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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第3章【不抜なる下】

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第139話「シェルター-6」

「「「!?」」」

「っつ!?」

 俺が隙間に短剣を挿し込んだ瞬間、エアロック全体に下から突き上げるような衝撃が襲い掛かってくる。


「何が起きた!?いや、何が起きる!?」

「分かりません!なので全員警戒を!」

 衝撃は断続的に何度も伝わってくる。

 そして、心なしか衝撃の発生している場所は徐々にこちらに……いや、シェルターの中に近づいて来ている感じがした。


「シェルターが……」

「何だいこりゃあ……」

 その事に気づいた俺たちは視線をシェルターの中に続く扉の一点、シェルターの中を観察する事が出来る覗き窓へと向ける。

 だが、覗き窓から見えるシェルターの中は黒く塗りつぶされ、既に僅かな光すら存在しない暗黒と化していた。


「止まった……」

「ハル君……」

「シェルターの中を確認してみよう」

 やがて断続的に続いていた衝撃が止まる。

 どのような変化が起きたのかは分からない。

 が、シェルターの中で何かしらの変化が起きた事だけは間違いなかった。

 そのため、俺は皆に体勢を整えさせた上でシェルターに続く扉をゆっくりと開ける。


「階段……?」

「前回と同じ……かな?」

「そんな馬鹿な……」

 扉の先には、前回……トトリの居たシェルターの時と同じように、微かな灯りによって足場の部分だけ照らし出された階段が有った。

 『テトロイド』側の調査では存在しないとされていた地下に向かってである。


「降りてみよう」

「うん」

 俺を先頭として、俺たちは地下に向かう階段をゆっくりと下り始める。


「ふむ。此処まで来ると(オーバー)科学(テクノロジー)喪失(ロスト)科学(テクノロジー)と言うよりは、ハルたちの出自と合わせて異界(アザーズ)科学(テクノロジー)とでも呼んだ方が良さそうな感じじゃな」

 階段を下る中で、時折壁や階段へ、防護服越しに手や角を当てて何かを調べていた様子だったトゥリエ教授が不意にそんな事を言う。


「異界科学って……」

「この壁も床も、この世界の物とは明らかに違う技術体系でもって作られているのじゃ。そして、この施設を作った人間は、恐らくハルたちをこの世界に送り込んだ人物。となれば、異世界の技術を用いて作られていても何もおかしくないのじゃ」

「まあ、それについては納得するね」

「そうなると、その時代に存在しているのがおかしい技術と言う意味では、異界科学も超科学と喪失科学も共通の物になるのじゃ。じゃが、超科学と喪失科学と言う物は、基本的には同一時間軸上に存在している世界の技術に対して用いるべき言葉であり、異世界から齎されたばかりの技術に対して用いるべきではないのじゃ」

「それで、異界科学……ですか」

「うむ。尤も、異界科学と言っても、こうして違う世界でも成立すると言う事はじゃな……」

「すみません。トゥリエ教授。もう下に着いたみたいです」

「む……これからが肝心じゃと言うのに……」

 で、どれほど下った頃だろうか?

 トゥリエ教授の異界科学に関する説明の為に、上から此処までの正確な距離は分からないが、とにかく俺たちは階段の一番下、前回と全く同じように家具とアタッシュケースだけが置かれた部屋に到達する。


「全く同じだね」

「瓜二つなんてものじゃないね」

「そう言えば、二人はハルと一緒に前回の調査に参加していたか」

 部屋の中は相変わらずだった。

 空っぽの本棚も、執務机の位置も、その上に置かれているアタッシュケースも、それどころか壁紙や扉の位置、その他諸々全てが前回訪れた部屋と同じだった。

 それこそ、パソコンのコピー&ペーストのように、元となる部屋をそのまま映し取ったかのようだった。

 いや、もしかしたら、こんな事を可能にする技術こそが、トゥリエ教授が言う所の異界科学なのかもな。


「それで何処から調べるのじゃ?あのあからさまに怪しいアタッシュケースからか?」

「それは流石に……」

「いや、前の部屋と同じなら、この部屋に在る手がかりはあのアタッシュケースだけなんで、とっとと調べてこの部屋から出てしまった方が良いと思います。あ、全員、念のために瘴気対策は万全にしておいてください」

 トゥリエ教授の言葉に『テトロイド』の人が反論しようとするが、俺はその反論を制するとアタッシュケースに近づき、置かれている時点では見えていないアタッシュケースの下側が見えるように持ち上げる。


「ん?」

 俺はどうせ今回も人をおちょくるような文章がアタッシュケースに書かれていると思っていた。

 思っていたのだが……


「『Halhanoy(ハルハノイは) does not(五つの) belong(王国論に) to the (属していない)five kingdom theory.』?なんだこりゃ?」

「「「?」」」

「ふむ?」

 今回アタッシュケースに赤いペンキのような物で書かれていたのはまるで意味の分からない文章だった。


「トトリ。俺の訳は別に間違ってないよな」

「うん。私が訳しても同じ訳になるよ。でも、これだと意味が通じない……よね」

「だよなぁ……」

「「「??」」」

 俺はトトリにもこの文章の訳を求める。

 が、トトリも俺と同じ訳に至ったようで、首をかしげている。

 そして、一切この文章の意味が分からないワンスたちに至っては、俺とトトリ以上に困惑していた。


「あー、ハル。トトリ。とりあえず、中を見てみたらどうだい?話はそれからでも遅くないだろ?」

「それもそうだな」

「そうだね。それでいいかも」

 分からない物に対して何時までも悩んでいても仕方がない。

 ワンスの言葉でそう判断した俺は、アタッシュケースを床に置くと、中を改めることにした。

勿論誤訳です。

高校生じゃあ、興味が有って調べてない限りは、五界説の英訳なんて知らんよねー


07/09ルビ振り直し

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