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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第3章【不抜なる下】

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第161話「M3-2」

 セブの操るキャリアーは、第1層回廊とNWWゲートを経由してダイオークスの外に出る。

 するとそこには複数のキャリアーが停車しており、NWWゲートの横でトトリと『テンテスツ』を降ろした俺たちは、その停車しているキャリアーの列に習う形で停車する。


「指定された場所には着いたけど……ここからはどうすればいいんだろ?」

「どうやら担当の人間が各キャリアーを回って、配置を指示しているようだな」

「ならしばらくは待つしかなさそうだね」

 で、どうやらこの集合場所で各小隊ごとに指示を受けて、それぞれの配置につくらしく、各小隊のキャリアーの間を防護服を着た人間がせわしなく駆け回り、何かを話している姿が見えた。

 どうやら、あの人物が指示係らしいな。

 あの人物と話し合った後にキャリアーが移動したり、瘴巨人と歩哨、キャリアーに分かれて行動を始めているようだしな。


『あー、あー、こちらは『吠竜撃退作戦』の隊員振り分け官・26番塔担当である。そちらの所属と搭乗者、搭乗者の種別は?』

「こちらは26番塔外勤部隊第32小隊。搭乗者は、隊長兼歩哨のシーザ・タクトスに、歩哨のワンス・バルバロ、歩哨……?こほん、歩哨のハル・ハノイ、運転手のセブ・アルマストロイの計四名です」

 と、俺たちの番がやって来たのか、無線機から見知らぬ男性の声……恐らくは先程から駆け回っている担当官のものと思しき声が聞こえてくる。

 ところでセブ。

 どうして俺の事を歩哨と言う時に一度言い直した。

 確かに【堅牢なる左】などの能力のおかげで俺の戦闘能力は瘴巨人と同等か、それ以上の物になっているが、それでも役職上は歩哨だぞ。

 おいこら、そこで目を逸らすなし。


『第32小隊……ああこれか。トトリ・ユキトビと『テンテスツ』についてはNWWゲート管理局か?』

「はい。通達通りに、NWWゲートの脇で降ろしました」

『分かった。ならば、第32小隊の次の任務を通達する』

「「「了解」」」

 俺がセブの事を睨み付けている間にも、こちら側と担当官との間の話は進んでいく。


『まずハル・ハノイについては、この場で下車したら直進。現場総指揮官であるオルガ・コンダクト様が直接指揮している部隊に合流。以後の指示についてはオルガ・コンダクト様の指示に従うように』

「了解」

 ふむ。俺は皆とは別行動か。

 たぶん、持っている能力の関係なんだろうな。


『残りの三名。シーザ・タクトス、ワンス・バルバロ、セブ・アルマストロイについては、まず後方に移動して今回の作戦用に作られた武器を受領するように。その後については、武器を受領した場所で次の指示を受け、その指示に従って行動するように』

「「「了解」」」

 で、残りの三人は武器を受け取ってから行動か。

 恐らくは以前聞いた対竜級ミアズマント用の大型兵器とか言う奴だろう。

 しかしそうなると……なんとなく俺が配置される部隊の役割が見えてくるな。

 まあ、オルガさんに確認を取らないと、確定には出来ないけれど。


「じゃ、俺は俺で行ってくる」

 と言うわけで、状況も状況なので、俺は指示通りに移動するべくキャリアーのエアロックに向かう。


「ハル様気を付けてくださいね」

「アタシたちも頑張るから、無茶はしないでおくれよ」

「ああ、分かってる。皆も気を付けろよ」

 そして俺はセブとワンスの二人と一言ずつ交わして、キャリアーを降りると、担当官さんの指示に従って、オルガさんが居ると言う部隊に向かって走り出す。

 うん。今日も瘴気が濃くて、視界が悪いな。

 この分だと、吠竜の足元から頭の方を見上げたら、頭が見えないなんてこともありそうだ。


「ここか」

「来たかハル・ハノイ」

 キャリアーを降りてから数分後。

 ダイオークス周辺の建物が無いエリアと、旧市街に当たるエリアの境界にやってきた俺の視界に多数の瘴巨人の姿と、防護服を着たレッドさんの姿が見えてくる。


「こっちだ。付いて来い」

「分かりました」

 俺はレッドさんの後を付いて歩く。

 さて、どうやらオルガさんが直接指揮するこの部隊にはレッドさんと俺以外で歩哨に属している人は居ないらしく、防御用の陣地のような物を構築している人員も含めて、全員が全員瘴巨人に搭乗していた。

 ただ、この場に集まっている瘴巨人の中には何機か26番塔で見かけた瘴巨人も居たが、半分以上は一度も見た事が無い瘴巨人であり、見た事のある瘴巨人にしても、サルモさんやダスパさんのように知り合いと呼べるような人の瘴巨人は無かった。


「ハル。今の状況については何処まで知っている?」

「吠竜がこちらに向かって来ている事と、26番塔だけでなく25番塔と27番塔も迎撃体勢に協力している事は聞いています」

「つまり、何処に吠竜が居るかや、吠竜の能力、弱点などについては聞いていないんだな」

 レッドさんの言葉に俺は素直に頷く。


「と言いますか、その辺りの説明についてはこれからすると言う事で良いんですよね」

「ああそうだ。俺たちの方で、ワザと出さないようにしておいた。吠竜に関する詳しい情報を出している暇があるなら、配置を完了させる方を優先するようにしておいたんだが、どうやらきちんとその通りにしてくれたらしいな」

 そうやってレッドさんと会話をしながら瘴巨人の間を抜けていくと、やがてこの瘴巨人ばかりの部隊の中で、唯一明確に搭乗者までわかる瘴巨人……つまりはオルガさんが乗った瘴巨人が見えてくる。


「来たか。レッドにハル」

「はい。これで全員揃いました」

「では、作戦の説明を始めるとしよう」

 そして俺とレッドさんは列の一番前で己の存在を誇示するように、オルガさんに向けて敬礼をした。

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