死のゲームの宣告
狼の仮面の下から、声は変わらず機械のように平坦に続いた。
「それでは処刑方法とゲームの流れを説明させて頂きます。」
一枝一馬は拳を握りしめ、モニターを睨みつけた。
「人狼ゲームには、昼フェーズと夜フェーズの二つのフェーズがあります。最初は夜フェーズからスタートです。」
その言葉の終わりに、部屋の九つの扉から、金属が擦れるような低い音が響いた。
ロックが解除されたような音に、四宮四季の肩が小さく跳ねた。
彼女は慌てて両手を膝に押しつけ、息を詰める。
「夜フェーズになれば、各自あちらの個室に入って頂きます。個室の中にはそれぞれPCがセッティングされています。そちらのPCから、占い師、狩人、狼の三種の役職は能力使用対象を選ぶ事が出来ます。霊能者の場合は、結果が表示されるだけです。」
二乃二葉は静かに目を細め、画面の文字を追う指を止めた。
彼女の呼吸が、わずかに深くなる。
「尚、人狼に当たった方はそれぞれリモート通話も出来るシステムになっております。そちらの部屋で村を騙す為の計画を練って下さい。部屋は完全防音となっているので安心して下さい。」
六車六平は腕を組み、口元に薄い笑みを浮かべた。
すぐに消えるその笑みは、誰にも気づかれなかった。
「夜フェーズの時間は10分になります。夜フェーズが終わったら、扉が開きこちらの部屋へと戻って来て下さい。今、皆様がいる広間が昼フェーズの舞台となります。」
三木三郎は喉を小さく動かし、画面に映る言葉を飲み込むように見つめた。
額に、薄い汗が浮かぶ。
「昼フェーズの時間は30分間です。ここで行える事は『話し合う事』だけです。真摯な騙し合いを行なって下さい。暴力行為等を行なった者にはこちらから厳粛な処罰をさせて頂きます。」
五条五月は首をわずかに傾げ、画面の文字を何度も読み返した。
唇が小さく開き、息が漏れる。
「30分の話し合いが終わると、再びロックを解除して、それぞれの個室へと戻り、夜フェーズへと移ります。そこで、皆様には『誰を処刑するか』の選択をして頂きます。最多数票だった者は脱落となります。尚、最多票が同票だった場合は、同票のどちらかがランダムで脱落となります。仮に最多票が三名だったとしても脱落するのは一名だという事ですね。」
七瀬七海は髪を耳にかける仕草で時間を稼ぎ、静かに画面を噛みしめた。
瞳に、微かな光が揺れる。
「こちらを繰り返し、人狼が全滅するか、人狼の数が村人と同数になるかまで繰り返して頂きます。」
八雲八重は背筋を伸ばし、画面を真正面から見据えた。
息を整えるように、ゆっくりと胸を上下させる。
「ところで皆様、10名ゲームだと言っておりますが、この場には9名しかいないのにお気づきでしょうか?」
九里九郎は視線を落とし、指先が震えるのを握り拳で抑えた。
「これは最初の夜フェーズで狼が一名の村人を襲撃する事からこういった形になっています。全ては狼の襲撃から物語はスタートする事になるからですね。この一名の犠牲からゲームが始まる所から『10A狩』は9人スタート……『9スタ』などとも呼ばれます。」
モニターの狼の仮面は続ける。
「そして、この最初に犠牲になる一名。これらは何の役職が犠牲となるかはランダムです。占い師が最初に犠牲になる可能性もあります。霊能者が最初に犠牲になる可能性もあります。ですが、狂人が犠牲になる可能性もあります。」
一同の視線が、モニターに釘付けになる。
部屋の空気が、重く沈む。
「そして、もう一つ重要な点を。」
狼の仮面は、微動だにしない。
その声だけが、冷たく響く。
「このゲームはデスゲームです。ゲームの中で死亡した人間は、実際に死んでもらいます。」
青白いモニターの光が、九人の顔を無慈悲に照らし出す。
影が長く伸び、壁に絡みつくように揺れる。
一枝一馬が立ち上がり、モニターに向かって声を張り上げた。
「おい、待てや!画面の狼よ!?お前、ふざけた事、抜かしてるんと違うぞ!?」
狼の仮面の下から、低い笑い声が漏れ出た。
「フフ、ふざけた事など言っておりません。我々、組織は本気です。」




