正しい事を言い続けます
二乃二葉がゆっくりと立ち上がった。
彼女の動きは静かで、部屋の空気を優しく押し返すようだった。
九人の視線が、穏やかに彼女に集まる。
「はい、それではアピールさせて頂きますね。皆さん、聞いて下さい。」
二乃は深く息を吸い、皆を見回した。
声は穏やかだが、確かな芯があった。
「私の真要素……と言うか私が思う事ですね。私は皆様に対して『信じて下さい』とは言いません。正しい事だけを言います。私が正しい事を言い続けていれば、皆様もそれを自然と判断する事が出来るでしょう。」
四宮四季は両手を膝に押しつけ、息を詰めて聞いていた。
七瀬七海は髪を耳にかける仕草を止め、静かに瞳を細める。
二乃はゆっくりと視線を巡らせ、言葉を続けた。
「だから、私は『信じて下さい』とは言葉にしません。だけど、皆様の事を『信じます』。」
彼女は皆を見回し、静かに宣言した。
部屋の空気が、わずかに温かくなる。
「このゲーム、占い師の私だけの力では勝てないゲームです。投票には皆様の力が必要となりますので、真実を見抜く為に皆様の精一杯で判断して下さい。私は皆様が真実に辿り着く事を『信じます』。」
二乃は静かに頭を下げた。
その仕草は、優しく、しかし確かな決意を帯びていた。
部屋に、静かな沈黙が落ちた。
やがて、手を打ち鳴らす音が響く。
最初に拍手したのは一枝一馬だった。
「おうおう、いいねいいね。いい主張だね! は〜い、皆、二乃さんに拍手してあげよう〜!」
一枝の声に、皆がゆっくりと手を叩き始めた。
三木三郎は肩を落としたまま、控えめに拍手する。
九里九郎は握り拳を緩め、小さく手を合わせる。
五条五月は首を傾げながらも、隣の七瀬に合わせて拍手した。
八雲八重は背筋を伸ばし、静かに手を叩く。
六車六平は口元に薄い笑みを浮かべ、軽く手を鳴らした。
拍手が収まると、二乃は静かに一枝を見た。
「……一枝さん、いいんですか? そんな私の事を褒めちゃって。」
一枝は肩をすくめ、笑みを浮かべる。
「あぁ、全然構わねぇよ? 凄くいい主張だった。俺もやりやすいよ。じゃあ、次、俺いっていいか?」
二乃は穏やかに頷き、席に座った。
「どうぞどうぞ。」
一枝はゆっくり立ち上がり、息を整えた。
部屋の空気が、再び彼のリズムに染まり始める。
九人は息を潜め、一枝の言葉を待つ。




