第43話 昭和ゾンビの新年会
台所でせかいをかえる Revolution Starts in DAIDOKORO
第43話 昭和ゾンビの新年会
――新しい年のはじまり、2025年――
いつもなら、正月は年賀状のやりとりだけだった伸子と響香。
でも、昨年は伸子の長旅でしばらく音信不通だったせいか、今年はそれを取り戻そうとしているのかもしれない。
旅の報告書を書こうと、パソコンを開けていたその時、
鏡餅の横で、スマホが震いた。
「おめでとう。」
「ああ、そうだった。今年、初めてだったね。」
「あけまして、おめでとう。」
「お正月、運動会場みたいだった。」
「凛ちゃん、かわいくなったでしょう?」
「まあね。しゃべるわしゃべるわ。そっちは? 下のお孫ちゃん、二歳になったんでしょ?」
「よく来たよ。『あけおめ』って言ったら、神妙な顔して後ずさりするの。」
「あら。」
「娘が言うの。『あけおめなんて死語使うからよ』って。」
二人の笑い声が、電波の向こうでふわりと混ざった。
「それでね、言うのよ。『死語ばっかり言ってるとゾンビだ』って。昭和のゾンビだって。ひどいと思わない?」
「あら、うちの凛は『あけおめ』言うわ、言ってたわ。」
「伸子さん、教えたの?」
「きっと児童館で覚えたのね。定年後のおじさまおばさまが見てくれてるっていうから。凛、ゾンビ化したかしら。」
「昭和ゾンビ、たしかに不死身だもんね。あっち痛い、こっち痛いって言いながら、ぴんぴんしてるもの。」
「めだかゾンビの館……」
「あっちこっち、ゾンビだらけね。」
「不死身ね……そうでなきゃ。」
響香の声が、突然、泣いているように聞こえた。
伸子が「泣いてる?」とたずねると、
「おかしくって……」と返事が返ってきた。
「ありがとうね、今日は。」
二人の会話は夜な夜な続き、いつしか時間は過ぎていった。
そして、自然な流れで、新年会を開くことになった。
* * *
次話へつづく
* * *
◇◆◇ あとがき ◇◆◇
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
また次話で、お会いできましたらうれしいです。
◇◆◇
次回予告:「第44話 二人だけの新年会 ―地下道のベンチから始まる旅―井戸の記憶へ」
◇◆◇
―― 朧月 澪




