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異世界で家庭菜園やってみた  作者: 藤原ゆう
家庭菜園事始め
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27.人員募集してみました(2)

「僕たちは、あなたが今言った、地方から来たんです。山脈の麓にある村から」


「え?どこで、ちらしを?」


「実は」


「そんなのどうでもいいじゃあん。さっさと話し進めてよ~」


今度はどこから出したのか、爪とぎで長く伸ばした爪を研いでいる。


「三食昼寝付きって、ほんとなの?」


下から睨むように見上げられ、悠里は内心怯みながらも頷く。


「あ、あの。こちらのコウメさまが、もし必要ならそうしろと仰って下さって」


「ええ。希望者には、お部屋も用意しましょうね。あなたたちは地方から来たのなら、宿住まいなのでしょう?」


「……貴族さまってのは、ほんとに、金も暇も余ってんだね」


「サラ!何てこと言うんだ!?両親を亡くした俺たちには、有り難い話だろ」


「ご両親を亡くされたんですか?」


「あ……ええ。一週間くらい前に、不慮の事故で。それで、王都の市場に行けば、何か仕事が見つかるかもと」


青年は眼鏡を直しながら、顔を曇らせた。


「なら、まとまった報酬がある仕事の方がいいんじゃないか?」


「ウリエルさん……」


「俺たちがこれからしようと思ってるのは、成功するかも分からない事なんだ。あとで話が違うと言われても、困るんだが?」


青年の眼鏡がきらりと光を反射した。


「野菜作りを覚えさせて、地方に広めたいと言ったのは、あなた方でしょう?」


「……」


「それなら、地方出身者の僕たちはいい人材だし、妹に三食食べさせて貰えるなら、文句なんて言いませんよ」


「あの。もしお金を稼ぐ必要があるなら、そんな四六時中野菜に引っ付いていなくてもいいんだし、働きながら、ここに通ってもらっても全然かまわないんですよ」


悠里のこの言葉が決定打となり、青年アルバートと妹サラは当面仕事を探しつつ、コウメさまの邸に滞在しながら、野菜作りをしていくという事で話がまとまった。


エプロンおばさんのジョーさんは家族があるからと通いに、杖を突いたご老人サムさんは、「自宅に帰っても、一人だから寂しいのう」ということで住み込みとなった。


「じゃあ、わたしゃ、そろそろ子供たちが学校から帰る時間だから、失礼しますよ」


「はい、また明日。よろしくお願いします!」


ジョーが帰って行くと、サムがすすっとコウメさまに近付いた。


「憧れのコウメさまに、こんな間近にお会い出来るなんぞ、いい冥土の土産が出来ましたわい」


「まあ。ほほ。あちらにお茶の支度が出来ていますの。ご一緒にいかが?」


「おー。このサムめ。一生のうちで、これ程幸せなことはありませんでしたぞ」


「ほほほ。お上手ねえ」


(まさか、サムさん。最初からコウメさま狙いだったんじゃ)と思わないでもなかったが、コウメさまにとっても良い茶飲み友達が出来て良かったのかもしれなかった。


「あの、僕たちは……」


「あたし、遊んでくるから~」


「おい、サラ!」


「兄さん、付いて来ないでよ。昨日知り合った男と会うんだから」


「お、お前。何言ってるんだ?そんなの、死んだ母さんが許す訳ないじゃないか」


「死んだ人間が、許すも許さないもないでしょう?ほんと、兄さんて、母さんそっくりで、面白くな~い」


「サラ!」


言い合いをしながら庭を出て行くサラとアルバート。


「大丈夫かなあ」


「兄妹だし、大丈夫だろ。それより、種蒔きのことだけど」


ウリエルが言い掛けた時、「キャー」と言うサラの悲鳴が邸中に響き渡った。


「え?どうしたの」


慌てて走って行くと、停まった馬車の前に、サラが倒れていて、アルバートが助け起こしているところだった。


「ちょっ。大丈夫ですか!?」


「ああ。咄嗟に避けたから」


そう言いながらも、アルバートは心配そうに眉をひそめている。


「何なのよ。この馬車。すごい勢いで、人の前に走って来てさ!」


馬車を睨み付けるサラが、すこぶる元気なことにほっとして、悠里も目の前に停まる馬車に目をやった。


かちゃりと馬車の扉が開いた。


さらさらという衣擦れの音と共に、長い黒髪が覗いた。


陽光に光り輝く、艶やかな黒髪。


「あ……」


馬車から降り立った人に、悠里は思わず立ち上がった。


不敵な笑みを浮かべている彼女。


一瞬悠里を見たかと思うと、サラの方に視線を向けた。


「貴様、当たり屋か?」


冷たく言い放たれた言葉に、その場にいた誰もが固まった。


「ふん。金を稼ぎたいなら、ちゃんと働け。手に職を持たんと、のたれ死ぬぞ」


「あ、あんた、謝りもせず、何言ってんのよ~!」


「貴様如きに、謝る言葉はない。下衆が」


「げ、げす?」


言いたいことを言って、もうサラには興味を失ったのか、ぷいっと視線を外すと、彼女は、マリュエル・フォッセは悠里に顔を向けた。


「久しいな。ユーリ」


「マリー……」


微妙な空気を感じている筈なのに、それをものともせず、我が道を行くマリュエル。さすがである。


「今までにない速さで仕上げて来たぞ。ユーリの為に」


「マリー。会いたかった!!」


流石は空気を読めない悠里。


サラの怒りなどそっちのけで、マリュエルに飛び付いた。


「あ、あたしは、下衆って言われたのに……。謝りもしないで、何なのよ~!」


サラの叫びに、男たちはただただ頷いていた。



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