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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第3章【不抜なる下】

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第119話「見回り任務-3」

 その後、俺たちは何事も無くNWゲートに到着し、第1層の回廊を通って第32格納庫に戻ると、後始末を始める。


「それで、戻ってくるまでの間に練習した成果はどうだ?」

 で、キャリアーから回収したミアズマントの残骸を降ろしている傍らで、シーザさんが俺に特訓の成果を聞いてくる。

 ただ正直に言わせてもらうなら……。


「うーん。微妙な所ですね。一応何度か試しては見ましたけど、自分の主観じゃ速くなっているかどうかはどうにも……」

「まあ、そうだろうな」

「ん?特訓の成果についてかい?」

「どんな感じですかー」

 と、ワンスとセブもミスリさんに防護服を預けてきたのか、俺たちの方にやってくる。

 トトリは……『テンテスツ』の処理が有るからまだか。

 まあ、隠す事でもないし、とっとと話しちゃうか。

 話している内にトトリに、ナイチェル、ミスリさんもこっちに来るだろうし、そうなれば皆にアイデアを求める事も出来るだろう。


「とまあ、現状についてはそんな感じだな」

「「「……」」」

 と言うわけで、俺がしている特訓の現状について一通り話しておく。


「で、皆に良いアイデアが何か無いかを聞きたいわけだが……ある?」

 そして皆にアイデアを求めてみる。


「うーん。【堅牢なる左】の停止を素早くする事については、ひたすら反復練習をするしかないとアタシは思うんだよね」

「そうだな。私たちもそうだが、あらゆる運動の基本はひたすら繰り返して、体にその動作を染み込ませることだ。となれば、反復練習をするしかないだろう」

「なるほど」

 ワンスとシーザさんから出てきたのは、外で一応成功の芽が出ていた起動している時間の短縮。

 これが必要なのはまあ、間違いないだろうな。

 素早く起動と停止が出来ると言うのは、それだけでも十分な武器になるわけだし。


「他のアイデアかぁ……ごめんハル君。私はちょっと思いつかないかな」

「僕も思いつかないかな。そもそもハル様の両腕がどういう理屈で動いているのかも分からないし」

「そうですね。それが分かれば私たちでも多少のアイデアは出せると思うのですが……」

「三人ともありがとう」

 トトリたち三人からは特にアイデアは無し。と。

 ただ、セブとナイチェルには悪いが、俺も自分の両腕……【堅牢なる左】と【苛烈なる右】がどう言う理屈で動いているのかってのはよく分からないんだよなぁ。

 そもそも……


「あの、ハル様。一ついいですか?」

「ん?何?ミスリさん。何かアイデアが?」

 と、此処でミスリさんがおずおずと手を上げる。

 何かアイデアが有ると言う事だろうか?


「えと、アイデアと言うよりは確認になんですけど、ハル様の【堅牢なる左】と【苛烈なる右】って、必ず同じ形で展開しないといけないんですか?」

「と言うと?」

「その、例えば鱗だけとか、爪だけとかみたいに、特定の部分だけを展開する事は出来ないのかなー……と」

「あ……!」

 ミスリさんの口から出てきたのは、言われてみればまだ試してみた事が無い方法の一つだった。

 仮にそう言う一部分だけの起動と言うことが出来るのであるならば、起動と維持にかかる瘴気の消費量も普通に考えて、起動した部分に必要な量だけあれば良い事になるはずである。


「えと、ハル君どうなの?」

「……。ちょっと試してみる」

「ここでかい?」

「低出力版にした上で、可能な限り小さく展開するから大丈夫。低出力版で出来るなら、本来の出力でも出来るはずだし」

「ちょっと待て。今から対低出力版【堅牢なる左】用の高感度カメラを持ってくるから、それまで待っていろ」

「ん?ああはい。分かりました」

 と言うわけで、早速試してみようと思ったのだが、どうやらシーザさんの方で何か準備が有るらしい。

 ちなみに対低出力版【堅牢なる左】用の高感度カメラと言うのは、空気中に漂っている埃のほか、熱や音などを適宜可視化する事によって、【堅牢なる左】のように目には見えない存在も捉えられるようにしたカメラだそうで、つい最近俺の為に開発されたらしい。

 まあ、サルモさんとドクターの二人以外に俺の特訓に付き合えないと言うか、低出力版の【堅牢なる左】を捉えられないと言うのは、どう考えても問題だしな。

 もしかしたら俺と敵対する存在にも利用されるかもしれないが、此処は素直に喜んでおくとしよう。


「良しいいぞ」

「分かりました。【堅牢なる左】……起動!」

 と言うわけで、準備が整ったところで俺は【堅牢なる左】の一部……鱗だけを、俺の腕の上に展開される様をイメージしつつ起動してみた。


-------------


「何で……」

「うーん。どういう事なんだろうね?」

「あからさまって感じだね」

「えーと……ボソッ(この空気……どうしよう)」

「これは困りましたね……」

「うん。これだけ展開出来てもって感じ」

「いずれにしても、中央塔大学の学者たちがまた頭を悩ませるな……」

 結論から言うと、部分的な起動そのものについては直ぐに出来た。

 ただし問題もある。

 と言うのもだ。


「何で【苛烈なる右】の人差し指と中指だけなんだ……?」

 部分的な起動が出来たのは、【苛烈なる右】の人差し指か、中指のどちらか片方だけだったからである。

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