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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第4章【威風堂々なる前後】

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第190話「警護任務-9」

「いやー、実に快適だ……」

 さて、研修四日目。

 本日と明日の二日間は休日扱いであり、俺たち第32小隊は他に客のいないプールで余暇を過ごしている。

 尤も、休日なのは表向きだけで、実際にはホテルの従業員たちが普段どのように働いているのかを観察するのに割り当てられている訳だが。


「本当だね。ハル君」

 俺は自分の右横に座るトトリに目を向ける。

 トトリは白を基調としたセパレートの水着を着用しており、俺と一緒にプールサイドでくつろいでいる。

 うん、“今の”トトリには良く似合っているな。


「ぷはぁ……うん。久しぶりだけどいい感じだね」

 少々の装飾が施されたビキニを着用したワンスがプールの中から顔を出す。

 うん、ワンスの活発なイメージにも合っていて、非常に良く似合っているな。

 後、ワンスには水泳の経験が有るんだな。

 この世界の環境を考えるとちょっと意外だ。


「ワンス様は泳げるんだね。いいなぁ……」

「まあ、31番塔には水練用の施設として一応プールがあるからね。何なら教えようか?」

「本当!?お願いします!」

 そんなワンスに声を掛けるセブは、自身がどう思われているのかをきちんと理解しているのか、可愛らしい女児用水着と浮き輪を身に着け、プールに浮かんでいた。

 うん、でも似合っているのは間違いない。

 それと、今のセブの発言からして、やっぱりこの世界じゃ泳げない方が一般的らしい。

 まあ、瘴液の性質以前に、普通に暮らしていたら泳ぐ機会そのものが無いし、仕方がない事なのかもな。


「ナイチェルとトトリはどうする?」

「うーん、私も折角だしちょっと泳ごうかな。元の世界だとあんまり泳ぐ機会は無かったんだよね」

「私は遠慮しておきます。この格好で、眼鏡も付けてますから」

 トトリがプールに向かう中、俺は自分の左手側を見る。

 そこに有るのは……うん、凶器だな。

 そう表現するのが一番正しい。

 いやまあ、実際にはナイチェルがスリングショットと呼ばれる水着を座っているだけなんだが……ナイチェルの体型でスリングショットはヤバい。

 と言うか眼鏡美人がスリングショットとか、これに反応しなかったらそれはそれで拙いと思うよ。うん。


「うーん、眼福眼福」

「ハル様に喜んでいただけているようで何よりです」

 なお、お前はもっとすごい姿を見ているのに、どうしてそんなに嬉しいんだと突っ込まれそうな気もするが、そこはこう言っておく。


 アレとこれとは別腹です。

 俺の中で触れる部分がまた違うのです。


 うん、これについてはたぶん納得してもらえると思う。


「あ、あのハル様……どうですか?」

「お、ミスリさ……!?」

 と、此処で一人水着を選ぶのに時間がかかっていたミスリさんがプールにやってくる。

 そして、その姿を見て俺は思わず絶句する。


「や、やっぱり変でしょうか……?」

「いえ、変ではありません。ありませんが……ミスリ様の個性が合わさって、ハル様には破壊力が大き過ぎたようです」

「……」

 ミスリさんが着ていたのは淡い色のワンピース水着であり、それ単体で見ればナイチェルの方がよっぽど破壊量が有る。

 だがまさか……ミスリさんのちょっと引いた感じと、少し屈みこみ、胸を寄せるような姿勢がワンピース水着に組み込まれると、此処までの破壊力を発揮するとは……。

 これはヤバい。

 ナイチェルとは別の意味でヤバい。

 主に俺の理性がヤバい。

 と、とりあえず俺自身が落ち着くために何かしらの声を掛けなければ。


「え、えーと、ミスリさん。良く似合ってる……よ」

「はいっ!ありがとうございます!」

「!?」

「こ、これは強敵ですね……」

 若干照れつつ俺が発した声に、ミスリさんは満面の笑顔で返してくる。

 うん、(ある意味)状況は悪化した。

 心なしかナイチェルの声も震えているような感じがする。


「やっぱりこういう時には胸の大きい方が有利なのかなぁ……」

「まあ、好みは人それぞれと言っても、大きい方が目を惹くのは事実だしねぇ……」

「いいじゃないですか。僕に比べたら二人はまだあるんだし……」

 後、プールの中から若干負の念が混ざっている呟きも聞こえてくるが、そちらについては敢えて気にしないでおく。

 避けられる地雷は踏まないでおくべきだ。


「と、ミスリさん。それでシーザさんは?」

 さて、これで26番塔外勤部隊第32小隊の面々はシーザさんとロノヲニトの二人を除いて、全員このプールに集まったことになる。

 そして、事前の予約状況を確認した限りでは、今日一日は第32小隊以外にこのプールを使う予定はなく、現に今も、俺たちを除けば他に居るのは、万が一の事態に備えたホテル側の監視員であろう男女が合わせて数人居るだけである。


「えと、お姉ちゃんなんですけど……」

 で、まだこちらに来ていないシーザさんの様子をミスリさんに訊いてみたんだが……その表情は昏い。


「もしかしなくてもまたか?」

「はい。またです」

「「はぁ……」」

 どうやら、シーザさんとロノヲニトの仲は未だに改善しきれていないらしい。

 いや本当に、あの二人の関係はどうしたらいいんだろうなぁ……。


「待たせたな」

「これで全員集合だな」

「あ、おね……!?」

「「「!?」」」

 と、ここで件の二人……水着姿のシーザさんと、普段通りの姿であるロノヲニトがやってくる。

 そして、シーザさんの格好を見て、俺たちは揃いも揃って目を見開かずにはいられなかった。

 と言うのも、シーザさんが身に着けていたのは……、


「お、おね……」

「ん?どうしたミスリ?」

「ロノヲニト……」

「いや、我は止めた」

 最小限の部分しか守っていないビキニ……所謂マイクロビキニだったからである。

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