不自然な感情を探せ
一枝一馬が席に深く座り直し、ゆっくりと息を吐いた。
皆の視線が彼に集まる中、一枝は指を一本ずつ折りながら、明るく声を張った。
「じゃあ、盤面のおさらいがてら確認するで? 一の俺と二が占い師。それで、九は霊能者や。三、四は白貰い。」
彼は一人ずつ指差し、席の配置を確かめるように視線を巡らせた。
三木三郎は肩を落とし、四宮四季は両手を膝に押しつけて小さく頷く。
「と言う事は今日は残りの、五・六・七・八! 五条さん、六車さん、七瀬さん、八雲さんの中の誰かに投票して退場して貰う事になるわ。丁度、席が固まってるな?」
五条五月たちは互いに顔を見合わせた。
六車六平は眉を顰め、七瀬七海は髪を耳にかける仕草で息を整え、八雲八重は背筋を伸ばしたまま静かに視線を交わす。
一枝は笑いながら肩をすくめた。
「それで、じゃあ、誰に投票するか。この中の誰が狼か……って話なんだけど、正直、皆わからんやろ? 俺だってさっぱりわかってない。そんな状態で投票しろなんて言われても無理やろ?」
一同が小さく頷く。
部屋の空気が、わずかに和らぐ。
九里九郎は握り拳を緩め、息を吐いた。
「だから、一回、俺と二乃さんが、アピールしようと思うねん。二乃さん、このスタイルでいいかな?」
一枝が二乃二葉に視線を向けた。
二乃は静かに微笑み、頷く。
「今の所は大丈夫です。問題点あったら指摘します。どうぞ、続けて下さい。」
一枝は皆を見回し、言葉を続けた。
「俺と二乃さんが『自分こそが、真占いだぞ!』って、軽くアピールするわ。それで、ここは二択やろ? どっちかが本物で、どっちかが偽物や。『強いて言うなら、こっちが本物と思う』ぐらいの、二個から一個選ぶぐらいなら、皆出来るやろ?」
一同が頷く。
四宮四季は目を丸くし、三木三郎はゆっくりと息を吐いた。
「それでな? これ、一番大事な事な? 今から皆には『強いて言うならこっちが本物と思う』ってのを言って貰うけど、それは全然間違ってても構わへん。『偽物を本物と思う』とか言うても構わへん。」
一同が驚いたように息を呑む。
七瀬七海は髪を耳にかける仕草を繰り返し、八雲八重は背筋をさらに伸ばした。
一枝は笑みを深め、言葉を畳みかけた。
「これ、大事なのは『えっ?そういう風に感じる?』みたいな事を、五条さん、六車さん、七瀬さん、八雲さんの中から、探す事なのよ。例えば、これ俺が狼だったとするやん? 俺に意見出す狼は『仲間だから守らなきゃ』『仲間だからちょっと距離取っておかなきゃ』みたいな不自然な感情が浮かぶ可能性あるやろ? 村の皆って、それないやろ? 俺が狼だったとしても『思うがまま自然な意見を出せる』やろ?」
一同が頷く。
五条五月は首を傾げ、隣の七瀬と視線を交わした。
六車六平は何度も頷いている。
一枝は二乃に視線を移した。
「……どう? 二乃さん、今日はこのやり方でいいかな?」
二乃は静かに首を振り、穏やかに指摘した。
「強いて言うなら、一枝さんの説明。『本物だと思う』『偽物だと思う』の二択になっていますが、私は『まだわからない』の選択肢もある三択だと思います。」
一枝は苦笑いしながら手を叩いた。
「あぁ、ごめんごめん。せやね? 三択やったね?」
二乃は皆に視線を巡らせ、優しく問いかけた。
「では、私はそれで構いませんよ。他の皆さんは大丈夫ですか? 流れに不安とかありませんか?」
一同が頷く。
四宮四季は小さく息を吐き、九里九郎は握り拳を緩めた。
二乃は静かに微笑んだ。
「では、アピールはどちらからやります?」
一枝は肩を落とし、疲れたように笑った。
「流石に疲れたよ。アピールは先、二乃さんやってぇや。」
二乃は穏やかに頷き、ゆっくりと立ち上がった。
彼女の瞳に、静かな光が宿る。
「はい。では私からのアピールですね。それでは皆さん、聞いて下さい。」
部屋の空気が、再び張りつめた。
一枝は席に深く座り、笑みを浮かべる。
皆が息を潜め、二乃の言葉を待つ。




