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あゆまの日々  作者: KIDAI
3/4

第2話 4月6日水曜日 カレー

「あゆ兄ぃー、ゆあー、ごはんできたよー」

 と、下から女の子の声が聞こえてきました。

「あ、かんなねえだ」

「あーあ、お前が邪魔するせいで課題終らせられなかっただろーが」

「じゃあ終らせられなかったついでにわたしの宿題もやっといて♪」

「誰がやるか」

 そんな事を言い合ったのち、僕たちは一階へ下りていった。

 すると台所がある方から、カレーのいい香りが漂ってきた。

「今日はカレーなんだね」

 ゆあは嬉しそうに言う。

「違うぞゆあ。今日も、だ」

 だが僕は違った。

 別にカレーが嫌いなわけじゃない。どちらかと言うと好きな部類に入る食べ物だ。

 ただ、朝昼晩と三日連続カレーだったら、相当な好物じゃない限り誰だって嫌気ぐらいさすだろう。

「はあ、かんなは料理のレパートリーが少なすぎんだよ」

 溜息をつきながらリビングに入っていくと、

「悪かったわね。レパートリーが少なくて」

 そんなトゲドゲしい口調が僕に突き刺さった。

 声の主は我が西谷家の次女、かんなだった。歳は14歳で中学生。若干ツンデレ気味だったりする僕の妹は、リビングの前で仁王立ちしている。

「大体カレーがいいってゆあが言ってるんだし、しょうがないじゃない」

「お前のせいか!」

「てへへ♪」

 黒幕が分かりました。全てこのガキのせいだったらしいです。

「だってわたしカレー好きだし」

「好きだったとしてもそんな毎日食ってると飽きるだろ」

「好きなものはどれだけ食べても飽きないもん」

 ゆあはぷいっと首を振ると、かんなの横を通ってリビングの中に入っていった。妹の異常なまでのカレー好きにやれやれと首を竦めて、僕もその後に続く。

 テーブルに向かった僕たちだったが、そこには既に先客がいた。

「あー、りっくん早いー」

 ゆあが言ったりっくんとは、西谷家の次男で末っ子の西谷りくの事だ。無口で僕たち家族ともあまり会話しないが、成績優秀スポーツ万能の優良児だったりする。

「りっくんはあゆ兄と違って文句一つ言わないんだよ」

「いやそれはただ単にりくが無口なだけだろ」

 実は最近、かんなが僕を目の敵にしてくるんだよね。なんでだろ?

「……かんな姉。食べよ」

「そうだねりっくん。さあ二人とも座って」

 かんなに言われて席に着く僕とあゆ。

「あれ? れあ姉は?」

「仕事が忙しくて帰り遅くなるってさ」

 西谷家の長女れあ姉こと西谷れあは、僕たちの中で唯一の社会人だ。父親も母親もすでに他界しているから、僕たちの生活はれあ姉の給料と両親が残した遺産で支えられている。

 れあ姉は西谷家の大黒柱なのだ。

「それじゃ、いただきます」

「いただきますっ!」

 言った瞬間、ゆあは皿に噛み付く勢いでカレーに食いかかった。この娘のカレー好きは異常だよ。

「って、辛っ!」

 そう叫んだのは僕です。スプーンにカレーをすくって口の中に入れたら、口の中にタバスコとわさびが合体したような、鼻につーっんと舌が焼けるような辛さに思わず炎を吹いたりはしません。

 椅子から転がり落ちて床でのた打ち回っているだけです。

「からっ! 辛いっ! 辛すぎるっ!!」

「ちょっとあゆ兄ぃ、いま食事中だよ。ちゃんと席に座って食べなきゃ」

 冷めた視線で見下ろしてくるかんなの言葉は、正論で取り繕った悪意が見え隠れしていました。それを敏感に察知した僕は、

「あのかんなさん? 食べるって何を? この激カラカレーを? 冗談キツイぜこんなもん食ったら――」

 と反論しようとしたけども。

「いいからさっさと食いやがれ!!」

 殆ど意味を成しませんでした。最後まで言わせてもらえませんでしたし。

 ぶっちゃけこれがかんなの本性です。怖いですね。

 かんなは僕のカレーを手に取ると、そのまま僕の顔面に向けて掃射。

「ごぶっごがっごぶぶぶぶぶぶぶ……」

 辛い熱い痛いの三拍子が顔面に襲い掛かって、僕はカレーの海に沈みました。

ギャグと言うより人物紹介な回ですね。

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