第1話 4月6日水曜日 算数
ある年の4月6日、夕食前の出来事。
突然、僕の部屋に押しかけてきた妹のゆあは言いました。
「ねえ、あゆ兄、『あゆま』って変な名前だよね?」
「来ていきなり人の名前を蔑むなよ」
「それでさー」
「……」
僕の返答は軽く無視されました。
ゆあは今年で小学五年生になる女の子。天真爛漫な性格で何をしでかすか分からない、とても危険な子です。
「実は前から思ってたんだー。『鮎魔』なんてなんだか気持ち悪い名前だなーって」
「……なんかそれ、変に傷つくんだけど」
いきなり人の名前を汚してきた妹は、僕のベッドにダイブしてふかふかと遊んでいます。
ちなみに僕の名前は『鮎魔』なんて気持ちの悪い書き方はしない。普通にひらがなだ。ついでに高校生で、本名は西谷あゆまだったりする。
「ん、なんかこのベッド、臭うよ」
「じゃあ乗るなよ。つーか何しにきたんだよお前は」
「ん? ただの暇つぶしだけど?」
「暇つぶしで兄の心を抉りにくるな!」
この妹、よく僕の部屋に来てはこうして蔑みにくる。いったい何しにきたんだと聞くと、彼女は決まって暇つぶしと返してくる。毎度毎度の事だけにもう慣れてしまったけど、忌々しさは一生拭える事はないと思う。
「ねえあゆ兄」
「なんだよ」
「わたしね、さっき宿題やってたんだけど分からない問題がでてさー、教えて欲しいんだ」
「ちゃんと用事あるんじゃねーか」
ベッドから飛び降りたゆあは、机に向かって勉強していた僕の隣に立って、一冊の教科書を差し出してきた。
「算数か。どれどれ……」
僕はゆあから教科書を受け取って彼女が分からないという問題に目を配る。
その問題は文章問題で、内容は、
“太郎君と次郎君と三郎君と四郎君とカイザー君の五人は文房具屋に買い物に行きました。”
となかなかに個性的だった。
(ふむ。よくあるタイプの問題だな。でも無駄に登場人物が多いし、どうして一人だけカイザーなんて名前なのかは分からんが。まあそこはどうでもいいか)
そう思い、僕は問題を読んでいく。
“太郎君は十本入りの鉛筆を一箱、次郎君と三郎君は下敷きを二枚ずつ籠に入れて、四郎君は拳銃ATMオートマグⅡを二兆、そしてカイザー君は山にしばかれに行きました。さて、五人のうち生き残ったのは誰でしょう。”
「……えーっと、これ何?」
「何これって、算数の問題だけど」
「いや算数の問題って言うか、え? これ算数なの? ものすごくツッコミどころ満載だったんだけど」
「式までは出来たんだけどね」
「うそ!? 式作れたの!? この意味不明な問題で?」
「うん。(2×10)+(4×6)+(2×10000000)+(カイザー×山)って」
「いや変だろ! どっからその数字出てきたんだよ! つーか(カイザー×山)なんて数字ですらないからな!」
「10とか6とかは攻撃力だよ。まあ拳銃には敵わないよね」
「そうだろうけどもおかしいって! どっから来てんのその基準!」
「わたしの頭の中から」
「テキトーかよ!」
「それでねわたしが分からないのはね、(カイザー×山)の攻撃力なんだよ。あゆ兄分かる?」
「そんなもん分かるかぁあああああっ!!」
そんなこんなで、僕の日々はツッコミで作られています。
コメディーと言うかギャグが書きたくなったので書いてみました。拙い上に意味不明かもしれませんが、どうか常温+2度程度で見守ってやってください。
ちなみにこの算数の問題の答えは『カイザー君』です。え? どうしてかって? それはカイザー君にでも聞いてみてください。