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瘴海征くハルハノイ  作者: 栗木下
第1章【堅牢なる左】
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第1話「プロローグ」

 いつも通りの日常だった。


「おはようトトリ」

「おはようムギちゃん」

 いつもの道を、いつもの様に仲の良い者同士で組になり、他愛のない会話をしながら学校に向かう日常。


「カイト。宿題やって来たか?」

「見たいのか?全くリクはしょうがねえなあ」

「サンキュー、マジで助かるわ」

 いつもの昇降口で、いつも通りに行われるやりとりを聞きながら靴を履きかえる日常。


「フミヤ。ハンスミの方何処まで進んだよ?俺とウリヤは灯台でイベント起こしたところ」

「森の神殿までは辿り着いた。見るか?」

「マジか!?」

「はえー、見る見る」

 いつもの教室で、いつもの如く行われるクラスメイトたちの話を耳に入れながら自分の席に着く日常。


「ユースケ。お前、今季のアニメは何見てるよ?」

「そうだなーとりあえず『マジカル☆パンプキン』に……」

「お前らーそろそろ予鈴が鳴るから席に着けー」

「うわやべっ!」

 いつもの時間に、いつもの顔でやってきた教師が生徒たちに着席を促す声が響く日常。


「…………」

 そんな平凡で平坦な、多少退屈ではあっても愛おしく有る日常。

 俺はそんな日常が大好きで、これから先の人生、受験や就職、結婚と言ったイベントや変化はあっても、大同小異でいつも通りの日常がずっと続いていくものだと思っていた。


『キーンコーンカーンコーン♪キーンコーンカーンコーン♪』

 けれど、この日はいつもの日常から少し違っていた。

 スピーカーから聞こえてきたのは、いつものホームルームの始まりを告げるチャイムの音を模した電子音ではなく、明るいのに聞いているだけで不安にさせるような声だった。


「え?」

「は?」

「何だこの声?」

「放送部の悪ふざけか?」

「全くもってけしからんな」

 その声にクラスメイト達は何事かと思って周囲を見回しながら、誰がこんな事をしているのか、その誰かはどういう罰が下されるのかと言う予想を始め、教師はそんな生徒に呆れ顔を向けつつ教室の外に出ようと扉に手を掛ける。

 そんな時だった。


『はい、只今よりこの教室に居る生徒32名と教師1名の計33名に大変重要なお知らせがございます』

「ん?どうなっている?」

 再びスピーカーから声が聞こえ、扉を開けようとする教師が困惑の表情を浮かべたのは。


『えー、誠に申し訳ございませんが、貴方たち33名の日常は本日現時刻をもって終わりとさせていただきます』

「はっ?何を言って……」

「なにそれ?訳が分からないんだけど?」

「おいおい、幾らなんでも悪ふざけが過ぎんだろ……」

「ふざけんのも大概にしろってな」

 だが俺のクラスメイト達は教師の困惑にも気づかず、スピーカーの声に思い思いの反応を返し、当の俺はと言えば生まれて初めてと言っていいほど明確に嫌な予感と言う物を感じ取っていた。


『ま、百聞は一見にしかず。と言うわけで……』

「え!?」

「なっ!?」

「なにこれ!?」

「おいおいおい!?」

 すると、俺の嫌な予感を裏付けるように突如として教室の床が、窓が、ありとあらゆる場所が発光し始める。

 この時点で俺はもう今までの日常が帰ってこない事を理解し……何が起きてもいいように身構えていた。


『とっとと、いくといいのニャー』

「「「!?」」」

 そして、スピーカーの声に合わせるように光はその強さを増していき……視界が真っ白に塗りつぶされたところで、俺は自分の身体が何処かに向かって飛ばされるのを感じた。

新作でございます。

初めての方も、そうでない方もよろしくお願いします。


なお、投稿間隔についてですが、5話目までは明日の12時までに多少時間を空けて投稿し、5話目以降は毎日12時投稿の予定でございます。

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