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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第3章【不抜なる下】
123/343

第123話「新たな任務の前段階-3」

 翌日。


「では、物資の確保や向こうの情勢について調べておきますね」

「頑張るねー」

 ナイチェルとセブの二人は『テトロイド』の情勢に関する情報収集と、キャリアーで行くことになった場合に備えた物資確保の為に、それぞれが元々所属していた塔……17番塔と22番塔との繋がりを利用するべく行動を開始した。


「さて、まずは何処から当たるべきだろうな?」

「いっそ、トゥリエ教授を尋ねるべきかもね。専門らしいし」

 シーザさんとワンスの二人は、『テトロイド』周辺と、ダイオークス~『テトロイド』間に生息しているミアズマントに関する情報を集めるべく、外周十六塔と中央塔に在るデータベースを探り始めた。


「じゃあ、ハル君。ミスリさん。私たちも」

「そうだな」

「そうですね」

 そして、俺、トトリ、ミスリさんの三人も、『テトロイド』で何が有ってもいいように、今回の任務で必要な装備の検討をするべく、26番塔第11層に在るミスリさんのオフィスに向かうのだった。


「では、まずはトトリ様の方から始めましょうか」

「うん。よろしくね」

 で、何故こんな事をしているのかと言えば……うん。今回の依頼を出そうとしている中央塔の役人が信頼できないから。

 理由としてはただこれだけだ。

 でもなぁ……実際問題として、自分たちの要望を正確に伝えたいためだけに素人(トゥリエ教授)を調査隊に加えようとしたり、俺たちのクラスメイトに関する詳細な情報を出汁に使ったりしているからなぁ……これで信頼しろと言われてもねぇ。

 まあ、もしかしたら万全な計画……それこそ俺たち以外にも、ダスパさんたち第3小隊にも声を掛けて、複数の小隊で行動する計画とかを立ててくれているかもしれないが……うん。やっぱり信用出来ないし、期待もしてはいけないだろう。


「では、此処にこの金属を……」

「例のアレについては……」

 それにだ。

 向こうの計画がきちんとしたものかどうかを判断するためにも、正確な情報と知識は絶対に必要だし、物資に余りが出るならば、足りない所に回すか、貯蓄しておけばいいだけの話なのだ。

 なので、今やっている行動に関しては、恐らく向こうが信用できても、信用できなくても、殆ど内容は変わらなかったかもしれない。


「そちらについてはほぼ完成していますので、今回の任務にも持って行けると思います」

「それって個人携行用の物も含めて?」

「はい。勿論です」

 で、トトリとミスリさんの二人が今している話についてだが、傍から聞いている限りでは瘴巨人関連だけでなく、トトリが瘴巨人に乗っていない時にも使える装備についても話し合っているようだった。

 ただそうして話をしているトトリの纏っている雰囲気は……うん。やっぱり普段とは違う感じがするな。

 焦ったり、慌てたりしている感じではない。

 だが、何処となく心ここに在らずと言った空気を匂わせている。


「ただ物資の関係で換えのパーツが無い部分もあるので、大切に使ってください」

「分かった。出来る限り壊さないようにするね」

 原因は……まあ、決まり切っているな。

 どう考えても昨日のクラスメイトに関する話だ。

 なにせ、今回の調査場所に居たクラスメイトが誰なのかはおろか、人数も生死も昨日の時点では伝えられなかったからな。

 アレで気にするなと言う方が無理だ。


「と言うか、だいぶこっちの世界に馴染んで来てるけど、やっぱり最終目標は帰る手段を……いや、行き来できる手段を見つける事なんだよなぁ」

 俺は天井を見上げながら、小声でそう呟く。

 正直な話として、俺個人としては元の世界にわざわざ帰る必要はだいぶ薄れてきていたりする。

 なにせ、本当の意味で向こうでの心残りと言えば、家族に関する諸々ぐらいなものであり、逆に今はこちらの世界で築いてきた繋がりの方が大切に感じて来ているからだ。

 まあそれでも、両親に一言ぐらいは言いたい気持ちはあるし、やっぱり違う世界を行き来できる手段は見つけたくある。

 その過程で例の声の主に遭遇する機会がもしもあったならば……うん。一発どころか、俺の気が済むまで【堅牢なる左】と【苛烈なる右】でボコるぐらいは許されるだろう。


「ハル様?」

「ハル君?ハル君の番だよ」

「ん?ああ、二人ともごめん。ちょっと考え事をしてた」

 と、いつの間にかトトリとミスリさんの話が終わっており、二人揃って心配そうに俺の顔を見つめていた。

 どうやら、声を掛けても反応が無かった事で、心配されたらしい。


「と、それじゃあ、話をしようか」

「はい。よろしくお願いしますね。ハル様」

 これ以上無用な心配をかけるわけにも行かないので、俺は自分の考え事を切り上げると、ミスリさんの正面の席に座る。


「それで俺の方からする話としては……やっぱり例の瘴気補給に関する装備についてだな。現状だとどんな感じ?」

「そうですね……」

 俺が求めている装備は二つ。

 一つは、瘴気を俺自身の吸収範囲外からも集める物。

 もう一つは、大量の瘴気を貯め込んでおけるタンクのような物。

 どちらも俺の能力を行使するために必要な物ではあるが、俺以外に使うような人間の当ても無さそうな装備であるため、新たに開発されることになったものである。


「ハル様の装備についてですが……」

 そして、ミスリさんの口から俺の新装備に関する話が語られ始めた。

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