を……」

「あ、ゴメンハル君。ハル君とイヴ・リブラ博士の間に何かしらの関係が有る事だけは、私の方から話させて貰ったの。その方が色々と説明しやすかったから」

「ああなるほど」

 南瓜さんの質問に俺は一瞬、何故俺とイヴ・リブラ博士の関係を知っているのかと思ったが、トトリの言葉に納得する。

 そして、俺とイヴ・リブラ博士の間に何かしらの関係が有る事“だけ”と言った点からして、ロノヲニトの正体や俺との関係性、俺の能力がイヴ・リブラ博士によって与えられた点などについては話していないと見るべきなのだろう。

 なら、そう言う前提で話すべきだな。


「確かに俺とイヴ・リブラ博士の間には一方的ではあるが、関係は有るな。凄く不本意ではあるし、その詳細は俺も分からないが」

「ハルハノイ……」

 ロノヲニトが微妙にこちらを睨んでいるが、気にしないでおく。


「で、その関係性故に俺たちは此処に呼ばれた。そして、この箱について調べてみて欲しい。と言ったところですよね。トゥリエ教授」

「うむ。その通りなのじゃ。今までの流れからすれば、ハルが近づいたり調べたりすれば、何かが起きると吾輩たちは考えているのじゃ」

 いずれにしても、この場で俺とイヴ・リブラ博士の関係の詳細について明かしておく必要は無いだろう。

 今やるべきなのは、この箱を調べる事だ。


「じゃ、ちょっと調べてみるか。ロノヲニト。お前も手伝ってくれ」

「……。分かった」

「ハル君私たちは?」

「んー……何か妙な仕掛けが有っても嫌だし、『春夏冬』の三人と一緒に壁際で休憩でもしておいてくれ」

「分かった」

「では、一応、対瘴気用のハウスを作るから、作り終ったら調査を始めてください」

「分かりました」

 と言うわけで、一見すればビニールハウスのようにも見える小さな小屋を部屋の中に作ると、立方体、俺、ロノヲニトだけを入れて、ビニールハウスを封鎖。

 と同時に調査を開始する。


「うーん、確かに中が空洞でないと有り得ないレベルの軽さだな」

「ただ、中が空洞であるにしては、僅かに重心がおかしいな」

「つまり、中に何かが入っている。または何処か一面に仕掛けが有る……と」

「そう言う事だな」

 俺とロノヲニトは自分の考えを口に出しながら立方体を調べていく。


「と、此処がそうだな」

「ん?何を見つけたのじゃ?」

「此処が動くみたいですよ……っと」

 そうやってしばらくの間調べていると、俺は立方体のとある一面の隅が僅かに動くことを発見する。

 ただ、こんな簡単な仕掛けを今まで調べた人たちが気が付かないとも思わないし……うん、イヴ・リブラ博士が俺以外の人たちの認識を阻害するような何かを仕掛けてあったんだろうな。


「ふむ……鍵穴か?」

「みたいです」

 それで立方体を動かした場所から出てきたのは、いつもの短剣を挿し込むのにちょうど良さそうなスリットだった。


「ちょっと試してみます」

「分かったのじゃ」

 と言うわけで、俺は【苛烈なる右】の爪部分だけを起動、呼び出すと、一本ずつ挿し込んでいって反応するかを確かめてみる。

 だが……


「何も起きない?」

 俺が今持っている三本の短剣。

 そのどれを挿し込んでも、立方体には何の変化も生じなかった。

09/23誤字訂正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ