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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第4章【威風堂々なる前後】
199/343

第199話「警護任務-17」

 その後、部屋から追い出された俺は部屋の前に立って警備をしようとしたのだが、そこには既に『アーピトキア』側の女性警備員が二人立っており、俺が立つ瀬は無かった。


「じゃ、ハル。アタシたちは中で警護をしているから」

「ハル様。あまり気を落とさないでくださいね」

「おーう……」

 と言うわけで、シーザの連絡を受けてワンスたちがやってきた時点で俺は若干項垂れつつ、建物の外に出る。

 まあ、警備の責任者であるシーザとヴェスパさん二人の許可はちゃんと得ているから、その点では問題ない。

 それに、わざわざ『春夏冬』の三人が居る建物から離れ過ぎないようにとの注意はされているから、いざと言う時の戦力としては期待されていると見ていいのだろうが。


「ふぅ……」

 いずれにしても、追い出された事には変わりないので、ホテルの入り口と三人が泊まっている建物の両方が見える位置のベンチを探し出すと、俺は溜め息を吐きながら、端の方に腰を下ろす。


「やあハル。調子はどうだい?」

「ソルナか」

 しばらく経った頃。

 俺の座っている側とは反対側の端にソルナが腰を下ろし、俺に声を掛けてくる。

 ふむ。私服……と言う事は、ホテルの客に扮して警備中……と言う事なんだろうな。

 でなければ、わざわざこの場にやってきて、俺に声を掛ける意味が無い。


「見ての通り異常なし。至って平和だよ」

「君は女性遍歴がばれて、外されたみたいだけどね」

「ぐっ……」

 くそう、ここでも突っ込まれるのか!

 と言うか改めて理解した!させられた!この件に関して味方は居ない!絶対にだ!!


「まあ、仕方がないんじゃないかな。アイドルってのは外聞が大切だからね。それを考えたら、君以上にアイドルの護衛に向かない経歴の持ち主も居ないと思うよ」

「ぐぬぬ……」

 まあこの際、『春夏冬』の三人の警護で、一歩離れた場所に配置されるのは容認しよう。

 俺の【堅牢なる左】なら、多少距離が離れていても問題はない。

 だが『春夏冬』の三人と関わりの無いソルナがここまで俺の女性遍歴を突っつくのは……


「と言うか、そう言う風に仕向けたのはソルナの親父たち、塔長会議じゃないのか?」

 流石にどうかと思う。


「まあそれはそうなんだけどね。実際、ダイオークスとしては、一刻も早く第一子ぐらいは欲しいと思っているわけだし」

「……」

 が、ソルナとしては別に想定済みの質問だったらしく、爽やかにそう言い返されてしまった。

 と言うか何でそんな生々しい言葉を放っておきながら、ソルナの爽やかさは薄れないんだろうな?

 正直、特異体質を疑いたくなるレベルだぞ。


「さて、雑談はこれぐらいにして、連絡事項を伝えておこうか」

「連絡事項?何で直接……って、ああ、そう言う事か」

「そう言う事」

 ソルナの連絡事項と言う言葉に、俺は一瞬何故無線機などの通信機器を使わないのかと思ったが、口に出す前に盗聴などをされる可能性に至り、一人で納得する。


「それで内容は?」

「今のところはここ(ホテル)どころか、ダイオークスの何処を見ても至って平和。僕たちに関わる範囲では何の問題も発生していないってさ」

「空港で、ファンの列から飛び出そうとしていた奴が居たが?」

「ただのちょっと行き過ぎただけのファンで、サインが欲しかっただけだったよ。で、今は説教中だってさ」

「ふうん……」

 何と言うか、わざわざ伝える必要が有るのかすら悩むレベルの情報だな。

 まあ、今のところは何も起きていないと言うのは、多少は大切な情報なのかもしれないが。


「と言うかだ。正直な話として、本当に『春夏冬』の三人が狙われるのか?そんな気配まるで無いんだが」

「うーん、僕個人としては、五分五分ぐらいじゃないかな……と、思っていたりするね」

「五分五分?」

 俺の質問に対して、何処か悩ましげな顔でソルナは返してくる。


「理由は言えない。ああ勿論、彼女たちがアイドルである以上は、彼女たちをつけ狙う変質者の類は居ると思っているよ。けれど、君が言っているのはそう言う事じゃないだろう?」

「まあな。研修の時に言われたけど、わざわざ俺たちに付け焼刃の警護技術を学ばせて、警護をさせているぐらいだし、俺たちに警護をさせるだけの裏は間違いなくあると思ってる」

 思い出すのは、研修初日にソルナと話した会話の内容。

 俺たちは敵を誘い出すための囮であると言う暗に示された言葉。

 だが俺たちに出来ることはない。

 俺たちがここで与えられた任務から逸脱した行動を取れば、高い確率で塔長会議が密かに進めていた事柄に対してマイナスの影響が発生するからだ。


「と言うか、これで裏が無かったら、僕ら全員とんだ道化だよね……」

「それはまあ……そうだが」

 後、何かしらの裏は有ると思っているが、その裏を確信できるような何かは無いので、この期に及んで俺たちの勘違い、気にし過ぎと言う可能性も有るんだよなぁ……。

 と言うか、もし本当にそうだったら、俺もソルナも、裏を勘ぐって動いていた人間は全員笑い者なので、そう言う意味でも無闇に動くべきではないと思う。

 うん、これで計画立案者がイヴ・リブラ博士だったら、確実に裏が有るって分かるんだけどな。


「いずれにしても、今は待つしかない……か」

「あの建物の中で、君に関する諸々がバラされていないと良いね」

「うぐっ……」

 で、結局話はそこに戻って来るらしい。

 くそう……。

09/06誤字訂正

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