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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第3章【不抜なる下】
118/343

第118話「見回り任務-2」

「難しい?」

 俺の言葉を受けて、キャリアーの下でワンスたちが首をかしげている気配がする。

 うん。これは俺の現状についてしっかりと説明をしておくべきだな。

 話を聞いた皆から、何かしらのアイデアが出てくるかもしれないし。


「ああ。此処に来るまでに、【堅牢なる左】のサイズ縮小と、注ぎ込む力の削減については試してみたんだよ。だけど……見て貰った方が早いか。とりあえずキャリアーの下に降りるから、場所を空けてくれ」

「ん?ああ、分かったよ」

 ワンスたちが適度なスペースを確保したのを目視確認したところで、俺はキャリアーから飛び降りる。

 当然ながら、【堅牢なる左】は起動したままである。


「えーと、それで【堅牢なる左】のコスト削減についてだけど……」

 俺は【堅牢なる左】を小さくしようとする意志を頭の中で明確に持つと同時に、縮んだ状態の【堅牢なる左】をイメージする。

 が、【堅牢なる左】の大きさはまるで変わっておらず、周囲の瘴気濃度も当然変わっていない。


「とりあえず、低出力版の【堅牢なる左】と違って、これ以上小さくすることは出来ないみたいだな。今も小さくできるか試してみたんだが、駄目だった」

「ふうん……今の状態が最低サイズって事かい?」

「なのかもな。少なくとも、低出力版と同じ方法で小さくして、消費量を抑えるのは無理そうだ」

 これは、ワンスの言うとおり、今の【堅牢なる左】が小さくできる限界だからなのだろう。

 考えてみれば、低出力版【堅牢なる左】だって、俺の左腕より小さくすることは出来ないわけだし、何処かに限界が有ってもおかしくは無い。

 逆に大きくすることについては、感覚的に材料さえ十分にあれば出来る感じがしているしな。


「力を抜く方についてはどうだったの?」

「そっちはもっと駄目だった。なんて言うか、ただ力を抜いているだけって感じで、周囲から掻き集めている力の量への変化は無し」

 で、もう一つの送り込む力の量を少なくするのは、ただ単に筋肉を弛緩させている感じしかしなかった。

 確かに俺の身体から【堅牢なる左】に流れ込んでいる力の量を少なくしている感じはあるんだけどなぁ……一体何が悪いのやら。


「なるほど。それでハル。お前自身は他にどういう方法を考えている?」

「一応、発動する時間を極端に短く……それこそ、【堅牢なる左】なら敵の攻撃が当たる瞬間。【苛烈なる右】ならこちらの攻撃が当たる瞬間にだけ発動すると言うことが出来ないかとは思ってます」

 ただこの方法は、半ば焼け石に水な方法である。


「それは試したのか?」

「まだです。この方法を試し始めたら、周囲の瘴気濃度が急変動するのにつれて、視界も急激に変化すると判断していましたから」

「賢明な判断だな」

 と言うのも、この方法で削れるのは維持のためのコストだけであり、発動の為に必要なコストについては全く変わっていないのだ。

 なので、これ以外にコストを減らすための方法が見つからないと、本格的にミスリさんの開発する新装備頼みと言う事になったりする。


「セブ。現在地はどれくらいだ?後、周囲に敵影は?」

『えーと……丁度、二ゲートの中間ぐらいかな。とりあえず周囲には僕たち以外の影は無いです』

 キャリアーの中から、この場に俺たちしか居ない事を伝えるセブの声が聞こえてくる。


「ご苦労、セブ。ではハル、ここでその方法について試してもらえるか?」

「分かりました」

 俺は万が一【堅牢なる左】があらぬ方向に発動してもいいように、ダイオークスの外壁や、セブの乗るキャリアー等から距離を取ると、【堅牢なる左】を一度解除する。


「すぅ……はぁ……」

 そして、周囲の瘴気濃度が元に戻り、ワンスたちの姿がギリギリ確認できる程度に視界が悪くなった事を把握しつつ深呼吸。

 頭の中でこれから行う事を具体的にイメージし、感覚を掴んでおく。


「じゃあ、行きます」

「分かった」

「ハル君頑張ってね」

「さて、どうなるかね」

『わくわく』

 幾らか感覚が掴めたところで、左腕を引き、両脚を開き、構えを取る。


「【堅牢なる(フォートレス)(レフト)】……起動!」

 俺は左腕を真っ直ぐに突き出すと同時に【堅牢なる左】を起動。

 元の左腕が伸びきる感覚と同時に、黒い鱗に覆われた左腕も伸びきった状態で現れる。

 それに伴う形で周囲の瘴気濃度も一気に低下し、視界が開けていく。


「停……止?」

 そして、起動が完了したと認識すると同時に、俺は【堅牢なる左】を停止しようとする。

 が……現れた時と違って直ぐには消えず、その間にも視界はどんどん開けていく。


「消えたな」

「消えたね」

「うん。消えた」

『妙に時間がかかったね』

「……」

 やがて、視界が先程と同じくらいにまで開けたところで、ようやく【堅牢なる左】は消え去り、それに伴って周囲の瘴気濃度も再び上昇していく。

 何と言えばいいのだろうか?

 起動する時は俺の意思に合わせて正確かつ速やかに起動してくれた感じがあった。

 が、停止する時には俺の意思が発せられ、その通りになるまでの間に、一拍間が有るような感じだな。

 なんだ?このタイムラグ。


「これはどうやら訓練をする必要が有りそうだな」

「そうだね。なんて言うか、武器の打ち込みは速いけど、引くのが遅いって言う感じだった」

「えーと、つまり?」

「恐らくは訓練でどうにか出来る範疇だと言う事だ」

「なるほど」

 タイムラグの正体や原因は分からない。

 が、どうやら、シーザさんとワンス曰く、訓練次第では改善できる可能性があるらしい。


「一先ずハルはNWゲートに着くまでの間、出し入れの訓練をしてみてくれ」

「分かりました」

 うーん。一歩前進……と言う事でいいのか?

06/18誤字訂正

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