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第二話「再会はだいたい騒がしい」

拝啓、目の前のアッキーへ。

実はさっきまで私は15年後くらいの未来で殺されて、ちょうどここに来たばかりです。

ホントは中身三十歳です。どうしたらいいですか?


――なんて。

言ったところで、今度は確実に無視されるだろう。

古びたソファで寝そべったままの龍秋(たつあき)の上で、四季はうーんと頭を悩ませた。


いっそ死ぬ間際の走馬灯であれーーなんて期待して右の頬あをつねってみる。うん、ちゃんと痛い。

夢ではないことを改めて認識し、四季は大きくため息をつきながら、どうしたもんかと再び頭をひねった。


「おい退け、いい加減重いぞさっきから」


「あ、やだごめん」


そうだ、アッキーの上に乗ったままだった。


体格は龍秋が勝るとはいえ、未成年ごとソファにしている現状に遠慮がないわけではない。

四季がヨイショと隣にある丸イスに腰掛けると、龍秋が嘘だろとでも言いたげな顔でこちらを凝視していた。


「そうやって眉間に皺を作ってると、将来誰からも言い寄られない強面(コワモテ)になるよ。知ってるんだから私」


「...具合でも悪いのか?お前、言われて素直に退くような奴じゃーー」


呆然とした表情のままこちらを訝しげに見てくる龍秋に気づいてか気づかずか、四季は目を閉じて再び思考の世界に入ってしまった。


どうしてこの時代にタイムリープをしたんだろうーー今の四季にとって、漠然とした疑問だ。


一番楽しかった時代だから、もう一回遊べって?

それとも、今度はマトモに生きろってこと?


……どっちにしろ、このまま進めば、

私はまた殺される。


「ーーそう!そうだった!!私未来で殺されるんだ!!」


ガタッと丸イスを倒して立ち上がった四季を見て、今日の会合はナシにしておくかと彼女の頭…否、様子を心配した龍秋が仲間へ連絡をし始めたところにーー


「ちょっとおー、もしかしてずっと二人でお喋りしてたワケ?」


なんとも面白くなさそうな、しかしわずかに明るさも混じった声が、こちらに近づきながらぶつけられた。


この声は目の前のしかめっ面より聞き覚えがあるーーまだ四季も幼いころに、身内として拾うことになった弟分のものだ。ーーまぁ、やはり声は少し高いのだけれど。


棉木(わたぎ) 夏二(なつじ)ーー。

路地裏で出会った身寄りのない不良で、拳を振るうことでしか存在を示す術を知らない男であった。


最初はボロボロの野良犬同然だった彼にキュン...ときてしまった四季により、この時代では同じマンションに住まわせることにしていたのだ。

ともに生活するにあたりルームメイトよろしく...実の姉弟のように和気藹々と過ごしてきたーーつもりだったのだが...。


「シーキ!お願いされた虎雷頭(トライヘッド)のヤツら、しっかりシメてきたよ。オレたーくさんがんばったから、ヨシヨシして〜!」


すっかり甘えん坊の飼い犬と化していたーー。


出会ったころの野生みはどこ行っちゃったんだろうね〜と、喉まで上がってきた言葉を引っ込めてから四季は夏二に視線をやった。


襟足だけ伸ばされたショートヘアの内側には、金色のカラーが覗く。笑うと八重歯が目立つ愛嬌のある顔で、イタズラな目元はさぞ年上の女ウケがいいことだろう。


未来ではすっかり淀んだ目になっていたのだが、この時の夏二は秒単位で表情がコロコロ変わり、見ていて飽きない存在だった。


ーーと、愛想たっぷりに振る舞う弟分を見ながら四季は思った。


「にしてもそっかー。このころのナツは髪、短かったねぇ」


ぐい、と引き寄せるように夏二の頭に手を伸ばす。

急に近づいた距離に何を思ったのか、ンーと目をつぶる夏二はスルーして、頭を撫でてやる。


「ていうかシキ、いつのこと言ってるの?ロングだったときなくない?」


「ん?あー...将来とかかな!」


「ナニソレ、伸ばせってこと〜?どうしよっかなぁ」


そのあしらい方はないだろと龍秋が思うよりも先に、ピンポン玉のように弾んだ言葉が夏二から返される。

外でも内でもよくまぁ口が回る男だと感心しつつ、コイツらと話していたら頭痛がしそうだと龍秋がスマートフォンに集中し始めたーーその時。


ーーーバンッ!!


突然、勢いよく出入り口が開かれた。


三人の視線が一斉に向く。

逆光の中、細身の影が肩で息をしながら立っていた。


「今日の集まりがナシとか勘弁しろよ...ッ気まぐれで決めやがって...!」


元は静かな声色なのだろうがーー予定を狂わされた男のぼやき...にしては少し大きめの声が、四季たちの耳に届く。

そのままズケズケと部屋の中へ踏み込んできた影は四季の正面に座り、オラ始めんぞと三人を睨んできた。


そういえばいたなぁ...こんなヤツーー。


刈り上げられたショートカットとは対照的に目までかかった黒髪と、生気の欠けた瞳。

他の二人とは違いきちんと着こなされたブレザーは、まさにスマートな優等生の風格なのだが…口から出てくる言葉は物騒なものばかりだ。


確か名前はーー。


四季の記憶が、また一つ疼いた。


次回更新は12/24予定です。

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