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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第3章【不抜なる下】

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第138話「シェルター-5」

「これで全部か」

「のようだな」

 結局、チップのような代物については全部で五つ。

 全て照明裏から見つかった。

 見つかったのだが……


「で、これどうしようか?」

「思わず逃げてしまいましたね」

 俺たちは揃ってエアロックの扉についている厚いガラス窓を見る。

 するとそこには瘴気に満たされたシェルター(・・・・・)内の光景が映っていた。


「この上なくたちの悪い仕掛けなのじゃ」

「何と言うか、仕掛けた奴の性格の悪さがにじみ出ているね」

「まあ、何となく分かってはいた事だけどね」

 あー、どうして瘴気が入ってこないはずのシェルター内に瘴気が充満しているかのか?

 その答えは非常に単純な物である。

 と言うのも、


「まさか全てのチップを取ると、照明裏のスペースから瘴気が噴き出してくる仕掛けが有るとはな……本当に性格が悪い」

「「「……」」」

 何者か……恐らくは例の俺たちをこの世界を飛ばした奴による罠が仕掛けてあり、その罠を俺たちが見事に作動させてしまったからである。

 事前に全員が防護服をしっかりと着用しておいたから、特に問題は起こらなかったものの、もしも防護服を付けていない人物が居たら、確実にその人物は死んでいると言う罠に、俺たちはそろって溜め息を吐くと同時に、仕掛けた存在のタチの悪さに頷き合う。


「えーと、『ダイオークス』の皆様。それでこの後はどうしましょうか?」

 まあ、発動してしまった物はしょうがない。

 と言うわけで、今後について話し合う事としよう。


「そうじゃな……チップについては、吾輩たちのキャリアーに持って行き、最低限の調査だけでも終わらせてしまうべきだと思うのじゃ」

「そうですね。それが良いでしょう。では、私が持って行きますので、『テトロイド』の方々の中からどなたか付いて来ていただけますか?」

「あ、では私が」

 まず、天井裏から回収したチップについてはニースさんがキャリアーの方に持って行くことになった。

 また、ニースさんに同行すると共に、中で何が有ったのかを伝えるために、『テトロイド』側の人員も一人ニースさんに付いて行く。

 貴重品の運搬をニースさん一人に任せてもいいのかと言う疑問は浮かぶが……まあ、ここがある程度整った拠点の中である事や、『テトロイド』との関係、ニースさんの実力を合せて考えれば大丈夫だろう。


「さて、シェルターの方だが、まずは中に溜まってしまった瘴気をどうにかするべきだな」

「瘴気の噴出自体は照明のパネルをもう一度填め込めば問題なさそうですよね」

「既に溜まってしまった瘴気自体は……エアロックの扉を開放したままにしておけば大丈夫そうだね」

「うむ。ここの脱瘴機構は問題なく動いているから、安心するのじゃ」

「じゃあ、早いところやりますか」

「そうですね」

「我々もお手伝いしましょう」

 次にシェルター内の瘴気を除去するべく、俺たちは外したパネルを元通りに填め込み、エアロックとシェルター本体を繋いでいる扉をしばらくの間、全開にしておく。

 このシェルターに備え付けられている脱瘴機構はかなり高性能な物らしいので、後は放置で大丈夫だろう。

 それにしても、『テトロイド』の二人も真面目な時はあのアイドル談義からは想像が出来ない程に真面目なんだな。

 まあ、この場に居ると言う事は『テトロイド』の外勤部隊に所属しているわけだし、そう考えれば、優秀なのも納得なんだが。


「さてと、それでハル。他に何処か怪しいところはありそうか?」

「そうですね……」

 やがて、シェルター内の瘴気が完全に消え去ったところで、シーザさんが俺に対して質問をしてくる。

 シーザさんの質問に対して、俺は怪しい物……特に短剣を挿し込めるような穴が何処かに無かったのかを思い出すと共に、まだ探していない場所が無いかを考えていく。


「エアロックですかね」

「分かった。行ってみよう」

「む。そう言えば、誰も調べていなかったのじゃ」

 そうして思いついたのは、エアロックの中だった。

 考えてみればあそこもシェルターの一部であるのに、俺には調べた覚えが無かった。

 そして、妙な事に俺以外のメンバーも全員エアロックの中については調べた事が無いようだった。


「さて、気を付けて探さないとね」

「うん。次は何が起きるか、分かったものじゃないもんね」

「まあ確かにな……」

 と言うわけで、罠に一応の注意をしつつ、俺たちはエアロックの中に戻ると、シェルター内に繋がる扉を閉め、何か無いかを調べ始める。

 その結果。


「ハル。これがそうじゃないかい?」

「ああ、そうみたいだな」

 ワンスがエアロック内に付いているランプの壁との接着面の間に妙な隙間を発見する。

 そして、その隙間を見た俺は直ぐに直感する。

 これは前回見つけた物と、同じ役割を持っている物だと。


「シーザさん。それと『テトロイド』の方のどちらかの方。すみませんが、外に居る人たちに窪地から上がっておくように言ってもらえますか?何が有るか分からないんで」

「えと……」

「分かった。直ぐに伝えてこよう」

「い、行ってきます!」

 俺は【苛烈なる(アサルト)(ライト)】を中指だけ起動し、鯨の装飾が付けられた短剣を呼び出す。

 なお、短剣だけならば、周囲に瘴気が無くても呼び出せるのは事前に確認済みである。

 で、本音を言えば今すぐにでも挿し込みたかったが……まずは何が起きてもいいように、外で作業している人たちへ避難するように伝えてもらう。


「伝えてきたぞ」

「避難。終わりました!」

「ありがとうございます」

 そして、避難が終わったと聞いたところで、俺は短剣を隙間に挿し込んだ。

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