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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第3章【不抜なる下】
117/343

第117話「見回り任務-1」

 トゥリエ教授の説明会から数日後。

 俺たちはNWWゲートにやって来ていた。


「では行くぞ」

「「「了解」」」

 既に外門は開かれ始めており、ゲートの中は瘴気に満たされていく。

 そして、俺たち……セブについてはキャリアーを運転し、トトリは微妙にディテールが変わった気もする『テンテスツ』に搭乗しているが、俺、ワンス、シーザさんの三人は防護服を着た状態で既にキャリアーの外に出ている。


『では、皆様が無事に任務を達成されることをお祈りしております』

 やがて外門が開かれ切ったところで俺たちはゲートの外に出て……すぐ右の、他の外勤部隊の方々の邪魔にならない位置に移動する。


「さて、改めて今日の仕事について確認しておくぞ」

 さて、俺たち三人が最初から外に出ている理由も、どうしてゲートを出てすぐ右に曲がったのかも、実に単純な理由である。


「今日の仕事はNWWゲートから出立し、ダイオークスを外壁沿いに移動。NWゲートまで外壁沿いを見回り、点検する事だ」

 今日の仕事がそう言う仕事だからだ。

 実際、最初の旧市街の調査任務とか、この前の視察とかと比較すると、こちらの方がより外勤部隊本来の仕事らしいけどな。


「それと、もう一つ。分かっているとは思うが、これはハルの能力の低コスト化訓練も兼ねている。と言うわけでだ。ハル」

「はい。【堅牢なる(フォートレス)(レフト)】起動」

 俺の左腕から黒い鱗に覆われた巨大な腕が現れ、それと同時に周囲の瘴気が目に見えて薄まっていく。

 あ、門衛の人たちが驚いた様子でこっちを見てる。

 まあ、突然視界が良くなったりしたら、驚きもするか。


「よし。無事に発動できたな。では、ハルはキャリアーの上で周囲の警戒をしながら、訓練に専念しているように」

「分かりました」

 俺は左腕で地面を掴み、身体をキャリアーの上にまで持ち上げて乗る。

 ちなみに、キャリアーの上には支えになるような突起もあるので、普通に運転する分には問題なく上に乗っていられるようになっている。


「それでは出発するぞ」

「「「了解」」」

 そうしてゆっくりと、俺たちは見回りを始めた。



----------



「結構転がっているんですね」

「まあ、鼠級はとにかく数が多い上に、飢えているからね」

 見回りを始めてしばらく経った頃。

 キャリアーの下からは、そんな会話が聞こえて来ていた。


「鼠級についてはどれほど数が居ても大した問題にはならないがな」

『電撃板……だっけ?』

「そうだ。ダイオークスの外壁には、ワンスの銛に似た固有性質を持った金属板が設置されていて、鼠級程度ならこれだけで始末できる」

 トトリたちが現在やっているのは、外壁沿いにゆっくり移動して、外壁に傷を始めとした異常がないかを確認する事と、そこら辺に転がっているミアズマントの死骸を回収する事である。

 さて、どうしてダイオークスの外壁沿いにミアズマントの死骸が転がっているのか?

 そして、何故それを俺たちが回収しなければいけないのか?


「まるでゴミ拾いですね」

「まあ、そう言われることも多いね」

 まず転がっている原因については、ミアズマント対策の一環として、ダイオークスの外壁には一定レベル以上の衝撃が加わると、高電圧の電流を発生させる金属板が設置されているためである。

 が、その電撃によって鼠級ミアズマントが焼け死ぬと、当然のことながら死骸はその場に転がる事になる。

 そして、これを放置しておくと、電撃板に不具合が生じる可能性があるために、誰かが死骸を回収する必要が有るとの事だった。


「実際、外勤部隊に加わった者の大半は、まずこのゴミ拾いと門衛の仕事をこなして、外に出るにあたっての注意事項を学んでいくんだがな」

『あ、そうなんですか』

「ちなみに、この電撃板に誤って触ったがために死ぬ新人は毎年ダイオークスの何処かで出るからな。お前たちも気を付けた方が良い」

「ははははは」

「ひっ!?」

「怖っ!?」

『へ!?』

 シーザさんの言葉に、俺、トトリ、セブの三人が驚き、妙な声を思わず上げてしまう。

 と言うか毎年死人が出るって……おい……いや、対ミアズマント用だから、迂闊な安全対策を施すわけにはいかないんだろうけど……毎年って……。


「まあ、きちんと注意さえしていれば問題ないから、安心しなよ」

「そうだな。大体死ぬ奴は事前に言われていた注意事項を守らなかった奴……要するに、思い上がった奴か、うっかりしている奴だ」

「「「…………」」」

 二人はそんな事を言ってくれるが、まるで安心できないですから。うん。

 何となくだが、トトリの『テンテスツ』も、セブの運転するキャリアーも、さっきより外壁から離れている気がする。


「ところでハル?【堅牢なる左】の低コスト化についてはどうなんだい?さっきから周囲の瘴気にはなんら変化が見られないようだけど……」

「ん?ああ。その事か……」

 と、空気を変えようとしたのか、ワンスが俺の方に訓練の進捗具合について尋ねてくる。


「んー……どうだろうな……」

 俺は一度【堅牢なる左】をゆっくりと握り閉め……開ける。

 と同時に、頭の中ではどうにか【堅牢なる左】に変化を起こせないかと、力の流し方を意識してみる。


「正直……ちょっと難しいかもな」

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