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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第4章【威風堂々なる前後】

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第185話「警護任務-4」

「ハル様!近親相姦はご法度ですよ!」

「それ以前に、機械が相手ってのは流石に引くよ……」

「ハル様がやらしい目つきでロノヲニトを見ている事には気づいていましたが……」

「ボソッ……(此処にもライバルが居たなんて……)」

「いや待て、そこで何故俺に注意が来る!?」

 セブの叫びと同時に、凍り付いた時間が再び動き出す。

 だが、セブたちから発せられた言葉は、何故かロノヲニトでは無く、俺に対して向けられる。


「いやだって、ロノヲニトよりもハルの方が強いんだから、ハルが本気で拒否すれば、ロノヲニトにはどうする事も出来ないだろう?」

「……」

「ハル様って自分に対して好意を持っている相手が望んだら、割と簡単にホイホイされちゃうじゃないですか」

「……」

「私の指摘した件については事実だと思いますが?」

「……」

「ボソッ……(やっぱりもっと積極的に行かなくちゃダメなのかなぁ……)」

「…………」

 で、その事を疑問に思っていたら、ぐうの音も出ない程の集中砲火が飛んできた。

 くそう、まさかそんな風に皆から思われていたとは……。

 しかも、どの指摘も割と事実だから、反撃のしようが無……ハッ!?

 俺はあまりにも突拍子の無いロノヲニトの発言のために、思わず頭の中から吹っ飛んでいたとある事実を思い出す。


「いや待て!そもそも今の発言はロノヲニトが自分の意思で言ったものじゃなくて、トトリが安全装置を使って言わせた物じゃないのか!?」

「あ、ようやく気付いたんだ」

 そして、その事実をトトリに指摘したところ、トトリは笑ってその事実を認めた。

 ふぅ……危ない危ない。

 危うく、俺は近親相姦の上に機械を相手にするという、変態的な性癖を持っていると認識されるところだった。


「トトリイイィィ……」

 で、流石にこれはきっちりとトトリの事を問い質すべきであると俺は判断し、トトリの笑顔に俺は軽く声を低くして応えつつ、トトリに向かって一歩踏み込む。


「えーとね、その……、一応、ロノヲニトが今している行動をキャンセルして私が望んだ行動を割り込みでさせられるのかって言うテストだったんだよ。ハル君」

「だからと言って、言わせていい事と、言わせちゃいけない事が有るだろうが」

 トトリは俺と目を合わそうとしない。

 どうやら、俺が発している威圧感に気圧されているらしい。


「うっ……ごめんなさい……」

「ん」

 と、威圧感に耐え切れなくなったのか、トトリが頭を下げ、それに合わせて俺も発していた威圧感を止める。

 周囲から俺のことを非難するような目は……流石に今回はほぼ来ていないか。

 まあ、どう考えても今回はトトリが悪いしな。


「さて、安全装置の性能テストも出来たでやんすし、あっしはそろそろ帰らせてもらうでやんすよ。じゃ、これから仲良く……」

「待て。少し聞きたい事が有る」

 やがて、空気が落ち着いたところで、ライさんが帰ろうとする。

 しかし、ライさんが部屋の外に出る直前に、シーザさんがライさんに声を掛ける。

 シーザさんの表情は硬い。


「何すか?安全装置なら、第32小隊に渡すのはあの三つだけっすよ」

「それはどうでもいい。ミスリとナイチェルの二人が持っているのだけでも、十分だろうしな」

「じゃあ何すか?」

「ロノヲニトの正体……と言うより、こいつが吠竜の中身だった事については、どの程度の人間が知っている?それと、万が一ロノヲニトが暴れた場合にはどこまでの対応が許されている?」

「ああ、その件っすか」

 だが、シーザさんが尋ねた内容そのものはマトモなものだった。

 どうやら、頭は十分に冷えているらしい。


「後でロノヲニト本人から説明してもらう予定だったんすけど……まあ、あっしが話しても構わないっすね」

「いいから早く話せ」

「まず、どの程度の人間が事実を知っているのかっすけど……」

 で、ライさんの説明によれば、ロノヲニトが吠竜の本体である事を知っている人間はやはり限られた存在らしい。

 具体的には、


・各塔の塔長

・ダイオークス中央塔大学の一部教授とその助手

・各塔の塔長の側近または、塔長が無闇に口外しないと信頼して話した人間


 との事だった。

 なお、26番塔の場合は、塔長、塔長の側近数名、治安維持部や工業部門の総責任者と言った塔の運営上重役として扱われる人間、それに外勤部隊の第1小隊、第2小隊、第3小隊、第32小隊(俺たち)だけとの事。


「で、事実を知らない人間には、中央塔大学が採算性度外視で作り上げた最新鋭ガイノイド。と言う事になっているでやんすから、そのつもりでよろしくっす」

「なるほど」

 と、ここでシーザさんが何故か俺の方を向く。

 その目はまるで俺を憐れんでいるようだった。

 訳が分からん。

 何故ここでそんな目を俺に向ける必要が有るんだ?


「それでもう一つの質問っすけど、取り押さえられるレベルなら取り押さえる様にとの事っす」

「つまり、取り押さえるのが不可能だと判断されるような事態になれば……やってもいいんだな」

「まあ、そう言う事っすね」

 で、暴走した際の対応については、普通の犯罪者を相手にする時と同じっぽいな。

 優先されるべきは周囲と取り押さえる側の命であり、犯人の命ではないと言うあれだ。

 まあ、ロノヲニトの場合、ガイノイドの肉体の方には何重にも安全対策が施されているのだから、そこまでの事態に陥る事は無いと思うが。


「きゅっきゅっきゅー、じゃ、仲良くするんすよー」

 そうして、話が終わったと言う事で、ライさんは部屋の外に出て行った。


「うん。これからよろしく頼むぞ。ハルハノイ。それにニルゲ(人間)たちよ」

「ああ、よろしく頼むぞ。ロノヲニト」

「「「…………」」」

 ロノヲニトとシーザさんが笑顔で握手を交わす。

 とりあえず、明日からの研修は、一波乱どころでは済まなさそうだな……。

 握手を交わす二人の顔を見てそう思ったのは、きっと俺だけではないだろう。

08/24誤字訂正

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