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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第4章【威風堂々なる前後】

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第186話「警護任務-5」

 翌日。

 俺たちは予定通りに、5番塔第51層にやってきていた。


「はぁ……凄いね」

「だなぁ……」

「ほう……」

「まあ、ここを初めて見た奴はだいたいそんな反応だろうね」

 そして、駅とエレベーターホールがまとめられた空間から、ホテルのフロント部分に出た俺、トトリ、ロノヲニトの三人が漏らしたのは、感嘆の溜め息と言葉だった。

 だが、そんな言葉を漏らしてしまうのも仕方がない事だろう。


「一層丸ごとホテルだとは聞いていたが、まさかここまでとはな……」

「凄く高級そうな感じ……」

 なにせ、素人目で見ても、普通の家庭が家族旅行で使うようなレベルの宿では無く、高級感と言うか、威厳のような物が漂っているのが感じ取れるようなレベルなのだから。

 と言うか、実際問題として、あの壁に飾ってある絵とか、あの単体で飾られている壺とか、どれだけ高価な物なんだろうな?

 万が一壊したりしたら……うん、恐ろしい。


「26番塔外勤部隊第32小隊の皆様ですね」

「その通りだ」

「そうです」

 と、ここでホテルの人が俺たちの元にやってきたので、シーザさんとナイチェルの二人が前に出て、対応を始める。

 まあ、此処は二人に任せておけば問題はないな。

 で、研修は一度ホテルの部屋に荷物を置いて来てからと聞いているし……今の内にちょっと疑問を解消しておくか。


「セブ、ワンス。ちょっといいか?」

「ハル様何ですか?」

「何だい?ハル」

 俺は小声でセブとワンスに話しかける。


「ちょっと疑問なんだが、どうして5番塔にこんな良いホテルが有るんだ?交通の便を見れば、22番塔の方がよっぽどホテルを置くには良いと思うんだが……」

「あ、それは私も疑問に思ってた。どうしてなの?」

「あー、理由を知らないと、疑問に思いますよね。そりゃあ」

 どうやらトトリも俺と同じ疑問を抱いていたらしい。

 だが、この疑問を抱くのは、セブの言うとおり、当然の話とも言える。

 と言うのも、5番塔から直接電車で繋がっているのは中央塔、22番塔の他には1番塔から8番塔と言う、娯楽よりも生産を重視している七塔だけであり、17番塔第51層のショッピングモールのような娯楽や観光に関わりがある場所とはどこも直接通じていないのである。


「で、理由は?」

「5番塔にホテルが有る理由は、簡単にまとめてしまえば、警備の問題ですね」

 警備の問題?

 俺の新たな疑問が顔に出ていたのだろう。

 セブとワンスの二人による説明が続く。


「まず、このホテルに泊まるのは、ダイオークスの中の人では無く、ダイオークスの外の人……それも、他の都市の政府要人と言った、万が一の事態が絶対に起きてはいけない人たちが殆どなんです」

「で、その万が一を防ぐための手法の一つとして、普段使うための出入り口をこうやって一か所にまとめることによって、怪しい人間が入る事を難しくしているんだよ」

「なるほど。言われてみれば確かに」

 俺は二人の言葉を受けて、先程通ったばかりの駅とホテル部分を分ける境界に目をやる。

 するとそこには常に複数人の警備員が立っている上に、監視カメラが死角が出来る限り生じないよう何台も設置されていた。

 二人の言葉が正しければ、基本的にこのホテルに外部から入るための道はここ一つ。

 となれば、必然不審者もここを通らざるを得ず、そうなれば警備員によって取り押さえられる。と。

 ただこれなら5番塔でなくてもいいような?


「ただ、この出入り口を制限すると言う方法を使うにしても、17番塔のショッピングモールのように、人が多すぎると捌き切れなくなってしまいます」

「そうでなくとも、22番塔には空港と言う重要設備があるから、警備に割ける人員が限られるしね」

「あ、なるほど」

 と思っていたら、やはり22番塔では駄目な理由が有ったらしい。

 なるほど。万が一すら許されないなら、人手不足に陥る可能性が有るのはよろしくないよな。うん。


「おまけに、このホテルに泊まるのはさっきも言ったように、その大半が要人。となれば、娯楽施設、商業施設に行く必要はそんなに無いんだよ」

「そして、移動の距離が長くなったり、無闇に乗り換える回数を増やすのも確実な警備という意味では、あまりよくない事です」

「で、そこら辺の兼ね合い……と言うか、妥協の結果として、空港が有る22番塔と、ダイオークスの中枢である中央塔の間に在る5番塔の第51層にホテルが作られるようになったらしいね」

「へー……」

 で、それ以外にも色々な理由……と言うか損得勘定が絡まり合った結果として5番塔にこんな高級ホテルが建てられるようになったらしい。

 うーん、まあ、理由を聞いてみれば、納得も出来るかな。


「さて、ハルの疑問も解消出来た所で、そろそろアタシたちも行かないといけないみたいだね」

「あ、本当だ」

 見れば、シーザさんが手振りだけで俺たちを自分の元に招き寄せていた。

 ホテルの従業員さんと思しき人が周囲に居ない辺りからして、俺たちだけで話し合って決めるべき何かが有るらしい。


「じゃ、行きましょうか。ハル様、トトリ様」

「だな」

 と言うわけで俺たちはゆっくりと、シーザさんたちの方に近づいて行った。

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