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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第3章【不抜なる下】
144/343

第144話「シェルター-11」

「ハル・ハノイ。貴様はいったい何を考えているんだろうなぁ……」

「……」

 翌朝。

 俺はコンクリートの床の上に直接正座させられた上に、シーザさんの鋭い視線による威圧を受けていた。

 どうしてこうなったのかについてはわざわざ言うまでもない。

 昨日の俺とトゥリエ教授の行動が原因だ。


「え、えーと、誘ったのはトゥリエの方からだと言いますし……」

「ニース・ペーパー」

「はい」

「少し黙ってろ」

「はい……」

 幸いな事に、どうしてそう言う状況に至ったのかと言う、原因の部分については誰も忘れてはおらず、俺から襲ったと言う疑いや、完全に任務に関係しない行動であると思われることは無かった。

 逆に言えば、『Halhanoy3.txt』に関する記憶や、USBメモリ本体などはしっかりと消えていたわけだが。

 ついでに言えば、今の状況においてはそんな事実はまるで助けにならないわけだが。


「任務中に不純異性交遊。それも『テトロイド』と言う他の都市の御膝元でだ。どういう理由があるにしても、これが失態でなければ何が失態なんだろうな」

「……」

 シーザさんの発する威圧感が若干増大する。

 なお、現在トゥリエ教授はトトリの目論み通り……と言っていいかは分からないが、足腰が立たなくなっている。

 そうなるようにした俺が言う事でもないが。


「任務中と言う事で、処分については一先ず保留にしておいてやる。帰り道に何が有るかは分からないからな」

「はい」

「で、向こうから誘って来たと言う事情は考慮してやるが、それでも帰ったら減給と始末書程度は覚悟しておけ」

「はい……」

 どうやら一先ずは何も無いらしい。

 ただ帰ったらそれ相応の処罰はありそうだな……シーザさんの目に込められている怒りの感情が凄まじい事になってる。


「話は終わったかい?」

「一応な。そっちの方はどうだ?」

「処理ならほぼ終わったよ」

 と、ここでワンスが俺たちのキャリアーから降りて来て、シーザさんに声を掛ける。

 処理と言うのは……はい。言うまでも無くそう言う事です。ごめんなさい。


「で、確認なんだけど、今日一日はここに留まるんだよね」

「ああ。論文を始めとした各種データのコピーとその確認。それから、どうにも五つもあるチップについてダイオークスと『テトロイド』の上の方で扱いについて話し合っているようでな。その辺りの結果待ちで、今日は一日帰り道の準備に費やすと思ってくれていい。と言っても、キャリアーや瘴巨人と言った各種装備に破損が無いかを調べる程度だろうがな」

「了解」

 で、正座したままワンスとシーザさんの話を聞いていたのだが、どうにも今日は特にやる事は無いらしい。

 それにしてもチップについての話し合いってどういう事だ?

 とりあえず、チップと言うのが、昨日シェルターの中で発見したチップらしきものだと言う事は分かるけど。


「じゃあそう言う事なら……」

「そうだな。その方が良いだろう」

 ワンスとシーザさんの二人が俺の方に顔を向けてくる。

 ん?なんだ?


「ただそれなら、キャリアーに積んである高感度カメラを持って行け。アレが無いと見えないだろう」

「そうだね。そうさせてもらうよ」

「んん?」

「では、気を付けて行くように」

「了解」

 俺が二人の意図に気づかない内に、シーザさんは第3小隊のキャリアーに向かって行ってしまう。

 えーと、とりあえず反省タイムは終わりって事で良いのか?


「ハル」

「ああうん」

 ワンスが手を伸ばしてきたので、俺はワンスの手を掴み、若干痺れている感じもある両足をゆっくり伸ばしながら立ち上がる。


「さてと。ハル、一つ聞きたい事が有るんだけどいいかい?」

「なんだ?」

「ハルは昨日の夜、三つ目のUSBメモリを見た。と言う事は、今までの流れからして【堅牢なる左】【苛烈なる右】に続くような何かが使えるようになっている。と言う事でいいんだよね」

「ああ、それか。ちょっと待ってくれ……」

 俺はワンスの質問に正確に答えるために、一度目を閉じ、自分の中に向けて意識を集中させる。

 うん。あるな。間違いなくある。

 【堅牢なる左】とも【苛烈なる右】とも違う何かが確かに俺の中にある。


「それは今すぐに使えそうな物かい?」

「あー……ちょっと待ってくれ」

 俺の表情から答えを察したのか、ワンスが次の質問を発してくる。

 これがこの場で使えるかどうか……か。

 うーん……。


「今すぐ使うのは……止めた方が良さそうな気がする。初めてでサイズの調整が効くかどうかわからないし、制御が問題なく出来るかどうかも分からないしな」

「なるほど。そうなると、発動そのものは問題なく出来そうな感じなんだね」

「ああ。発動については問題なさそうだ」

 今までの経験があるためなのか、新しい何かを発動させること自体は問題なくできそうだった。

 が、現状でも漠然と伝わってくる発動後のイメージからして……このままこの場で使うのは拙い気がした。

 と言うか、この場で発動したら、絶対に勢い余って何かを壊すと思う。


「ふうん。それならハル。どうせ今日はこの拠点に留まるらしいし、一度外に出て、新しい力を試してみようか。どういう力なのか分かっていた方が、アタシたちとしても楽だしね」

 どうやら、先程の会話はこういう事だったらしい。

 でもまあ確かに、折角空き時間が出来たのならば、有効活用するべきか。


「分かった。じゃあ行こうか」

 そうして、俺とワンスの二人は必要な準備を整えると、拠点の外に出るのだった。

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