表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
台所でせかいをかえる Revolution Starts in DAIDOKORO  作者: 朧月 澪(おぼろづき みお)
挿話 知覧

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/106

第82話 挿話 知覧 1

響香の父の育った町 知覧。

大きくなっちょっね。今年も来たっが と 

町に人がこえをかけてくれた夏。

それは、昭和50年のころ。戦後30年をだったころだったけど、そのとき、そんなことは意識しなかった。

知覧茶を封をあけるとき、ときよりあの空がかえってくる。



台所でせかいをかえる Revolution Starts in DAIDOKORO

第82話 挿話  知覧 1


モナリザが来た年、知覧の盆踊りで、一緒に居合わせた光景が、よみがえった。

とはいえ、初対面のふたりにはかわらなかった。

けれども、真智子は、仕事をやりくりして、空港まで送ってくれると言ってくれた。

きのう、もう見納めだと思っていた知覧の巨大扇風機を、

たまたま、彼女の助手席から響香は、再び眺めることになった。


ときどき、ひとりで知覧茶を飲むときに、この空がよみがえる。

父は子ども時代の話をしなかったので、あれは夢だったのかもしれない。



そこには、ぼくと、にいちゃんと呼ばれる青年が立っていた。

扇風機のまだない茶畑が、広がっていた。


にいちゃんは、初めてみかんの木を見た。

だから、屋敷で言ったんだ。

「にいちゃんのぶんもくれって。」


「うそつけ。」って、言われたから、ちゃんばらで勝負した。

勝って、もらった。

怒られたけど、にいちゃんとみかんを食べた。



にいちゃんは北海道ってところから来た。蝦夷えぞのことらしい。

いつも、飛行機の練習に出かけていた。



春に、庭に出てきた葉っぱをみて、にいちゃんが聞いてきた。

「かぼちゃ?」

わからないけど、ふたりで育てた。


葉っぱが六枚目になったところで、にいちゃんは先端の葉を一枚摘んだ。

「てきしん」っていうらしい。


てきしんとは、

葉にこれ以上伸びるな、わかれて次は花をつけろ、と教えることだという。


てきしんをすると、

葉は二手に分かれて黄色い花をつけた。


せんていもした。


二人で見ていたら、しましまがあらわれた。


思い出した。

ぼくが、庭で種を飛ばしたんだ。


夏は、川でそのしましまの立派なスイカを冷やした。


「こんなうまいもんは、北海道にない。」

と、にいちゃんは言って、リンゴの話を聞かせてくれた。


二人であっちこっちにスイカの種を飛ばした。


来年は、スイカ畑だ。


棚にあったみかんをこっそり二人で食べた。


みかんの皮と種をどうしようか、という話になった。

にいちゃんは種を引き出しにしまった。



みかんの種をポケットに入れた日。

にいちゃんは、二度とかえってこなかった。


にいちゃんは、みかんの種と飛んだ。


あれは、ぼくが10歳のころ、昭和20年の知覧のことだった。


昭和20年の翼が、飛んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ