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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第4章【威風堂々なる前後】
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第195話「警護任務-14」

 その後、研修が始まる前にロノヲニトは名目上の製造元であるダイオークス中央塔大学の教授を呼び出して一時預ける事になった。

 とりあえず一般的に話題にして欲しくない事が分かる程度にはなって貰わないとな。うん。


「よし、全員揃っているようだな。それでは今日の研修を始める」

 で、講師がやって来て本日の研修が始まる事になったのだが……トトリたちは来なかった。

 講師への連絡が済んでいる辺りからして、どうやら休むつもりらしい。

 原因は……まあ、考えるまでもない。

 たぶん、昨日の疲れが取れていないんだろう。


「ハル。僕が言う事でもないと思うけど、次からは多少後のことも考えなよ。外勤部隊に所属する者としていざという時に動けないのは問題だから」

「あー……うん。次からは気を付ける」

 と、トトリたちが来れない原因について考えていたら、隣に居るソルナから気を付ける様に言われてしまった。

 まあ、昨日については俺自身やり過ぎたと言う自覚もあるし、今後はトトリたちが水着とかを着ても、興奮し過ぎないように気を付けないとな。

 我を失って困るのは俺では無く、トトリたちなのだから。


「まずは座学からだ」

 いずれにしても、今俺に出来るのは研修を真面目に受ける事だけである。

 そんなわけで俺は背筋を正すと、意識を切り替えて研修を受け始めた。


-----------


「であるから……」

 さて、本日の研修内容だが、前に言っていたように、護衛役としての体術を学ぶことである。

 ただ当然の話ではあるが、俺もソルナたちも本来の職務は外勤部隊であり、その力を振るう主な相手は人間では無く、ミアズマントである。

 よって、ミアズマントを相手にした戦い方ならば、俺以外は逆に講師に教えられるほどではあるが、人間を相手にした体術の心得となれば、知識の欠片も無いか、何処かで手に入れたちょっとした知識と言うある意味で一番危ないレベルの知識だけである。


「と言うわけだ」

「なるほどね。まず第一に優先するべきは敵を倒す事でも、仲間を助ける事でもない。護衛対象を確実に守り、安全を確保する事と言う事か」

 と言うわけで、まずは護衛役としての心得も含めた座学による研修である。

 うん、間違った知識を排除し、正しい知識を入れるのは護衛の成功率を高める上でも、絶対に必要な事だよな。

 ちなみに、護衛役としては最低でも警護対象の活動範囲内の地形と、複数の逃走経路の把握、それらの地形の何処の危険度が高いのかの調査ぐらいは事前にしておくべきだそうだ。

 まあ、今日は体術の研修なので、知識として放り込んでおくだけだが。


「ただ、実戦でこれらの心得を実行しようと思ったら、生半可な胆力じゃ無理だろうな……」

「まあそうだろうね。普通の人……と言うか生物なら、家族のようによほど親しい相手を守る時でもない限りは、他人よりも自分を優先してしまうし、そもそも攻撃自体を避けようとしてしまうだろうしね」

「だよなー」

 が、当然ながら知識と言う物は、頭の中に放り込んだだけでは何の役にも立たない物である。

 知識を生かすには、何かしらの形で外部に出力する必要が有るのである。


「さて、それでは次は実技に移るぞ。こっちだ」

 そして、知識と言う物をより正確に、より確実に実行するためには、その知識を用いた行動を行う訓練が必要になる。

 と言うわけで、研修は座学から実技に移行する。


----------


「よっと」

「おっと」

「よーし、いいぞー」

 さて、体術の実技だが、流石に最初から不意に放たれた相手の攻撃を受け止めると言うのは難度が高すぎる。

 そのため、まずは講師が模範の演技を行い、その後、二人一組になって、お互いにゆっくりと相手を拘束するための技をかけ合う事となった。

 なお、これが全くの素人だと、最初は受け身の練習からになるそうだが、そこはこの場に居るのが全員外勤部隊であり、受け身を取るのは下手な人間よりも遥かに上手いと言う事で、省略されている。


「じゃあ次は攻め手を交代してだ」

「「了解」」

 で、丁度隣にいたと言う事で俺と組むことになったのはソルナだった。


「じゃあ行くよ」

「分かった」

 ソルナが俺の方に向かって手を突き出してくる。

 対して、俺はソルナの腕を取ると、足を払い、ソルナを後ろ手に拘束する。

 うん、上手く出来た。

 出来たが……、


「どうしたんだい?ハル?」

「いや、どうにも妙な視線がな……」

 俺はソルナを拘束したまま、周囲を見回す。

 特に顔色を変えている人物や、こちらの事を窺っている人物はいない。

 が、妙な……最初この場に来た時とは比較にならないほど不穏で、しかも害意や殺意ではないが、嫌な想念を含んだ視線は感じる。

 さっきソルナに俺が拘束されている時にも、同じような視線を感じたんだよなぁ……どうなっているんだ?


「視線?うーん、視線はちょっと分からないなぁ……」

「うーん……まあ、こっちの事を邪魔する意図は無さそうだし、放置しておいても問題ないか」

「まあそうだね。今は研修に集中するべきだと思うよ。実際に身体を動かす以上は、油断してたら何が起きるか分かったものじゃないんだし」

「んー、それもそうだな」

 まあ、分からないものは分からないで放置するしかない。

 と言うわけで、俺とソルナは研修を続けるのだった。

09/02誤字訂正

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